第1972堀:ナイトマン計画始動
ナイトマン計画始動
Side:セラリア
目の前にはユキを筆頭に、ラビリス、シェーラ、サマンサ、クリーナ、カグラ、ミコスなど、結構なメンバーがそろって、私の執務室に来ているのだけれど。
「勢ぞろいで来たかと思えば……」
まあ、ある種のいつもの通り、何か思いついたってところで、渡された書類と、ユキとプロフの説明を聞いて、ナイトマン増殖というか、活動計画を聞いたのだけれど……。
「面白いことを考えるじゃない」
「陛下」
横で執務の手伝いと護衛を兼ねているクアルが顔をしかめてそう声をかけてくる。
もちろん、クアルにもその説明を聞いている。
「大丈夫よ。二人の話と書類の内容を見る限り、仕事に支障がない程度の出撃をして、魔物を蹴散らすだけなんでしょ?」
「まあ、おおむねその通りだが……」
「流石にセラリア陛下が出撃するなんてのは、私も想定外です。クアル様も反対ですよね?」
プロフの質問にクアルは当然とばかりに頷き。
「陛下が出るのはもちろん反対です。何かあればウィードの危機です」
そう当たり前の回答をする。
とはいえ、今回はそんな風に言われても、久々に実戦で気晴らしができる良い機会だし、勝手に出撃してしまえば止めることもできないわ。
「とはいえ、今の陛下の顔。昔の騎士隊を率いて飛び出していたころにそっくりです。強制して止めても勝手に抜け出す可能性が高いとみました」
「わかってるじゃない。最近は女王として執務とか会議をしていたんだから、気晴らしに行くわよ。絶対」
私はクアルにそう宣言する。
こっちとしても黙って脱出して、ウィードを混乱させたいわけじゃないからね。
「それに、ナールジアさんたちが作ったヒーロースーツの試験を私がするのは間違っていないでしょう。軍に正式採用するかどうかもあるんだし」
「いえ、それに関してはジェシカ将軍たちのお仕事ですから。今更現場の使用感を女王に求めるわけないじゃないですか」
「それはそうだけど、私にも使えるかどうかっていうのは大事でしょ? どうせ、私たち用にカスタムしたものがあるでしょうし」
「「「……」」」
クアルも含めてその場の全員が沈黙する。
いえ、夫だけはそりゃ当然だという感じで頷いている。
あの研究、開発大好きメンバーが普通の人よりも頑丈な私たちを使って色々データを取ろうとしているのは当然の話よね。
「はぁ、まあ、そういう懸念もあるので、陛下は私か、ほかの奥様とコンビを組んで出撃となりますね」
「え~、単独で魔物をバッタバッタと倒したいんだけど?」
「流石にそれは認められません。ほかの奥様もサポートと組んでもらいますし、別に魔物だけが敵とも限りません」
「そりゃ、単独、あるいは二人で魔物をバッタバッタと倒していれば、為政者とかある程度力を持つ連中はどうにかして接触したいとは思うでしょうね」
それは世の中の流れってものよね。
為政者は治安や今度の戦力運用の為、ある程度力を持っている商家や裏組織の連中はこちらを自由に使って自分の勢力を拡大したい。
まあ、共通しているのは、敵にするのは損って考えよね。
味方にできれば戦力は増えるし、敵は減るって単純な計算でもある。
「そういうことです。一人だと不意をつかれて拘束される可能性もゼロではありません。フォローができるようにツーマンセル、最低限2人で組むべきでしょう」
「ちっ。まあ、外出許可が出たことだけは良しとするべきか」
これ以上文句を言うと、ナイトマンでの出撃すらなくなりそうだし。
「それで我慢してください。で、ユキ様お話の続きをお願いいたします」
あ、そういえば、ユキの説明を聞いていたのよね。
「あ~、いや、お話の続きというか、手が空いていると言うと語弊があるが、新大陸を手伝いたいというメンバーもそれなりにいるから、ナイトマンでの単独出撃の支援を許可してくれないかって話だ。規模が規模だから、新大陸の作戦室からの管理と指示も必要になるからな」
「確かに、ユキ様の仰る通り、規模が大きいですし、新大陸の状況は不安定ですし、情勢はいまだによくわかっていません。ウィードとの関与が疑われない駒というのは必要かと」
「そうね。ヴィリアたちがいる町以外北部が壊滅しましたなんて、洒落にならないものね」
ヴィリアたちからの報告書には目を通している。
イオアのアンドの町だけが魔物の襲撃の圧力が増しているなんてのは、都合の良すぎる考えでしょう。
「私としては異論はないけれど、私たちという遊撃が加わることはいいとして、その現場までの道のりはどうするのかしら? 私たちが交代で道を進むわけ?」
「流石にそれは時間がかかりすぎるし、普通の仕事もこなさないといけないしな。霧華の部下を派遣してもらうとする」
「いいの? 霧華たちもギリギリだったはずよ?」
諜報部の人員が足りていないから、ヴィリアたちに現地調査と活動なんてことをさせているんだし。
「今回に限り、別に調査が重要じゃないからな。ナイトマンが即時展開が可能なように場所の確保することだけだ。別に町の情報を集めてって話じゃない。魔物退治が優先ってわけだ」
「ああ、なるほど。趣旨が違うわけね」
「そういうこと。別に町の情報がいらないとは言わないが、まずは各戦線を支えることで、魔物を倒すことだ。町を拠点にする必要はないし、その過程で偉い人と会うこともないだろう」
「確かに、そこらへんが面倒なのよね。とはいえ、それでいいわけ? 下手すると追われることになるんだけど?」
「追われても追いつけないだろうしな。それに魔物退治をしているヒーローを追い回してみろ、その防衛をしている人たちが割れるぞ?」
「あ~、確かにそうね。なぜそんなことをするのかってことか」
上としては、手駒にならない強力な力は邪魔なんだけど、民衆や戦っている兵士たちからは文字通り救ってくれるヒーローなのは間違いないわ。
それを追いやるようなことをするというのは、自分たちを殺しているのと変わらないものね。
流石にそんなことをしてくる……わけが……。
「ないとは言えないから、すぐに離脱できるようにしているわけだ」
「納得」
強い人を見かければどうしても接触はしたくなるわよね。
良い意味でも悪い意味でも。
だから、下手にかかわらず魔物間引きだけするヒーローって役割が、そういう意味でもベストってわけね。
町の中に入ればどう考えても、色々な思惑が絡んでくるからしかたないか。
接触していない状態でも怪しいと言えるレベルだし。
「じゃ、そのナイトマン投入の書類出して、認可しておくから」
「話が早いな」
「別に否定することは無かったし、物資の持ち出しに関しても、私たちが出動するだけなんだし、多少新大陸の指令室のオペレーターと霧華の諜報員が動くだけでしょう? なに予算はそんなに膨大になっているわけ?」
「ないない。予算に関しては、俺たち以外の人員の給料とかぐらいだな。まあ、一応エリスからは俺たちの物資と給与は発生させないと経営としてはダメだっていわれているが」
「それはその通りです。秘密作戦でもない限りは、陛下やユキ様もその働きに応じて報酬を支払わなければほかの兵士たちも無報酬でいいではないかと言い出す馬鹿もいます」
そこはその通りなのよね。
人を使うからには給与を出す。
これは社会の当たり前のこと。
その当たり前を国を代表する私たちが破ってしまえば、民衆に示しが付かないってことになるのよね。
信賞必罰ってやつね。
「ま、そこを言われるとその通りだってことだが、物資はともかく、俺たちの給与はな。普通に仕事でもらっているから、それでいいんじゃないかって思うんだがな」
「緊急の仕事ってことでの報酬でしょ? そうじゃないと、民衆は緊急っていえば無償で働かなければいけなくなるわよ? そういうのはあなたも嫌でしょ?」
「そりゃだめだな。ノーサービス残業、ノーブラック企業だし」
夫は即時にそう答える。
まあ、メノウからも、タイキからも聞いていたけれど、地球は便利になったぶん夜遅くまで仕事をしていたらしいから、そこら辺のトラウマよね。
というか、ほぼ事務系の仕事だったメノウが過労死っていうのは本当に不思議というか、どれだけ酷使していたのかって思うほどよね。
「じゃ、大人しく給与は受け取っておきなさい。別に部下の労いとかで使えばいいでしょう」
そういって、私はそばにいるプロフやオレリアたちに視線を向ける。
だが、彼女たちは顔を横に振り。
「ユキ様は常に私たちにお金を使いますので、十分です」
「はい。ユキ様は私たちのお茶請けや、必要な買い物などもしてくれます」
「そうなんですよ~。これ以上~お菓子を持ってこられたら~、太っちゃいます~」
「それに、各部署の方々にも持ち込みをされていまして、ユキ様のお金は大丈夫なのかという声も上がっています」
「あ~、相変わらずね。あなたは」
元々、王侯貴族という立場なるユキの給与というのは一般に比べて圧倒的に多い。
まあ、そのユキは欲しい物がないから、お金が貯まる一方なのよね。
だからこそ、プロフやオレリアたちに惜しみなくお金は使うし、無論妻である私たちにもお金をかける。
自分の欲しい物は基本的に地球のモノだし、DP交換で済むのよねぇ。
そこらへんは毎回話に上がっているから、今度本格的に話してみるかしら?
……変な事業にお金をつっこんで、お金が増えるってパターンになりそうな気もするけど。
「別に俺のお金の使い道はいいだろう。ほら書類。あとは、ナールジアさんたちにパワードスーツの在庫の確認しておかないといけないんだからな」
「そっちもあったわね。多種多様とあったけれどそれをそのままってわけもいかないわよね?」
「そりゃな。というか、こっそり新型の開発をしていても何も不思議じゃないからな」
「いや、それ絶対開発しているでしょ。それを制御するためにもナイトマン量産計画は必要か。というか、そっちが本当の狙い?」
「違う違う。ラビリスとシェーラが新大陸のことを手伝いたいってのが始まりだからな。アスリンやフィーリアはほぼ一人立ちして南側の荒野や南端の森林で調査しているしな」
「あ~、確かに。なるほど二人も何か関わりたかったわけか」
そういって二人を見ると、すぐに頷いて。
「私たちだけウィードでお留守番って気がするもの」
「あはは、まあ、そういう感じです」
「そうね。私もそんな感じだし、いい機会だわ。じゃ、みんなでどう出るかローテーションでも決めましょうか」
「そっちは頼む。こっちはさっきも言ったが、ナールジアさんたちに話を通してくるから」
ということで、私たちはうきうきしつつ、ナイトマンでの出撃ローテーションを決めていくのだった。
トップの許可が下りたのだら、後は動き出すだけ。
普通は、誰が行くのかとか、そういうので躓くだけど、現物はあるし、生きたい人も山ほど。
そして、仕事としては暴れるだけだし。




