第1992堀:いざお届け物へ
いざお届け物へ
Side:リエル
「じゃ、行ってくるね」
「気を付けてね」
『無理はしないようにしてくださいね~』
『そうね。リエルは冒険者だったんだし、最前線の空気も感じ取ってくれるとありがたいわ』
なんか、ちょっと荷物を届けに行くだけで、みんなから見送りを受けている。
向こうにはヴィリアたちもいるんだし、そこまで心配する必要もなければ、情報に関しても僕が行く前から色々集めているだろうにって思う。
とはいえ、それだけ色々気になっていることがあるんだろうね~。
いや、魔物の本拠地とか、敵の狙いとか、そういうが気になるのはわかるけどね。
『いいですか、リエル。部下に関しての扱いはよくわかっていると思いますが、ナイトマンスーツのこともありますから、情報漏洩に関しては注意してください』
「うん、わかった。本当にナイトマン関連は大事だしね」
僕は今回軍部の部隊を率いている。
ジェシカが用意していた陸上戦艦の配備部隊でナイトマンスーツ一般兵仕様を着用している。
なんか、ナールジアさんとかフィーリア、コメット、ザーギスは戦隊物で揃えようとかいう意見があったらしいけど、何色のカラーバリエーション作るんだとか、子供が真似して薄着の装備で戦いに出たらどうするんだってことがあって、ナイトマンがベースになったみたい。
まあ、ウィードの特殊技術が無いと、薄皮のスーツなんて防御力無いに等しいからね~。
子供がヒーローの真似をして、魔物と戦うのは確かに避けたい。
僕たちもそこらへんはしっかりしないといけないって思ったよ。
警察官の真似をして遊ぶ子供たちはいるからね~。
冒険者の真似っていうのも。
そして、商売で装備も含めて、警察官セットとか冒険者セットとか売ってるんだよね~。
実用性はまったくないけど、その分安いんだよ。
だから、ナイトマンも同じになるって話。
「なにか忘れ物?」
僕が考え事をしているのが分かったのかトーリがそう聞いてくる。
「ううん。ナイトマンの変身セットも売られるんだろうな~って」
『あ、それは当然ですよ? ウィードの兵士が強いというのを国内外に喧伝しないといけないですからね~。ちゃんと試作品を製作中で~す』
ラッツから即座に返事がある。
うん、やっぱりそうだよね~。
『勝手に作られるのも困りますからね。まずはこちら、ウィードが公式に作ります。そして基準をつくってからコピーというか、ナイトマン商品を作ってほしいですね~』
『そうね。粗悪品をつかまされて総合庁舎に文句を言いに来ることもあるし』
ラッツの言葉に同意するようにエリスも頷く。
あ~、やっぱりそういうことはあるんだ。
まあ、人気があるってわかっているし、その手の商品を作れば売れるっていうのもわかる。
けど、その商品を楽しみにしている人たちを残念に思わせるようなものを売るのはダメだよね。
『もちろんナイトマンのフィギュアに関しては私やフィーリアちゃんたちが監修しますので大丈夫です!』
『そうなのです! 限定物として超合金ナイトマンズを出す予定なのです!』
うーん、ナイトマンの限定モデルっていうのは惹かれるけど、それ買えるのって大人だよね?
『ま、ナイトマンの扱いはこちらで色々やるから、リエルは気にせず、物資を届けた後は、自由に判断してくれ』
色々聞かされて苦笑いしている僕にユキさんがそういう。
思わずユキさんに視線を向ける。
今の言葉だと、僕に判断を任せるってことだけど……。
『ええ、夫の言う通り、リエルの自由にしなさい。私たちの方針としてはなるべく仲良くしてほしいとは思うけど、現場での判断はその場にいないとわからないものね。まあ、私たちの出番をのこしてもらえるとありがたいわ』
ユキさんの言葉を肯定するように、セラリアもそういってくれる。
まあ、セラリアも暴れたいっていうのは常々言っているしね。
「うん。わかった。セラリアたちの分は残しておくよ!」
そういって、僕はゲートを通って、ヴィリアたちがいるイオア王国のアンドへと向かう。
「お待ちしておりました」
そういって、ゲートの向こうで待っていたのは、霧華の部下だ。
「うん。来たよ~。状況はどう?」
「拠点に問題はありません。イオアの砦も依然と変わりません。ヴィリア様たちが詰めているおかげです」
「あ~、やっぱり魔物襲撃は続いているんだ」
「はい。いまだに数にばらつきはあれど300から500という感じで攻め寄せている状態です」
状況は特に変化は無しか。
そんなことを考えているうちに、連れてきた部下が報告をしてくる。
「全員問題ありません。ナイトマン装備も問題なく稼働しています。体調不良もなしです」
「ご苦労様。さて、僕たちは予定通り、砦に向かおうと思うけど、大丈夫?」
「問題ありません。この拠点の場所や砦の位置は把握しておられますでしょうか?」
「うん。大丈夫だよ。ここはアンドの町と砦の間にある、小高い丘にあるんでしょ?」
そう、この拠点はアンドの町と砦の中間に存在している草原の地下に設置されているんだ。
傍から見てただの小高い丘でしかない。
しかも道から外れているので、わざわざ近寄る理由もないってこと。
他にもこの小高い丘よりも高い丘陵はあるし、この場所による理由が本当に無いんだよね。
もちろん近寄ってわかるようなものでもない。
ちゃんとそういう細工をしてあって、僕たちが持っている許可証か、内側から招き入れてもらうしか、入る手段は無い。
「その通りです。問題はなさそうですね。常にこちらや、ウィードとは連絡が取れますので、何かあれば連絡をください。すぐに対応いたします」
「うん。わかったよ。その時はよろしく。じゃ、みんな行くよ」
「「「はっ!」」」
僕の声に全員しっかりと答える。
うん、ちゃんと訓練している証拠だね。
まあ、ナイトマンスーツの選抜や陸上戦艦の乗員に選ばれたぐらいだし、優秀なのは当たり前か。
そんなことを考えつつ、僕たちは外へと出る。
「周囲に人影、魔物無しだね」
外は晴天、草原には良い風が吹いていて、気持ちが良い。
仕事じゃなければ、のんびりしたいところだね。
でも、今日は仕事で来ている。
なら、さっさと済ませて辺りのことを見てみるかな。
砦も町もこの位置からなら確認できる。
「よし。目標はアンドの砦。走るよ」
「「「はっ」」」
返事を聞いてから僕たちは走りだす。
特に問題も無し。
南側と環境に違いはなさそうかな?
いや、若干寒いかな? 涼しい?
南側が暑いからね~。
正直北側は寒くなるって話だけど、僕はこっちの方がいいかな?
本格的な冬が始まればトーリはお耳が取れるって嫌がるかもしれないけど。
そんなことを考えながら草原を疾走していると、あっという間に砦にたどり着く。
そういえば、距離的にはそこまで遠くないんだっけ?
まあ僕たちの足だからっていうのもあるだろうけど。
「何用か」
砦の前に兵士たちがいて、警備をしている。
魔物が来ない側も厳重なんだな~って思いつつ、僕は答える。
「僕たちはヴィリアたちから要請された援軍だよ。物資も持ってきた。確認を取ってくれないかな」
「わかった。しばし待たれよ」
そういって、兵士の一人が確認のために砦の中に入っていく。
待っている間に、砦の人に話を聞いてみる。
「それで、最近魔物が多くなってきたって話だけど、どうなの?」
「ん? ああ、多くなったというか、まとまってくるようになったな。一度に相手にする数が増えて大変だともいえるし、まとめて処理できるから楽ともいえる」
「なんか、微妙だね」
意外と、兵士の人は普通に会話をしてくれる。
こっちに敵意がないってのがわかっているのかな?
「そうだな。どっちも大変だっていうの変わりないからな。日に何度も来れば疲労するし、まとまってくれば数が多くて対処が難しい。どのみち、こっちの備蓄は色々消費されていくからな。正直、物資を持ってきてくれたっていうのはありがたい限りだ」
「そうなんだ」
「まあ、それもお前さんが言っていたヴィリア殿たちのおかげだがな」
「どういうこと?」
「あの4人がいなければ魔物たちに押し込まれていたと、俺でもわかるぐらいだからな。というか死んでいたかもしれん」
「そんなにひどかったんだ」
「ああ、まとめて来られると、砦も総力戦になるぐらいには魔物の数が多くてな。一度二度はしのげてもってやつだった」
うん、ヴィリアたちからの報告にもあったね。
その認識は一般の兵士たちも肌で感じていたんだ。
「良く逃げなかったね。やばかったんでしょ?」
「死人が増える前だったしな。幸いヴィリア殿たちが来て押し返してもくれたから、踏みとどまれたな。まあ、俺は地元がここだから、逃げるわけにもいかないんだがな。ほかの兵士もほとんどがそうだと思うぞ」
確かに、砦の一般兵なんて、近くからの志願だよね~。
遠方から赴任とかなんて、エリートとか、左遷ぐらいのものだし。
ここが最前線の砦って考えると、左遷で送るような場所ではないよね~。
下手な人材を送って防衛崩壊とか、馬鹿すぎるし、あの王女様がそんな馬鹿を使うわけもない。
「じゃ、僕たちも頑張らないとね」
「なんだ、嬢ちゃんたちも一緒に戦うのか?」
「責任者が認めてくれればね」
「あ~、そっちか。そこらへんは俺たちじゃ判断できないしな~。まあ、ヴィリア殿たちの援軍ってことなら問題ないと思うが……と、戻ってきたみたいだな」
そう言われて砦の入り口に視線を向けると、さっき入っていった兵士はもちろん、ヴィリアたちがこっちに向かって歩いてきていた。
「リエル、早かったな」
キシュアがそういうので、僕はすぐに返す。
「そりゃ、走ってきたからね~。でも、みんな疲れてないよ。ねえ?」
「「「はっ! 全員今からでも戦闘可能です!」」」
「あはは、皆さまご苦労様です。とはいえ、今日の戦闘はもうないですけど」
「本日の襲撃は終わった。まあ、絶対とは言いきれないけど、今は待機」
「「「はっ!」」」
ニーナの言葉に即座に返事をする兵士のみんな。
まあ、これが普通だよね~。
「疲れていないなら何よりです。物資の受け渡しを兼ねて、砦の責任者と会ってもらえますか?」
「うん。いいよ」
スィーアの言葉に頷いて答え、僕たちは砦へと入っていく。
さ~て、噂のお姫様は僕たちをどう評価するのかな~?
リエルがウィードを代表して見極めに行きました。
まあ、カシア王女とかはともかく、北の山岳をどう判断するのか楽しみですね。
因みに警察官や兵士、騎士などのフィギュア化は前からしていて、相応に人気の商品だったりします。




