第1971堀:ナイトマン増殖計画
ナイトマン増殖計画
Side:ラビリス
「へぇ、ナイトマンを増やすね……」
私はプロフの説明は面白いことだというのが直感的に分かった。
いや、違うわね。
この場にいる全員、言葉の意味を察したのか顔が強張っている。
まあ、傍から見れば単独任務を受けるってことだから、自殺志願なんだけど。
実際はナイトマンはナールジアさんやフィーリアたちが趣味を全開に作った、とんでもパワードスーツを使うってこと。
つまり、今まで集めたデータから敵は殲滅できるってわけ。
もちろん、私たちが想像している以上の敵が出てこないとも限らないけれど。
「はい。その通りです。今北部の状況に関してはある程度情報が集まっています。その中で憂慮するべき事態があります。それは、魔物大攻勢です」
そう説明しつつ、プロフは空中モニターを展開して、新大陸の地図を映す。
「こちらは、現在取得している情報をもとに作った、新大陸の全体図です。そして、今回注目するのは、荒野がある南部……えー、北部でも中央部南部と表現しますので、南側と表現いたします。荒野がある南側ではなく、人の国家が存在している北側の北部です」
そういってさらに北側が拡大され、さらに北部が映される。
「皆さま、ご存じかと思いますが、改めてご説明させていただきます。北部はさらに北の山岳地帯からくる魔物攻勢を受けとめることが役割となっています。そしてファイアナ王国という北部の中央が物資の運搬などを担っており、戦線を支えることになっているのですが……」
そう言葉を切って、こちらを振り向いたプロフは真剣に口を開く。
「イオア王国はもちろん、ヴィリア様たちが道中通った町でも魔物攻勢が強まっています。以前から魔物攻勢が強まっていて、北部が厳しくなっているという話はありましたが、それは事実でした。否、事実以上だったと言っても過言ではありません」
そういって、先日ヴィリアたちがアンドの砦での攻防戦のデータが表示される。
「ヴィリア様たちが到着してから砦に赴くまでのデータは収集しておりました。それが一度の襲撃で100から200前後で日に3度。そして砦に入ってからは500の襲撃が日に1度、そしてまばらな魔物の接近」
日にち当たりの数は同じだけど、数がまとまってくるとなると、対応する難易度は跳ね上がるのよね。
「初日にヴィリア様たちが入っていたので、アンドの砦は問題ありませんでしたが、それがなければ被害は酷いモノになっていたでしょう。実際、カシア王女やクレント将軍は数度は防げても、それ以上は難しいという意見を言っています」
そりゃね。
今までの襲撃でも、負傷者が積み重なっていてどうしようかって状態だったみたいだし、それでさらに敵が増えるっていうのは、難しいわよね。
「そういえば、そのまとまった襲撃に関しては継続しているのか?」
「はい。あれから3日、まとまった数を投入してくる戦術に移行しているようです。ですが、襲撃時間がまちまちであり、待機している兵や冒険者たちには逆にストレスになっているようです」
日に3度の襲撃もあれだけど、その日のいつ来るかわからないっていうのも、ある意味大変か。
それに数が多いし、油断すれば不味いっていうのもある。
「休める時間は増えたのはいいがってことか」
「はい。まあ、幸いここ3日はヴィリア様たちの支援があるので、けが人も最小限で抑えていますので、ここは大丈夫なのです。問題はほかです」
プロフは本題に入ったと言わんばかりに、新しく北部の地図を広げる。
「イオアの最前線とも言える場所には、ヴィリア様たちが入っているので大丈夫ですが、ほかの2国はどうなっているかは、まだ情報は入っていません。最悪、敵の戦力集中により落ちていることも考慮するべきですが、霧華様の諜報部隊も手一杯で手が回っていませんし、敵を見つけたからといって殲滅するわけにもいきません」
そりゃそうよね。
諜報部隊が目立ってどうするんだって話だし、本当に痕跡を消して始末したとしても、それは守っている国の為にならない。
魔物が勝手に引いて行った、あるいは全滅したと感じてしまい、防衛を減らしたりでもすれば目も当てられない。
「なるべく現地の防衛をしている人たちが、誰かの介入によって減らされているという認識がいるわけです。ですが、ウィードが表立って動くわけにはいきませんでしたので、今のところは情報を集めつつ静観し、いざ不味そうになれば陸上戦艦での拠点兼移動砲台として活用しようということになっています。実際陸上戦艦は投入可能なのが3隻用意されているのはご存じかと思います」
「そうね。ほんと無茶苦茶だけど」
「あはは~。アレに乗るのはね~」
「そんなこともありましたわね」
「楽しみ」
クリーナを除いて、陸上戦艦の砲手として参加していたメンバーは遠い目をしているわね。
まあ、あれは本当に最終手段の兵器だものね。
あれを投入することになる戦場っていうのは余程だろうし、敵を倒すための砲手になるカグラたちはもっと大変になるのは目に見えているわ。
シェーラもそれを理解しているのか苦笑いしている。
「ですが、今話したように、陸上戦艦を出す必要となるのは、砦が落ちて人々が逃げ惑う時です。しかし、それは多くの犠牲が出るということになります」
確かにね。
陸上戦艦を投入するというのは、国の守りが崩れた時。
ウィードが説明無しで人々を助ける大義名分がなければいけない。
平時に陸上戦艦で侵入とか、戦争を仕掛けていると思われても仕方がないし、協力するにしても、その国に大きく行動を制限されかねない。
まあ、普通ならそれでいいんだけど、中央部の国々とクリアストリーム教会の動きがよくわかっていない時に下手に交渉は出来ないのよね。
北部はおそらく大丈夫であろうというのはわかってきたけれど、それでも中央部と北部を分断している何者かが存在しているのは間違いない。
それに足を引っ張られるのは勘弁なのよね。
下手をすると、その裏で暗躍している連中の行動で、南部とウィード、ギアダナ対中央部と北部って図式が出来てもおかしくはない。
その場合、北部と中央部の魔物大氾濫に近い攻勢を防ぐ術はないから……全滅を覚悟しないとね。
さらに、それを逃れてきた難民の受け入れとかもしないといけないという……。
うん、全然面白くないわね。
実際、今の予想が当たってしまえば、その分忙しくなるのは間違いなく私たち。
今にもましててんやわんやになるのは目に見えているわ。
そんなことにならないように動くことが大事ね。
「なので、今回のナイトマンを増やすというのは、その陸上戦艦を出す前の策になります。ナイトマンの……えー親戚?を出すことで、各戦線を支えるというのを目的とします」
そうプロフが言うと、ナイトマンの顔のアイコンが出て各国に配置される。
「ナイトマンは姿を現してよいので、各国の戦いに参戦しつつ、味方と協力して倒して、味方が油断しないように誘導できますし、敵の攻勢を防ぐことも可能です」
「なるほどな。ナイトマンたちを使えば、堂々と魔物を討伐できるわけか」
「はい。その通りです。とはいえ、単独で殲滅して奥に踏み込むようなことはやめてほしいです。各国が勝てると踏んで踏み込んで、逆撃を受ける可能性は否定できません。現状維持が望ましいです」
ふむふむ。
プロフの提案は、現状を維持するためにほかの国にもナイトマンを投入してしまえってことね。
ウィードの名前では参加できないけど、ナイトマン単体として国に姿をさらしつつ魔物を倒すのは問題にならないか。
「シェーラ、どう思うかしら?」
「良い案だと思います。ヴィリアたちのカモフラージュにもなりますし、ナイトマンは単独ではなく、組織で動いていると思わせても良いでしょう」
「確かにな。元々ナイトマンに関しては、亜人を助けることが主な役割だったが、北部では助ける必要性はなさそうだしな」
確かにそうよね。
元々ナイトマンはクリアストリーム教会が亜人に非道を行っていた場合、救出するための囮の存在。
でも、北部ではそんなことをする余裕はありはしないし、仲良くしているのを見ている。
そうなると、ナイトマンの役割は無くなったともいえる。
まあ、実際魔物の襲撃を退けるために使ったのだし、これからそういう風な運用を主にするってことか。
「もちろん、亜人や人が理不尽な目にあっているのであれば、救出することを止めることはございません。今までは、ナイトマンをやっているのはヴィリア様だったこともあったから、活動を制限していただけですし」
確かに、一人じゃアレもこれもできないわよね。
「そして、一番の理由は、一人で相応に動け、判断ができ、ウィードの上層部からも認められる実力があるというのが必要でしたが、これらをすべて奥様たちは条件を満たしています」
「「「ああ」」」
その説明には一番納得ね。
「もともと、ナイトマンを含め、ナールジア様たちが開発したパワードスーツはウィードでも、下手をすれば陸上戦艦よりも機密の塊です。奥様たちだけでなく、一般の兵ですら、いえ一般人ですら魔物を蹴散らすことができる性能を秘めています」
そうなのよね。
あのナイトマンスーツはもともと非力な兵士を補佐するためのパワードスーツが目的なのよね。
……本来は。
ナールジアさんとフィーリアたちは絶対パワードスーツを開発するってことを忘れて、ヒーロースーツを作っていると思うけどね。
実際、出来上がった物もとんでもない性能だったし。
まあ、どちらにしろ、未だにウィードはおろか大陸間交流同盟にも発表していない、兵士の底上げができる夢の道具。
下手な人物に紹介すらできないのよね。
「そういう所も含めて、奥様たちがナイトマンとして、ほかの国の情報収集する諜報員と組んで魔物を減らす手伝いをしてはと思う次第です。もちろん、ユキ様の許可がいりますし、活動自体は相応に大きなものになりますので、女王陛下の裁可も必要となりますが」
「そうね。話を聞く限り、私たちがちょっと手伝って、はい、おしまいってなるものじゃないわよね」
「ですね。とはいえ、魅力的な話ですし、セラリアさんに話を聞きに行きましょう」
ということで、私たちはセラリアに話を通しに行くのだった。
ヒーローは何人いてもよい。
しかも今回は、ある程度好き勝手出来るという条件。
さて、バリエーションは色違いなのか、番号呼びなのか、それとも別の鎧とかなのか。
あるいは、別のパワードスーツが出てくるのか。




