第1996堀:ナイトマンズ始動
ナイトマンズ始動
Side:ジェシカ
『じゃ、みんな迎撃開始だよ!』
『『『はっ!』』』
画面の向こうではリエルが指揮をとって、ナイトマンたちが魔物の集団へと向かっている。
その速度は、魔術を行使、あるいは身体能力を相応に強化しなければ出ない速度です。
そして、驚くべきはその足を緩めることなく……。
『突撃だぁ!』
『『『おうっ!』』』
たった8名の兵士は魔術などの飛び道具を使うこともなく、そのまま魔物の集団に突っ込みます。
普通であれば、そのまま囲まれて蹂躙されるのですが……。
彼ら自身もウィードで相応の評価を受ける兵士であり、実力は申し分ありません。
そして、フィーリアやエージル、コメットたちウィードを代表する技術者集団が作ったナイトマンスーツ。
それがただというと違うかもしれませんが、ちょっと強いだけの魔物が数百相手程度に……。
『お~、お~、派手だな~』
『それぐらいじゃないと、カシア王女たちも安心できないから、ちょうどいい』
『そうね。これぐらいは簡単に蹴散らせないと、私たちの後釜は任せられませんし』
『傍から見れば衝撃的な瞬間ですけど』
ヴィリアの言う通り、私の画面には、ナイトマンスーツを装着した兵士が走って魔物の集団に突っ込み、なんとまあ、そのまま駆け抜けるぐらいならともかく……。
ドガガガガ……。
そんな轟音を立てて、各々が敵を弾き飛ばしているのです。
切り捨てるとか、魔術で吹き飛ばすとかではなく、衝突して吹き飛ばしているのです。
大型のオーガとかも吹き飛ばされているので、かなり珍妙な状況ですね。
「インパクトが強いですね」
「あはは、すごいですね」
私が言葉を発する前に、一緒にナイトマンの稼動状態を確認しに来た、スタシアとフィオラも、あまりにもな運用に苦笑いをしつつ画面を見つめています。
私も同意見です。
「というか、弾き飛ばすのはいいのですが、あれ死んでませんよね?」
「そうですね。多少のダメージはあれど、あれではゴブリンとかの小型の魔物ならともかく、オークぐらいになれば、怪我はしても死にはしないでしょう」
「ですね。あのまま放置では意味がないのですが……。いえ、敵の勢いは止まりましたか?」
「ああ、そういわれるとそうですね」
フィオラの言う通り、そういえば、あの8名の突撃というか、衝突を受けて、魔物の集団は足が止まっています。
確かに、吹き飛ばせるはずの人に、逆に吹き飛ばされていればびっくりしてしまいますか。
そして、そんなことを考えているうちに、突撃をして魔物の群れを突っ切ったあとに振り返り……。
「なるほど。振り返って、後方から魔術攻撃ですか」
「普通なら推奨しませんが、実力を見せるという点でこれ以上のパフォーマンスはありませんね」
「防御力、力を見せて、最後に敵の足がとまったところに魔術での範囲攻撃。確かにこれは見ごたえはあります。スタシアの言う通り、パフォーマンスとしてはですが」
二人とも辛辣ですね。
まあ、何か不具合が起れば、砦の味方が見る中でナイトマンが破壊されるという事態になるので、信用が得られないということにもなりかねないので、間違ってはいませんが。
本来は、あの機動力を生かし、距離を取りつつ、魔術による遠距離攻撃での殲滅です。
ああ、もちろん、近接ができないわけではありません。
何せフルプレートアーマーですからね。
普通のフルプレートアーマーでもかなりの防御力を誇りますので、近接においても圧倒的な防御力を前にタンクとして戦えるものです。
普通であれば、魔力が尽きて、近接ということになるのでしょうが、ナイトマンはそこら辺も考えています。
何より、あのナイトマンスーツ自体が魔道具であり後装填式の魔力補充型です。
ノーマルナイトマンスーツは誰が使っても魔力の消費はしないというのが特徴なのです。
無論自身の魔力を供給して戦うこともできますが、魔力がない者でも、魔物が落とす魔石をそのまま燃料として使い、ナイトマンスーツの性能を引き出して使うことが可能です。
つまり、魔物を目の前で倒し続ける限りは燃料が無くなることはないということですね。
もちろん、魔物の魔石を確保する暇がなければ、稼働時間や攻撃方法がどんどん限られては来ますが、そんな馬鹿みたいな戦場にナイトマンを送る理由はありません。
そんな状況では、ナイトマンの魔力が無くなる前に、装着者の体力がなくなりますし。
「……今の所、動作不良などは見られませんね」
「ええ。装備の有用性は間違いありませんか。まあ、エージルたちの仕事を疑うことは……」
「いえ、疑わないとダメでしょう。性能はけた違いですが、どこかでお遊びを入れますからね」
フィオラの言う通りですね。
仕事というか、性能は確かに間違いなく有用でありけた違いなのですが、何かを仕込むんですよね。
スタシアも最後まで言いきれませんでしたし、私もそれは同意です。
まあ、得てして開発などをする側はそういうモノだと、ユキは言っていますが。
というか、そういう発想が無くては技術は発展しないとも言っています。
余分こそが、無駄なことをすることが、新しい発見につながると。
……言っていることは分かりますが、せめてこちらにすべての機能を開示してほしいものですが。
ああ、私たちが却下する可能性があるから意味がないわけか……。
「ジェシカ、どうしたのですか? 何か悩んでいる様子ですが?」
「あ、いえ。開発者のメンバーに余計な機能をつけるなというのをどうやって聞かせればいいのかと思いまして」
「あはは、なかなか難しい問題ですね。いままでもずっと言っているはずですし」
そうなんですよね。
ナールジアさんたちには何度も言っているのですが、そういうのは様式美としてやめないんですよね。
幸い、今の所、鹵獲された際の自爆、自壊装置以外で危険な隠し機能は無いですが。
「ですが、装備品の個人的な改造はよくやっている話ですしね。まあ、大本が変な機能をつけるのとは大きな違いでしょうが」
「それはありますね。まあ、制服に改造ではなく、ベルトなどに小物を入れるカバンを取り付けたりなどはよく見ます」
スタシアの言葉にフィオラが頷いてそう返します。
確かに、国の正規軍となると正式な制服と装備が支給されますが、それで問題ないというのは……正直ウィードでもあまりありません。
それは用意する側が悪いというわけではなく、状況によって最適な装備が変わるという所ですね。
もちろん、軍もそういう環境に合わせて装備は用意しますが、個人の感覚、つまりは先ほどフィオラが言った専用の小物入れなどは、個人のゲン担ぎ、幸運を祈ることと同じような行為ですからね。
とがめる理由もありません。
ああ、もちろん作戦行動に邪魔になりそうな物や、こちらが指定する危険物等であればとがめますが。
お守り、一回二回分のポーションなどの携行を止める理由は無いですからね。
「さて、魔術の攻撃は終わりましたか」
「……土煙が舞ってよくわかりませんね。視界を塞ぐような魔術はご法度だと言われているでしょうに」
「今回は演出重視だったという感じでしょうか?」
フィオラの言う通りかもしれませんね。
ナイトマンスーツを着用している兵は、ウィードでも上位の実力者です。
魔術での広範囲による攻撃の際の注意事項は知っていて当然です。
そして、その際の対応もです。
「流石に、対処をしないわけないですか」
ちゃんとマニュアル通り、煙を風の魔術で吹き散らします。
そうしなければ、人相手ならばともかく、魔物は接近する可能性が高いので、不意打ちをうけるのです。
煙の中でも進むというのは、流石は魔物というべきか、単調というべきかはわかりませんが、物量で押されるというのは間違いなく、数の少ない側にとっては脅威なのです。
それで、予想通り、風で土煙を払った先には、前進を続けたようで、移動している魔物たちが露わになります。
ですが……。
「突っ切ったあと後方からの魔術攻撃で、どちらに進んでいいかわからず、散っていますね」
スタシアの言うように、映像に映る魔物たちは、大規模な魔術攻撃に方向感覚がなくなっているようで、各々四散している。
逃げているとも取れなくはないのですが、煙が晴れると同時に、砦に向かうものと、ナイトマンたちに向かうもので分かれるので、敵を倒すという命令を優先しているのは間違いないでしょう。
「……なるほど。それを見るための煙幕ですか」
「みたいですね。まずはナイトマンの圧倒的な攻撃力。その後の視界を奪っての精神的な揺さぶりをかけたというわけですね」
「その結果、魔物は逃げもせず、敵であるナイトマンや砦に向かってくるということは……」
「指揮官による指示の強制があるのでしょうね。まあ、ヴィリアたちの話によれば、逃げる魔物も多少はいるようですが、それは全滅近くになり、怪我を負った個体だというのがわかっています。つまり、よほどのショックを受けると、その強制の指示は解除されるようですね」
「とはいえ、死にかけレベルですからね。余り狙ってやるようなものではないですね」
そうですね。
逃亡したところで、力尽きていたという報告は受けているので、あまり意味はありません。
アスリンを連れてくれば情報収集が多少は出来たかもしれませんが、そこまでして回収できる情報が重要かというと微妙ですね。
しかし……。
「ん? 待ってください。逃げる魔物が回復などしてしまえばどうなるのでしょうか?」
その時スタシアがそんな疑問を口にします。
「回復ですか。まあ、普通に考えればそのまま野生に戻るのではないかと。期待しているように、敵の拠点に戻って報告する可能性は……」
「まずないでしょうね。とはいえ、ゼロではありません。発信器をつけてみますか?」
「……私たちだけで済ませて良い話ではありませんね。ユキたちに相談してみましょう。ともかく、ナイトマンの初戦は上手く行ったようですし、詳しいデータをエージル達に聞く必要もあります。ユキの相談もありますし、向かいましょうか」
ということで、私たちはナイトマンの稼動状態を確認してから、ユキたちの所へと向かうのでした。
8名投入しているので、戦隊ものは5人なので、ナールジアさんたちと揉めたとかなんとか。
とはいえ、それでも少ないと思いますが、それはそれ、これはこれ。
というか、それを覆す、超兵器を用意していたらしいが、そっちは却下されたとか。




