第249掘:冒険が始まる!!
冒険が始まる!!
side:ユキ
「本当に申し訳ありませんでした!! ほら、エオイドも謝るの!!」
「す、すみませんでした」
俺の目の前で、頭を下げている男女。
1人はエオイドと呼ばれていて、ラッキースケベを引き起こした、俺とタイキ君が学園の主人公と思っている危険人物だ。
いついかなるフラグに巻き込まれるかわからんからな。
嫁さんたちを巻きこんだら、流石に社会的に消すけどな。
いや、俺が何か処罰を下す前に、死体になるか精神ぶっ壊れてそうだけど。
もう1人は、エオイドの後頭部にトイレモップ、エクスカリモップを投げ、サマンサお嬢さんをラッキースケベへと巻きこんだ女生徒だ。
まあ、門前払いを受けた日にも、この2人を見かけたのだが、まさか学園編入初日にかかわってくるとはな。
なに、俺たちってイベント扱い? この主人公とヒロインに突っかかる辺のやつ?
まあ、これからの経過を見守るしかないよな。
厄介事は避けるって最初から決めているし、そっちがトラブルに巻き込まれてもこっちはノータッチですからね。
「いや、俺たちは迷惑被っていないからいいけど、サマンサお嬢さんには真面目に謝るべきじゃないのか? どう考えても彼女は君達の騒動に巻き込まれただけなんだから」
俺がそう普通のことを言うと、後ろにいるタイキ君がつぶやく。
「……お約束にマジレス」
「うっさい」
この手の、ラッキースケベ系にマジレスするのであれば、もう日本じゃお巡りさんに痴漢現行犯でタイーホだよ。
というかさ、他国の相手であれ公爵令嬢にあんな事したんだから、手打ちでスポーンと首が飛ぶんじゃね? 物理的に?
で、巻きこまれた当事者のサマンサお嬢さんは乱れた服を茂みの中で整えている。
「……なにをどうすれば、倒れ込んだだけで、女性の服をあそこまで乱せるのか」
「人類には未だ謎がありますね……」
俺とタイキ君は先ほどのサマンサお嬢さんの乱れた服を思い出す。
他の通学中の男子生徒は喜んでいたが、俺とタイキ君はあのミラクルすぎる脱がし術に感心してた。
だってさ、倒れ込みに巻きこんだだけで、スカートの中は丸見えになるわ、上に着込んでいる学府の制服はなぜか、脱げて、中のブラウスのボタンは綺麗にはずれて、綺麗な胸がきわどい形で見えるか見えないかという状態になっていた。
これをミラクルと言わず何というか。
俺とタイキ君がそんなことを考えていると、注意を聞いた2人はしゅんとして口を開く。
「あ、はい。サマンサには後でちゃんと謝っておきます」
「私たちが悪いもんね。はい、サマンサに謝っておきます」
2人は素直にそう言う。
「別にひねくれているタイプの主人公じゃないみたいですね」
「だな。あのタイプだとダークヒーローはないだろう。ダークヒーロー系だと俺たちからは絡みづらい」
悪で悪を裁く。
罪を精算するために、自分は幸せになっちゃいけないとか、まあダーク系は色々メンドイ。
見た感じ、元殺し屋とか、どこかの武闘大会で優勝してましたーって暗い過去や、実は俺TUEEEではなさそうだ。
いや、ステータス見ても、そんな事はないけどな。
どっちも普通。
主人公君は、いやエオイドは主人公らしく、妙なスキル持ちだ。
魔力操作と魔術知識、これだけ。
つまり自力で魔術は使えないわけだ。
でも、魔力操作ってのがみそだな。
俺も魔力操作を持ってるが、魔力自体を押し固めて物理現象にまでするか、相手の魔術の魔力を操るとかできる。
俺が得意とするスキルだ。
敵に感知されにくい、というか、魔力を視ることができないと感知できないからな。
魔術みたいに、炎とか水とか分かりやすい現象にならないから。
で、エオイドと追いかけっこをしていた女生徒のスキルは炎の魔術にテイマー持ちだな。
アスリンと同じテイマーだ。
まあ、比べるだけ無駄なほど、経験と性能の差があるけどな。
この大陸では、魔物が殆どいないから、テイマースキルを磨くのは難しいだろう。
逆にアスリンは、ダンジョンの能力で好きに魔物を呼び出しては従えている。
まあ、アスリン直属の魔物って言うのは10匹もいないんだけどな。
本人曰く、お世話できないのに、飼っちゃだめだもん。
と、至極当然のことを言っていた。
だが、その10匹は普通の人なら世話を出来る魔物じゃないけどな。
その10匹を知ったタイキ君が、国を落とすつもりなの? ってアスリンに聞いたぐらいの戦力と言っておこう。
無論、スティーブやスラきちさん、ミノちゃんは俺の部下なので違うぞ。
「で、とりあえず自己紹介でもしようか。俺はユキ。一応ジルバからの編入生だ」
「どうも、僕はエオイドといいます。魔術学府の3階生で、サマンサとは同じクラスです」
「私もエオイドやサマンサと同じクラスで3階生のアマンダよ。よろしくね」
そのあとは後ろからついて来てる、タイキ君たちや、俺の嫁さんたちが次々に自己紹介をしていく。
しかし、3階生ね。
この学府では◯年生ではなく、◯階生と読んでいる。
理由は、この学校が実力主義だからだ。
最大の階生は10で、3階生までは筆記試験さえ潜り抜ければ普通に到達できるらしい。
しかし、4階生からは実践や決闘が査定に入るので、本当に実力がないと上がれないのだ。
因みに、飛び級で一気に3から5、8と行くことはできる。
まあ、それなりに茨の道だが。
因みに、卒業条件は5階生になることなので、別に6とか上の階生を狙う必要性はない。
就職に有利ってぐらいか。
9、10になると、天才って部類で、学長とはまではいかないけど、結構大規模魔術を使えるようになる。
この魔術が衰退している大陸でだ。
だから、価値が跳ね上がって、戦力としても凄い。
でも、天才は思考が明後日の方向の者が多いので、そういうをの閉じ込めるための学府でもある。
「えっ、エリスさんですよね? 昨日学長を負かした、あのエリスさんですよね?」
「ええ、そうですよ。同じ3階生になります。よろしくおねがいしますね」
「あ、はい。って、ええっ、なんで3階生なんですか!? エリスさんなら、もう10階生でもおかしくないですよ!?」
アマンダはエリスの3階生編入に驚いているようだ。
それもしかたがないか。学府最強の魔術師を真っ向から撃ち破ったのだ。
見ている人たちが分かりやすいように、わざわざ学長の力量に合わせて。
で、なぜ3階生になるのかと言うと。
「私たちは魔術学府の生徒というのは建前ですからね」
「……建前ですか?」
「ええ、この学府はジルバやエナーリア、サマンサお嬢様のローデイといった大国からの出資で成り立っています。無論、学長の努力もありますが、出資している方としてはちゃんと学府が学府として機能しているか、それを確認しないことには、出資を続けるわけにはいきません。無駄なお金は使いたくないですからね」
「は、はぁ……」
「難しかったですね。簡単にいうと学府の調査にきたんですよ。だから、私の実力が凄いからと言って、10階生になっても新人が育ってる3階生を見れないでしょう?」
「ああ、なるほど。あ、なら、さ、さっきの件は……その……」
エリスの説明にアマンダは納得したが、さっきの行為は不味いと理解してしまったのだ。
ちょっと顔が青ざめている。
「す、すみません!! アマンダは悪くないんです!! 僕が不注意に彼女の部屋を開けてしまって、着替え中のアマンダを覗いてしまったのが悪いんです!!」
エオイドが咄嗟にアマンダを庇うように前にでる。
おう、男前に見えるが、理由はべたで、お前が悪い。
エリスも理由を聞いて顔が引きつってるな。
「お2人は夫婦ですか?」
「いえっ、こいつとはそんな関係じゃないです!! 幼馴染です!!」
「……幼馴染です」
まあ、恋仲でなくとも、幼馴染にそう断言されると、悲しいよなエオイド。
「うーん。まあ、2人の関係をとやかく言うつもりはありませんが、他の人に迷惑をかける前に解決するべきですね。あと、個人的に言わせてもらえば、女の子の着替えを見ちゃう方が悪いです。幼馴染だからと、それで済んでいるのでしょうが、普通なら衛兵につきだされますよ?」
「……はい、すみません」
「ですよね、エリスさん。エオイドったら、何度言っても治らないんですよ!!」
「それはアマンダが起きないからだろ!! そっちが、起こせって言ってるのに、起きないから仕方なく入ってるんだぞ!! おばさんにも許可貰ってるし!!」
「……そ、それは、その、私が悪いかも?」
あ、駄目だこいつら。
お約束すぎるわ。
どっちが悪いとかじゃねえ。
いや、厳密にどっちが悪いかと言えばアマンダの方。
自分から起こせとか言っておいて起きないで、寝ぼけて着替え見られてトイレモップで追い回すとか、無慈悲どころか理不尽だ。
でも、この2人のやりとりを見ていると、ただのいちゃいちゃである。
「うっぷ。俺、甘くて吐きそうなんですけど……」
「俺もだ。と、サマンサお嬢さん大丈夫ですか?」
気が付けば、茂みから服を整えて、サマンサお嬢さんがこちらに来ていた。
「すみません。お見苦しいものをお見せしてしまいまして……」
「いえいえ、サマンサお嬢さんのような可愛い方をみて見苦しいなどと思いませんよ」
「か、可愛いですか?」
ん?
あ、可愛いは不味いのか、公爵令嬢だからな。
「申し訳ない。綺麗と言うべきでしたね」
「い、いえっ、その、可愛いと言ってもらった事が無かったので、少し驚きましたわ」
「そうですか。不快な思いをさせたのではと思ってしまいました。喜んでもらえたなら何よりです」
「はい、ありがとうございます」
いい笑顔を見せてこちらに返事してくる。
……ん、なにか地雷を踏んでいる気がする。
「ほうほう、ユキさんはサマンサお嬢さんを落とす気ですか?」
「いや、そのつもりは全くない。だが、なにかさっきの会話は地雷を踏んだ気がする。どう思う?」
「正直な意見を言わせてもらえば、ユキさんの対応は普通です。ですが、受け取り手が全部ハイパープラスにしてるように見えます。いやー、エオイド君と勝負できますかね? 奴は、ラッキースケベ持ちと言う、恋愛ものとしては王道のスキルですよ」
「勝負する気なぞ全くないがな」
で、その間にサマンサお嬢さんに迷惑をかけた2人は頭を下げていた。
サマンサお嬢さんもそれを受け入れて許しているあたり、やっぱりこのお嬢は色々器量よしで大物になると思うわ。
「ま、これで朝のイベントは終わりにしてほしいよな」
「ですね。遅刻とかしたくないですし」
「あ、ユキさん。私は学長の所に顔をだしてきますね」
俺とタイキ君がサマンサお嬢さんのやり取りを見ていると、エリスがそう声をかけて、学長室がある塔へ歩いて行く。
「エリスさん、また学長虐めるんですか?」
「いや、飴と鞭ってな。学長は飴玉が好きだろ?」
「ああ、まさに飴を持っていくわけですか」
「そうそう。そうやって、いい関係を保たないとな」
あの学長との決闘の後、ちゃんとフォローもとい、仲直りはしているのだ。
エリスの個人的希望も、友人としてかかわるのは禁止していないから、そこを伝えて、学長はホッとしてたし、色々エリスと悪巧みを話したとかなんとか。
で、今日、特製の飴玉を学長に渡して、更なる交友を深めようということだ。
「これで学府の上からの小細工は消えたってわけですね」
「ああ、あとはどうにでもなるだろ」
「注意すべきは、あの主人公たちと、それにかかわるイベントですかね?」
「あとは、馬鹿な自称天才による絡みだな」
「定番ですね。でも、それって学長挟めばどうにでもなりますね」
「だな。だからやっぱり主人公、エオイド関連だろうな」
そのあとは、すぐに教室へ向かって、遅刻と言う事態は避けられた。
お約束で、エオイド、アマンダ、サマンサお嬢さんと同じクラスだったが、学長にサマンサお嬢さんを俺たちに付けるように言ったのが続いてるんだろうな。
余計なのはエオイドとアマンダか。
そんな最悪の状況で冷汗を流して、いつでもイベントに対応できるように身構えていたが、特に何もなく、昼休みまで来てしまった。
俺たち編入生に対しても、昨日の決闘前にあいさつしていたのが功を奏したのか、他のクラスから覗きに来ると言うのはごく少数ですんだし、俺たちも質問攻めみたいなのもサマンサお嬢さんやエオイドたちのおかげで最小限で済んだ。
「で、どうだった? 学府の授業は?」
エオイドはご飯を食べながらそう聞いてくる。
今はお昼で、男女に分かれて昼ご飯を食べている。
エリス、トーリ、リエル、カヤはこう言った学校に生徒としていくのは初めてだろうし、別々にしたのだ。
あ、無論、ちびっこ4人組は1階生でこの学府に入ってる。
向こうも、お昼に合流したが、特に問題はなかったらしい。
問題があるとすれば、ラビリスが胸を凝視する子供を殺そうとしたとかなんとか……。
見るぐらいは許してやれ、それぐらい大きいんだから。
でも触るのは許さん、ラビリスは俺のもん。
と、エオイドの話なんだっけ? ああ、授業か。
「いや、聞いての通りだな。問題はなさそうだ」
「ですね。普通にちゃんとわかりやすく授業してましたし、分からないって生徒もいなかったみたいですし、普通ですね」
「はぁー、なるほど。そう言うところを見るんですね」
「授業内容の難易度が高すぎても生徒がついて行けないし、生徒が育たないからな。いい塩梅なのかってのは大事だ。そこを見ないとな」
「エオイドもちゃんと理解して授業きいてるだろ。そこが大事なんだよ」
「勉強になります」
「いや、まあ、俺たちのことを見習っても仕方ないと思うけどな。で、次の授業は実践らしいけど、どんな事するんだ?」
そう、午後の授業は実践らしい。
だが、内容はさっぱり聞いていない。
俺たちにとっては、学府にある情報を集めるのが本当の目的で、この学府の授業体制とか興味ないんだよな。
色々トラブルがあって、そういう事になってるけど。
「ああ、魔術を放つ訓練と、魔物退治ギルドで仕事を受けて魔物を倒す訓練ですね」
「ん? 魔術を放つ訓練はわかるが、魔物退治ギルドってなんだ?」
「えーと、そういえば、この学府の周り以外は、魔物が極端に少ないんでしたっけ? でも、この学府の周りは普通に魔物が湧いているんですよ。ゴブリンは普通にいますし、オークも奥にいけば普通にいます。ゴーレムとか、スライム、スケルトンってわかります? 学長は魔法生物って呼んでいますけど、奥の更に奥の方にはそういうのがいるらしいです。で、その魔物は人を襲ったり、作物を荒らしたりするんで、退治するんですよ。それが訓練で進級の条件ですね。ま、普通にここら辺の傭兵たちは魔物退治ギルドに登録して、魔物退治をしてお金を得ています」
……それって、冒険者じゃね?
いや、落ち着け、まずは魔法生物が存在できるほど、この地域の魔力濃度が高いってことだ。
学長に話を聞かないといけないな。
「あ、ユキさんたちはギルド登録してないですよね。なら、登録ついでに、午後は僕たちと一緒に魔物退治の実戦訓練に行きましょう。大丈夫ですか?」
その言葉に、俺の探求への思考は消えてしまった。
「ああ、魔物退治、一度はやってみたかったんだ!!」
「ユキさんの所は魔物が殆どでない地域だったんですね」
「……いや、ユキさんはどちらかと言うと、魔物の親玉だったような……」
「黙ってろ」
「がふっ……」
タイキ君を黙らせ、俺はエオイドの話に心躍らせる。
俺はウィードの大陸では、ついに冒険者活動をすることが無かった。
いや、一度だけ、すこーしだけあった気がするが、あれはノーカンだ。
でも、ここでは違う。
俺の立場を誰もしらないし、俺が冒険者登録しに来ただけで、ランク8からとかしないし!!
俺は初心者で冒険者、もとい、魔物退治ができる!!
ひゃっはー!! 俺の冒険が今始まる!!
「……魔物がいなくならないといいですね」
流石に、そこまではせん。
だが、ちょっと頑張りすぎるかもしれない。
さあ、ユキは自重できるのか!!
主人公たちに華を持たせられるのか!!
主人公イベントは起こるのか!!
次回を待て。




