第1970堀:彼女たちが出来る事
彼女たちが出来る事
Side:カグラ
「それでラビリスとシェーラがいるわけね」
「なるほどね~。って、ミコスちゃんも基本ウィード勤務だけどね?」
「ミコスはカタログ関連の付き合いで、新大陸にしょっちゅう行っているでしょ」
私とミコスはユキに呼ばれて、ラビリスとシェーラのちょっとお手伝いについて相談を受けていた。
というか、手伝えるものがあるかって話ね。
「で、どうだ?」
ユキの質問に私は素直に答えることにする。
「二人の能力なら何でもお願いできるでしょうけど、ちょっとっていうと無理ね」
「そうだね~。出ずっぱりになるから、ちょっとだけっていうのは難しいかも」
その意見はミコスと同じようだ。
確かに、二人の実務能力は私やミコスも認めるところ。
いや、正直に言えば、二人の方が上かもしれない。
私たちの専門である、ハイデン外交とカタログデザインに関しては私たちの方が上ってだけね。
「そうよね」
「やはり事務仕事では難しいですね」
二人とも私たちの回答を想像していたようで、特に動揺などは無い。
「まあね。どうしても継続してやってもらわないといけないし」
「毎回担当が変わる方が混乱するよね~」
「だな」
ユキも特に口を挟むことなく納得する。
下手な助力は混乱を招くと理解しているから。
いや、この場合助力じゃなくて邪魔になるからだけど。
「そういえば、私たちよりも先に新大陸の手伝いに入った二人はどうしているのかしら?」
「あ、そういえば、サマンサさんとクリーナさんが新大陸の情報を集めるためにって言っていましたね」
「ああ、あの二人は……」
そういえば、サマンサとクリーナはラビリスとシェーラとは理由が違うけど、新大陸入りしているのよね。
でも、私はあまり見ていないんだけど……。
「私たちはお二人とは別の理由ですので、あまり参考にはなりませんわよ?」
「そう。私たちはイフ大陸の動かない馬鹿たちの為に荒野近辺の情報を中心に集めている。ヴィリアたちの手伝いをしたいのはやまやまだけど、外交の仕事はおろそかにできない。まあ、北部の手伝いも情報収集のうちの一つではあるけれど……」
そんなことを言いながら、サマンサたちも部屋に入ってくる。
「二人も呼んでいたんだよ。色々部署はあるしな。それにある程度自由に動いている二人なら、ラビリスとシェーラの希望できそうな場所を知っているかと思ってな」
「なるほど。確かにそうね。で、二人はどう? 私たちが手伝えるようなところあるかしら?」
「希望はあまりその場所に縛られることなく、何かあればウィードに戻れる場所が良いのですが」
「言っていることが物凄いですわね。普通ならぶっ叩かれる発言ですが……」
「二人の立場ならしかたがない。なにせウィードの心臓部だし、というか、私たちがこっちに出向できているのも二人のおかげ」
「ですわね。そういえば、イフ大陸の方からは何か面倒なお話などはきていますか?」
そう、普通なら何を無茶苦茶言っているんだといって、仕事に戻れっていうんだけど、私も含めてシェーラがウィードに残っているからこそ、外交官の仕事は最低限で済んでいるし、ラビリスがダンジョンのスキルで物資の取りよせをしているから、各国の要望に応えられているのよね。
だから、それを我侭だからダメっていうことは無い。
あと、私もハイデンからも何か妙な話が来ていないか、聞いておきたい。
最近は姫様まで夜のことで心配してくる始末だし。
「いえ、物資に関してはいつもの通りね。政治的な動きに関しては、シェーラどう?」
「イフ大陸は特に動きはありませんね。お二人が新大陸の情報を集めている間も、誰を向かわせて、人員や物資をどう捻出するのかを会議していると。まあ、町をつくるような計画ですからね。簡単にまとまる話でもありません。あ、それでハイデン地方というか、ハイデンの方からですが、以前打診されていたカグラさんたちの補佐が決まったそうです」
「「ああ」」
そのシェーラの言葉で思い出した。
流石に姫様だけが、ウィードとの関係を取り持つのはよろしくないという意見に押されて、名目上は私の部下、補佐ということで、別派閥の連中が入ってくるんだった。
「俺もその話は聞いた。と言っても外交の方はソロがやっているだろう? そっちはどうするんだ?」
「……一応、別って扱いね。あくまでも私の補佐であって、大使館はソロや今までの人員がメインでこなすわ」
「でもさ~、基本的なことは大使館でやらないといけないんだし、絶対ぶつかると思うな~」
「流石にそこまで露骨なトラブルを起こすような人員は送ってこないとは思うけど……」
私はそう言いながら改めてユキに視線を送る。
それに気が付いたユキが……。
「どうした? その人員に心配があるのか?」
「前も言ったけど今度送られてくるのは、私の補佐って名目で私の立場を取って変わろうってする連中の可能性が高いの。つまり、ユキに言い寄るって感じになるのよ」
私がそういうと、ユキが露骨に面倒そうな顔になる。
「あ~。まあ、そうか。カグラやミコスに対抗するには、俺に取り入るのが間違いないか。とはいえ、カグラとミコスと敵対はできないよな? 何せ結婚しているんだし」
「そこはそうなんだけど、向こうとしてはそこら辺をどう考えているのかは微妙な所なのよ」
「ユキ先生は~、複数女性を抱えているし、おまけで行けないか~って考えてても不思議じゃないからね~」
「おまけって、全員相応のスキルとかも立場があるんだがな……」
ユキはげんなりした顔でそう言う。
まあ、それはわかっている。
好き好んで複数の女性を抱えているわけじゃない。
とはいえ、私たちとはちゃんと仲良くしているけど。
超大好きだしお互い。
「まあ、そこらへんは今に始まったことではありませんわ。私たちがしっかりガードすればよいのです。ユキ様を使って権勢を高めようなどとあさましいお馬鹿は排除致します」
「ん。サマンサの言う通り。ユキに対して愛がなければぶっ飛ばす」
その二人の答えに、その場にいる全員が頷く。
ちなみに、ユキ直属のプロフやオレリアたちも含まれている。
「情報の収集に関しては私に任せてください。オレリアたちは一般の立場ですから、その対応も見れるはずです」
「変な考えを持っているのであれば、私たちのような側付きは邪険に扱うかと思います。ユキ様お任せください」
「お馬鹿は~、排除しますよ~」
「そうです! ユキ様を舐めたような輩は貴族の娘だろうともたたき出します!」
今日はヤユイも陸上戦艦の開発お手伝いから戻っているみたいね、全員やる気満々。
とはいえ……。
「みんながそういう風に警戒しているのはわかったが。そこまで俺と関係があるのか? だって外交メインだろう? しかもカグラたちのお手伝いってことだし」
「まあ、ユキの言う通りね。普通の仕事をしている分には、接触する可能性はほぼないわ。こうして、ユキの職場に来る理由もないんだし」
「だね~。とはいえ、そこは送り込まれたんだから、相応に動くと思うよ~」
「そうね。ミコスの言う通りね。下手に邪険にも扱えないでしょうし」
「難しいところですね。とはいえ、ユキさんが女性相手に篭絡は無いとは思いますが。利点を見つけるのでそこはそれでいいとは思います」
シェーラの言葉にまたも全員頷く。
「まあ、カグラの下につく部下のことは警戒するとして、話がそれているけど、私たちはどこかにお手伝いに行けないかってことよ」
「あ、そっちだったな」
蝗害とか私の部下とかに興味を引かれてしまったけど、メインの話はそっちだったわね。
だけど……。
「二人がちょっとだけ手伝えるっていうのはあるか? サマンサやクリーナの方で思いつくか?」
「いいえ。私たちがやっている仕事は大陸間交流同盟の為に新大陸の情報を集めるというのですが、それも継続で必要なことですわね」
「データの蓄積と整理とかがいる。それにイフ大陸各国に合わせて整理もいるから、経験が絶対にいる。だから二人にはできないとは言わないけど、しばらくこっちの仕事の拘束されるからちょっとした時間で出来る事じゃない」
「そうよね~」
「むう。難しいですね」
そういって悩んでしまう2人。
これでやめるとはいわないわよね。
そんな気持ちなら最初から手伝いたいとは言わないでしょうし。
とはいえ、簡単に離脱して問題ない仕事となると……。
「ユキ様。ちょっとした時間で活動でき、特に前任者との引継ぎも必要ないというのであれば、心当たりがあります」
不意にプロフがそう発言し、全員の注目が集まる。
「あら、それが本当でしたら、私にも教えてほしいですわ。新大陸の情報を集めるだけで、ほかの皆さんの手助けをしているわけではありませんから」
「ん。私もみんなを手伝えるのなら手伝いたい」
どうやら、サマンサやクリーナも手伝いたい気持ちはあったようね。
まあ、二人も外交で色々溜まっているものもあるだろうし。
「ユキ様、ご説明しても?」
「ああ、頼む」
なんとなく、予想は付くけどプロフの言葉を待つ。
「主に二種類ございます。一つは、新大陸各拠点での医療のお手伝いです。奥様たちはリリーシュ様たちの加護、そして医療知識により、強力な回復魔術が行使できます。その場での治療行為だけですので、自由に出入り可能です。事前にその旨をエノラ様やリュシに伝えておけば良いでしょう」
「ああ、その手があったか。確かにオーエではまだまだ魔物の出現が多いから、けが人が絶えないのよね。私が交渉中に出ることもあるし、北の町でエノラ、南の砦でリュシがメインで頑張っているのよね。もちろん後方というか、ウィードでルルアやリリーシュ様がいるから問題はないんだけど、足りてないと言えば足りていないのよね」
医療行為ができる人員が多いことは越したことがない。
そして、私たちが回復魔術の腕を保証出来るとなると、ユキの妻、私たちの友人たちぐらいしかない。
それにある程度の個人判断ができるのと連絡手段を持っているのを考えればこれ以上にない人員なのよね。
「なるほど。医療ね」
「確かにそれなら手伝えますね」
「私もそれならいけますわね」
「ぱーっと、エリアヒールをして去るで行ける。とはいえ、手伝っているかというと微妙」
クリーナの気持ちはわからないでもないけど。
とはいえ、現場に長く入れるわけでもないんだから、手伝いの実感を求めると長期いることになるし、矛盾しているのよね。
「それで、あと一つは?」
「はい。それはナイトマンを増やす計画です」
「「「は?」」」
いや、うん、そうよね。
あれなら適当に暴れて魔物を間引きしつつ、北部の状況をある程度把握もできるし、いつ離脱しても問題ない立場だし。
とはいえ、色々大変だけど……。
そうだ、ヒーローは何人いてもいい。
何せ、力の1号、技の3号、そしてV3もいる。
そして後にもたくさん続いている。
だからいいのだ!




