第1987堀:話すか話さないか
話すか話さないか
Side:リエル
「やるやる~!」
今日はウィードに町の治安の状態の確認に来てたんだけど、ユキさんに呼ばれて話を聞いてみれば、ナイトマンを派遣することに関しての話だったから即座に立候補する。
「……リエル。ナイトマンをやるって話じゃない。ナイトマンの存在をどう説明するのか、その前に存在を明かすのか。そこら辺の話」
でも、カヤからそうツッコミを受けてしまう。
「わかってるって~。でもさ~、話を聞く限りナイトマンの存在は知らせておかないと、攻撃される可能性もあるし、下手すると国や冒険者ギルドも敵に回るでしょ~」
「リエルの言う通りなのよね……」
僕の言葉にセラリアが頭を抱えて同意する。
まあ、気持ちはわかるよ。
どっちにしろ面倒があるのは間違いないんだし。
それを判断するセラリアの苦労はとんでもないだろうっていうのは。
「……でも、その説明の仕方一つで、敵にも味方にもなるから気軽にできる事でもない」
「カヤの言う通りね。だから慎重にしないといけないんだけど」
「気持ちはわかるが、あまり時間は無いぞ。中央のクリアストリーム教会はギアダナの方にも圧力をかけているが、予定が崩れてギアダナが北部のクリアストリーム教会に連絡を取っている状態だ。下手をすると中央が暴走する可能性もあるし、ヴィリアたちやほかの諜報員が拠点だけは確保している北部3国もいつ攻勢が強まって崩壊してもおかしくはない」
そうそう、ユキさんの言う通り、情報が集まれば集まるほど事態が動き出せばとんでもない被害が出ることが分かっているんだよね~。
まあ、実際にことが起こるかはわからないけど、この状態で後手に回ればさらにウィードが新大陸を駆けずり回ることになる。
そうなれば、これ以上に大変になるのは目に見えているんだよね~。
いや、北部の人たちを無視すれば……ちがうね。
その場合中央にも難民がなだれ込むだろうし、もちろん魔物も追ってくる。
なし崩し的にオーエがある南部の国々も影響が出てくるだろうし、被害は確実にとんでもないことになるよね~。
そして、その後始末をするのもきっと僕たちだ。
ユキさんが倒れている人たちを見捨てられるわけないしね~。
いや、それは僕たちもだけどさ。
とはいえ、そんな無理な受け入れをすると、さらに元の国の偉い人とかの派閥ができて……。
うん。もう考えるのをやめよう。
実際にそうなったら目も当てられないし。
「わかっているわよ。相手が動き出して後手に回ればどれだけ面倒かなんて。とはいえ、どう接触が無難なのかはわからないのよ。カヤも言ったけど、下手するとウィードが袋叩きよ? しかも魔物の攻勢も私たちの責任ってされる可能性もゼロじゃない」
「まあなぁ。だから、ヴィリアたちを向かわせたんだろ? そこから何とかこじ開けられないか? 物資支援と戦力派遣で何とか維持できるんだ。別に北部全域に部隊展開するわけじゃない」
「うーん。ラビリス、エリス、ラッツ、シェーラどう?」
悩んだセラリアは4人に意見を求める。
4人はダンジョンの責任者であるラビリス、資金管理をしているエリス、物資を預かるラッツ、そして外交を担っているシェーラ。
ウィードが大事な判断を下す時は最低でも、この4人の意見はいる。
あと、軍事面もいるんだけど……。
「軍事の方はいいのか?」
「そっちはいいのよ。陸上戦艦やナイトマンとか頭のオカシイが既にあるから」
「だよね~」
ユキさんも反論なく納得する。
本当にね。
勝手に色々用意しているからね。
「兵士の方が多少心配ではあるけれど、事前に陸上戦艦へ配備する人員の確保はお願いしているし、それで何とかなる範囲でしか動かないわよ。で、4人はどうかしら?」
セラリアはそういった後に改めてラビリスたちに意見を求める。
「……そうね。北部が敵にならないなら、話すことは問題ないわ」
「それは同じですね。というかすでに陸上戦艦及び、ナイトマンは作っていますから、使わなければ予算と資材の無駄となりますから」
「あはは~、その通りですね~。付け加えるなら、話し合いというか、交渉の際に、物資の支援ぐらいはできるというのはありかもしれませんね~。それぐらいの余裕はありますし。ウィードとかオーエからのお金とか使えないでしょうし~」
「そうですね。珍しいことにウィードはともかく、オーエ一帯の南部と中央部北部の貨幣が違うんですよね。まあ、そこら辺からも南部との対立が深いというのは分かりますが。と、外交の方からは、ここで窓口ができるというのは、国としてはありがたいです。ですが、自由さは無くなるかと」
シェーラの言葉に微妙な表情になるみんな。
まあね~。
助けに来たのに、国の名前を出すと侵略とかそういうのを疑われて行動を制限されるっていうのは本末転倒だよね~。
「そうよね。他国の名のもとに国内を動かれるとか、面子は丸つぶれだし。認めるわけには普通はいかないわよね」
うん。
僕もいい加減そこら辺の政治はわかってきたよ。
自分の家を他人に守ってもらおうって話なわけだ。
それは傍から見ればなにやってんの? 馬鹿なの? 自分の家ぐらい自分で守れないの? ってなるわけだよね。
規模が国って大きさだから今までピンとこなかったけど、こういうことだよね~。
「つまり、国ってばれなければいいんだよね。まあ、規模を考えると国ってわかるだろうけど、お互いそこら辺が面倒だ~ってニュアンスで手伝いたいってことを伝えるのはダメなの?」
僕は素直にそう言う。
全員がし~んとなったあと。
「ま、リエルの言う通りになれば理想だな。とはいえ……」
「簡単にそう黙認してくれるのかってところがあるのよね。陸上戦艦まで持ち出すんだし」
「普通は詳しく聞くことになりますね。ですが、陸上戦艦に関しては最終手段として、ナイトマン派遣で何とか話がまとまりませんか?」
「流石に陸上戦艦となると、国としては警戒しなくてはいけませんからね~。ナイトマンという人の派遣ぐらいでとどめておく方がいいでしょう。奥の手があるぐらいに匂わせておいて。前にお兄さんがやっていた傭兵団って体で」
「ふむ……。ラッツさんの案はいいかもしれません。冒険者たちがパーティーたちが組んでいるようなものです。冒険者クランですね。私たちはナイトマンとして動いていると」
なんか、シェーラの話は行けそうな気がする。
僕はそう思ってユキさんの方を向くと目が合って、頷いてくれる。
「シェーラ案は、向こうの出方を見るという意味でも、いいかと思うが、どうだ?」
「そうね。確かに一気にこちらの素性を明かすよりはマシかもしれないけど、ナイトマンが単独行動をする予定だった時の取り込みを警戒してないといけないわよ?」
「そこらへんはどこでもそうだろう? 実力があれば必ず付きまとう。幸いナイトマンの外装をつけていればある程度面倒はさけられるだろう?」
「……それもそうか。元々ナイトマンは人との接触も避ける予定だったし、ただ少しかかわりが増えるだけか」
「ですね。あくまでもクリアストリーム教会とは別に魔物を退治する集団として認識してもらうというのはどうでしょう? それなら、納得はしてもらえるかと」
うんうん、それならいけるよ。
国じゃなくて、魔物退治を主にする冒険者の集団。
それならごり押せるよ。
「資金面とか裏を探られそうではありますが、そこもごまかせると言えばごまかせますね。秘密の支援者がいると」
「まあ、そうでもないと、どうやって生活しているんだって話になりますからね。魔物を倒してもお金を得られないわけですから」
ああ、そこらへんは考えてなかったや。
確かに冒険者なら、どこかに魔物の素材とか売らないとお金にならないし、お金がないと食べていけないよね~。
そういう所を調べるって思いつくの凄いよね~。
「どうだセラリア?」
「そうね。それぐらい詰めればいいかも。でも、ヴィリアたちがなぜ、その組織と知り合いなのかって話になるけれど」
「それこそ、そっちにも所属しているって話でいいだろう。ドドーナ大司教の弟子だし、そこらへんは色々あってもいいだろう。中央部の別組織ってことでもいいし」
「あ~、それなら行けそうね。亜人排斥の状況も伝えるってのもいけるかしら?」
「カシア王女が暴走しない?」
僕だったらあんな話を聞かされれば頭に来ちゃうからね。
カシア王女がそうならないって保証はないから、そう聞いてみると。
「微妙なところだな。とはいえ、いい加減誰かに話して情報を集めないと、北部も下手をすると北の魔物と中央部と挟まれるってことにもなるし、味方も増えない。どこまで慎重になるかって話になるな。元々その見極めをするためってのもある」
「そうね。そこの判断はヴィリアたちに任せましょうか」
「うん。僕もそれに賛成。ヴィリアたちが現場にいるんだし、その人たちのことも一番わかってるって」
ヴィリアだけなら心配だけどさ、ニーナたちもいるんだし大丈夫だって。
「まあ、そこらへんは確かに現場の意見が大事よね」
「そうですね。失敗してもフォローは効くでしょう」
「戦力的にも問題はありませんしね~。とはいえ、防衛の状態を考えて敵対するというのは普通に考えにくいですけど~」
「はい。そこで敵対するなら元々使えません。向こうの判断を見るのにもいい機会でしょう」
ということで、ヴィリアたちにその判断を任せるという結論になった。
そして大事なのは……。
「さて、話すのはいいとして、ナイトマンとして誰を向かわせるかだな。会話は必要最低限でいいとしても、向こうは接触してくるだろうし、物資の受け渡しもするとなると」
「相応に対応できる人物がいいわね。まあ、ナイトマン立候補しているメンバーならだれでも行けそうだけど、対応する人物は固定にしておいた方がいいわね」
「それなら、私かラッツが良いのでは?」
「書類がいる部類の話ですからね~」
「そうだな。向こうもそういうのがあった方がうれしいだろうが、逆に怪しむとは思うが……」
「管理の問題ですからね」
「向こうが怪しむというより、こちらの問題ね」
で、最後はウィードとしての世知辛い話になってきた。
僕がナイトマンをやる時はそういうことは無いと思いたいね。
リエルは書類仕事とか確認仕事はできないことは無いですが、苦手です。
だからこそ、遊撃で自由にやれる特務として動いていたわけですが。
そして、ヴィリアたちは話すことになるのか、そこが楽しみですね。




