第1997堀:次の手は
次の手は
Side:ユキ
「一般用のナイトマンは上手く行ったな」
「そうね。爆発しなくてよかったわ。カシア王女たちが信頼してくれるかどうかだったし」
「そんなことはしないさ。とはいえ、なかなか面白い戦い方をしたね」
「そうなのです。さすが、ナイトマンズなのです」
「ですね~。とはいえ、もっとかっこいい武器とかあったのですが、今日はデビュー戦ですし、秘密兵器に関しては、ピンチになったときに出すのがセオリーですね~」
「あれだね。敵の幹部とかが来てからだね」
俺とセラリアの言葉に、ナイトマンスーツを手掛けた、エージル、フィーリア、ナールジアさん、ハヴィアと楽しそうに口を開く。
うん、展開としてはそれが定番ではあるし、熱い展開だというのはわかるが……。
「そういうことにはならないわよ。なってはいけないの」
「だな」
「「「え~」」」
セラリアと俺の言葉に不満を漏らす開発者たち。
だが、当然の話だ。
「ピンチになってなってもらったら困るからな。カシア王女たちに俺たちがいれば安心だと思ってもらわないといけない」
「そうそう。ピンチを引き起こそうものなら、その程度だと見限られるわ」
うん、俺たちの支援を受けているカシア王女たちが、俺たちに不安を持つようなことは避けたい。
と、その説明で済むと思っていたんだが……。
「え~、そうですか~? 今の所唯一の戦力ですし~、そこまで心配はいらないんじゃないでしょうか~?」
「僕もナールジアさんに賛成だね。2人の言っていることはわかるけど、あまりにも隙が無さ過ぎるというのも問題だよ」
「エージルの言う通りだね。完璧すぎると、今度は私たちを脅威と捉える余裕がでてくる。それは避けた方がいいんじゃないかい?」
「そうなのです。完璧は人を遠ざけてしまうのです。ヒーローは孤高というのはアリですが、状況を考えると、それは避けた方が良いのです」
「「むぅ」」
なんというか、意外な返しが来た。
確かに、ウィードというかヴィリアたちが所属している組織の力を見せるというのが目的であって、圧倒的力を見せつけて、相手に警戒心を抱かせるのは目的ではない。
一考の余地はあるな。
「確かに、相手がこちらに警戒を抱くような状態は避けたいわね」
「だな。とはいえ、ナールジアさんたちが言うような事態は避けたい。ピンチな時にタイミングよくというのは、まずないからな」
よくあるドラマやアニメなどの、こんなこともあろうかと。なんていうのは、幸運が無ければ成立しない。
タイミングが遅くても早くても意味がないし、遅い場合は味方が死んでいるってことになるわけなので、完全に最悪になるわけだ。
そんなギリギリな所を見極めて助けに入る必要性は認めない。
「そこらへんはリアリストですよね~。まあ、言いたいことは分かりますけど~」
「ま、安全に関してはそうだね~。でも、演出としてやる分はいいだろう?」
「演出?」
エージルの言葉にセラリアが反応する。
俺は言いたいことがわかって、さらにため息が出そうになる。
「演技しろってことか」
「そういうこと。別に本物の強敵相手にそんなことをやれって話じゃないさ。適度に苦戦している様子と、こちらのサポートが優秀だってことを見せるわけさ」
「そうそう。こっちも完璧じゃないってことを見ることで向こうもやる気を出すはずさ」
「そうなのです。ヴィリアたちがいるだけで、自分たちはいらないと思われるのと、自分たちも必要なんだと思うのは全然違うのです」
エージルの説明に、ハヴィアとフィーリアも同意して正当性を訴える。
先ほどの説明と同じように説得力がある。
確かに、ヴィリアたち、リエルが連れてきた兵士たちだけが活躍するというのは、砦の守りについている兵士や冒険者の見せ場を奪うことにもなる。
それは、兵士や冒険者たちのやる気を削ぐことになりかねないか。
そして、そんな状態が続けば砦の防衛はもちろん、下手に出来た余裕がこちらへ意趣返しとなるかもしれないってわけか。
「……話は分かったけれど、かといって私たちだけで話し合うことではないわね。リエルはもちろん、部下の兵士たちに指示を出さないといけないけれど、それもジェシカたちの部下よね? 命令系統が面倒ね」
「だな。直接的な現場の指示はリエルができるが、この手の兵士の運用変更はジェシカたちに伝えないと問題だろうな。というか、リエルやヴィリアが判断できることじゃない」
完全な作戦変更だ。
全体で打ち合わせする必要がある。
と、そんなことを考えていると、不意に会議室のドアが開いて、ジェシカたちウィードの将軍メンバーが入ってくる。
「あら、3人ともどうしたのかしら? 確か軍のほうで、ナイトマン装備の確認をしていたんじゃないかしら?」
「ええ。ナイトマンスーツの実働は確認しました。性能は間違いなく破格でしょう」
「はい、アレをそろえればウィードの兵士たちの生存性はもちろん、作戦の成功率も上がるでしょう。より難易度の高い任務もこなせるようになります」
「ですが、それよりもちょっと、あの襲撃に関してあることを思いついたので、ユキ様やセラリアの意見が欲しいのです」
なるほど、3人もあの戦闘を見て色々思う所が出てきたってわけだ。
まあ、俺たちも、ジェシカたちを交えて話すことが出来たしちょうどいいと思おう。
「こっちも3人の意見が欲しいところだったからよかった。オレリア」
「はい。皆さんこちらへ」
そういうとオレリアたちが3人を席に案内して、お茶の用意を始める。
「それで、ユキも私たちに意見があるとか?」
「ああ、そっちとかぶるかどうかは分からないが、リエルに預けている兵士の運用についてだな」
「兵士の運用ですか? リエルに直接指示を出すのではなく?」
「大幅に運用方法が変わりそうでな。リエルの前に、ジェシカたちに話を通さないと混乱を招くと思ってな」
「なるほど。大規模な方針転換ということですね。それで、どのようなことをするつもりなのですか?」
「簡単にいうと、ナイトマンたちが圧倒的な力を見せただろう? それによって砦の人員が自分たちはいらないんじゃないかってことになるのを防ぎたいってことだな」
「ああ、なるほど。確かにその可能性はありますね」
「十分あり得ると思います。ナイトマンたちはもちろん、ヴィリアたちが今まで支えてきてますから、その身内がくるとなるとやる気が持つか……、あと余裕が出てきたことに対して、邪推しかねませんね」
「ああ、そっちもありましたね」
どうやら、こっちの言いたいことは分かったようで、スタシアやフィオラは顔をしかめる。
「まあ、その手の問題を私たちが配慮するのは、と思いますが、カシア王女に負担をかけるもの不本意ですし、不仲になっても困りますか」
ジェシカはそこまで気にした様子はなく、淡々を事実を述べる。
「そういうことだな。背中から刺されたくはないだろう?」
「それはもちろん。リエルの部下として送っている兵たちも使い捨てにできるようなものではありません。魔物ではなく、人の兵士ですからね。どれだけ訓練に手間暇がかかっているか」
だよな~。
ウィードの兵士は誰でも貴重だ。
なにより、新大陸にまで送り込んで作戦に従事させるほどの練度となれば、他国で言うエリート兵士だろう。
それを馬鹿なことで失うのは避けたいよな。
というか、魔物兵も訓練をしているので、簡単に失えるものではないけどな。
「理解してくれて助かる。それで、ある程度砦の人たちが、自分たちも頑張らなければ、俺たちと共闘が必要だってぐらいには、手加減とみられるのは困るから……」
「なるほど。ある程度苦戦して見せる必要があるというわけですね」
「話は理解しましたが、かなり要求の高い内容ですね。リエルでは難しいでしょう」
「ですね。とはいえ、一度圧倒的な力を見せつけた後で、苦戦するというのは難しいというか、逆に怪しまれるのでは?」
「そこら辺もあるから、設定を練ってくれって話だな」
「「「ああ」」」
俺の言葉に納得してくれる3人。
今更、ギリギリの戦いをする理由を考えるとなると、リエルなら爆発する。
だから俺たちで設定を考える必要があるんだが……。
「ああ、それなら良い案があるよ」
意外な所から、いや、予想したところから声が上がる。
それは、ナイトマンスーツを作ったエージルたちだ。
「簡単ですよ~。ナイトマンスーツの稼働限界時間があるとか、魔石の量がそれなりに必要だってことにすればいいんですよ~」
「そうだね。初日だから8機稼働したけど、これからのことを考えるとメンテとか、魔石の確保とか長期戦になるんだし、常に出せるのは半分ぐらいがいいだろうし」
「そうなのです。全力稼働はいざという時なのです。ま、実際には必要ないのですが。まず先に乗っている人が疲れて動けなくなるのです。まあ、あの程度の戦場でなら、そのまま睡眠してもナイトマンなら平気なのですが」
でしょうね。
人の疲労度を上回る耐久性と持久性はあるだろうね。
それぐらいないと兵器としては信用できんし。
車が連続稼働時間が燃料が尽きるまでと言っても、実際連続して同じ人が車を運転していられるのは精々10時間ぐらいだ。
トイレやごはん、睡眠とかがいるからな。
それ以上の運転は集中力を失って事故の確率が高くなる。それと同じってわけだ。
「まあ、その方向で設定は詰めるとして、ジェシカたちが話したいことは何なんだ?」
そう、ジェシカたちもナイトマンたちの戦いをみて思う所があったという話だ。
そっちも聞いておかないといけない。
「ああ、それなんですが、敵の本拠地を探すというのが、目的にありましたよね?」
「あるな。それが分かれば色々助かるんだが、下手に踏み込んで逃げられれば被害が拡大する可能性があるからな~」
どうしても踏み込んだ時点で、ダンジョンマスターにはこちらの存在が知られる。
まあ、知られるぐらいなら誤魔化せるが、負けが確定となると逃げる可能性は十分にある。
その場合、相手がどう動くかさっぱりわからないからな。
確実に仕留められるとわかるまでは下手に動けないわけだ。
何せ、最悪は北部が壊滅して、中央部も被害が出るっていう状況だしな。
「はい。それは理解しています。そこで、敵に気がつかれない密偵というか、そういうのを送れないかと思いまして」
「ん? どういうことだ? ドローンは怪しまれるし、洞窟内だとどうしても逃げ場がない。ほかにあるっていうことか? ネズミ類の使い魔とかか?」
一応検討はしたが、小動物類は魔物にとっても餌となるからな。
下手に逃げられない空間にやるとっていうのがあるんだよな。
それに使い魔は魔力の流れが通常とは違うから、魔術師にはばれる可能性が高い。
そうなると先のリスクにつながるから、やめておこうってなったわけだが。
「そうではなく、砦を襲ってきた魔物に発信機を付けて泳がすなどはどうでしょう?」
「……詳しく話を聞かせて頂戴」
セラリアはもちろん、全員がジェシカの言葉に真剣な目つきになって、話を聞くことになったのだった。
前もありましたが、無自覚な内通者というやつですね。
それを意図的に作るかどうか。
あとは、砦の兵のモチベーションをバランスよく保つための作戦。
演技としても怪しくないようにしないといけないのは大変ですよね。




