第1958堀:陸上戦艦のスペック
陸上戦艦のスペック
Side:エージル
「やあやあ、皆。よく来てくれたね」
僕はそう言って、集まってくれたみんなを出迎える。
とはいえ、少し気になるんだけど……。
「どうしたんだい? なんか顔色が悪いように見えるけど?」
そう、なぜか派遣というと違うけど、砲撃手というか、砲雷長とでもいうべきか、まあ、陸上戦艦の花形ともいえるメインの攻撃を担う隊長ともいうべき立場になるのに顔色が悪いのだ。
具合が悪いのに無理に練習をさせるのは流石に僕もためらう。
ケガの元だからね。
だから、体調はちゃんと確認をしておく。
「……問題ないわ。陸上戦艦の攻撃を任されるってことに驚いているって感じよ」
「あはは~……。ほら、きっと威力高いんでしょ~?」
「ですわね。私たちが甲板に上がって周囲に攻撃魔術を放つというわけではないのでしょう?」
「正直に言えば、陸上戦艦の兵器が心配。私たちを巻き込んで爆発とか」
最後に素直になったね。
うん、僕もそんな周りを巻き込んで爆発する兵器とか嫌だし。
彼女たちの懸念も理解した。
とはいえ、そんなことをするわけがない。
その懸念の原因にも思い当たりはあるんだが……。
「まず、信用してほしんだけど。流石にこの手合いの武器にそんな装置は付けていない。なにせ、処理する場合は陸上戦艦ごとだからね。兵器だけ吹き飛ぶ様なことはしないさ」
「「「……」」」
なんか、結局爆発するんじゃね~かという感じの視線を感じる。
「君たちのそういうのは、武具が爆発するからというのがあるんだろうが、そこは何度もいうが機密保持の観点があるからだ。陸上戦艦に関しては兵装だけでなく陸上戦艦そのものが機密だからね? あと、舐めているわけじゃないと思うけど、馬鹿が使えば自爆のようになるのは当たり前だよ? 刃物で自分の手を切るなんてのと同じだ。使う自信がないならやめておいた方がいい。これは本気だ」
マジでそこは言っておこう。
今まではギャグで良いだろうが、失敗までこちらのせいにされるわけにはいかない。
何せ、下手をすれば本人だけでなく陸上戦艦の乗員、果ては守るべき者たちまで傷つけてしまう。
まあ、言わなくてもわかると思うけどね。
ユキが用意する兵器を真似て作ったこの陸上戦艦が生半可なモノではないというのは理解しているだろう。
流石に僕の言葉を理解したのか、胡散臭い目から真剣な顔つきになる。
「はぁ、分かっているわよ。というか、ノリで記載のない機能を散々積んでいるからこうなったのを自覚しているわけ?」
「あっはっはっは! 自覚はあるが、そこは譲れないからね。とはいえ、今の話は本当だ。そして君たちもわかっていると思ったけど?」
「まあ、その通りですわ。というか、もっといつもの装備に関しても真面目にしてほしいですわね」
「だね~。とはいえ、ミコスちゃんも本作ったりしているから、そういうこだわりがあるんだろうっていうのはわかるけどね~」
うんうん、ミコスも僕たちの気持ちはわかるよね。
そして……。
「……気持ちはわかる。でも、爆発を警戒する。それだけのこと。問題がないのであれば言うことは無い」
クリーナは僕たちと同じ側だ。
今回はたまたま外交側に回されたけど、地球の技術をこちらで再現するようなことは大好きだ。
だから、この4人の中では一番反応がない。
こちらの気持ちもわかっているからね。
「よし、4人とも問題はないとして、説明を始めるよ」
ということで、陸上戦艦の火器関連のことを説明始める。
「まず、陸上戦艦に搭載する武装だけど、基本的に共通部分だけを説明する」
「「「共通?」」」
よく意味が分かっていないのか、カグラたちが首をかしげる。
まあ、あまり試作機なんかに乗ったのことがないだろうしね。
「そうだね。勘違いしているようだけど、戦艦なんてのは、すべてが試作機なんだよ。膨大な予算を組んで作る動く要塞ともいえる。だから、すべて同じにするのはもったいないわけだ」
ここまで僕がいうとカグラやサマンサは気が付いたようで。
「そういうこと……」
「なるほど。ただの量産ではなく多くの試験に使うわけですわね?」
「その通り。何せ拠点としては完璧だ。武器はもちろん、色々な道具の試験評価に使われるわけだ」
そして最後までわかっていなかったミコスも。
「ああ、だから武器が変わってくるんだね」
「そういうこと。こういうのは基本的な武装を積んで、とっておきは別々というか、色々試す」
「うん。クリーナの言う通りだ。今回の陸上戦艦5隻も変わらずと言いたいが、一隻は見本というか、ネームシップになるからね」
「「「ネームシップ?」」」
「そう。一番艦は初めて完成した艦だからね。その艦シリーズの見本、原型という形になるわけだ。だから、無茶な改造ではなく、同型艦シリーズの基本、これを原型にというわけだね」
そう、一番艦というのはこの陸上戦艦シリーズの見本、原型となる機体だ。
当時の設計思想が反映されているということだ。
兵器の歴史というやつだね。
「……そういうこと。一番艦は当時の設計思想から一切いじらない。偉大な初期」
「なんとなく、言いたいことはわかったわ。とはいえ、私たちはその初期には乗らないわけよね?」
「そうだね。とはいえ、初期艦、一番艦をベースに兵器を搭載しているということはかわらないから、ネームシップの説明をするよ」
そう、だからこそ改造前のネームシップの状態を知ることが大事なんだ。
「まず改めて、ウィード初、というか、世界初めての陸上タイプの戦艦、グラウンドバトルシップ、つまりは陸上戦艦型。第一号機。名前をグラウンドウォーク。陸を歩くものという名前になった」
「え~、普通」
ミコスが率直な感想を漏らす。
まあ、普通はそう思うのはわかるけど。
「気持ちはわかるけど、文字通り世界初めての乗り物だ。一応試験を重ねているけど、あくまでも初めての実験機という意味合いが物凄く強い。陸上戦艦のノウハウもない。だからこその名前だね。いずれ、兵器の本なんて出れば、世界で初めて陸を歩いた船として有名になるだろう」
「うん、わくわくする」
クリーナは僕の言っていることがわかるのか、目をキラキラさせている。
僕たちもそうだったよね~。
何せ陸上戦艦なんてのは地球でも実在しないカテゴリーだ。
いや、アニメにはあるんだけどさ。
「さて、陸上戦艦改め、グラウンドウォークの説明を始めよう」
そして僕は4人に対して、グラウンドウォークの説明を始める。
・全長221メートル 全幅54メートル 全高46メートル
・重量5000トン 最大積載荷重2000トン
・最高速度150キロ 最低速度1キロ
・運用人数最大125名 最低運用1名~5名
・最大収容人数5000人
ざっと、まずはスペックを説明する。
「うん、改めておかしいわね。この大きさの艦が150キロで動くとか」
「だよね~。でもさ、最低速度ってどういうこと? 動き出し始めは全部遅いじゃん?」
ミコスがそう聞いてくる。
「いい質問だ。これは、この速度を維持できるということだ。つまりずっと1キロで走行できるということ」
「えーっと、それって意味あるの?」
「あるよ。それだけ速度の調整が出来るということだからね。操舵も簡単というと違うけど、より繊細な運転が出来るといっていい。100キロでカーブは曲がれというのと、10キロでカーブを曲がるのはどちらが難易度が高いっていうとわかりやすいかな?」
「ああ、わかりやすいですわね。速度を落として周りを確認しながら運転できるのは良いことですわ」
僕の説明にサマンサが納得してくれた。
まあ、そういうことだ。
低速で安定しているということは、それだけ技術が凄いということでもある。
最高速度なんてというと、ナールジアさん辺りは怒るだろうが、最低速度を維持できるというのも大事でありかなりの技術を必要とする。
「次に運用人数の差ってなに? 125名いないと動かせないってわけじゃないってこと?」
「そうだね。カグラの言う通りだよ。効率よく動かすにはそれだけ人員がいる方が良い。各部屋の掃除などのメンテもあるし、料理をつくる、武器などの整理管理とかね。とはいえ、そこらへんは僕たちに補える技能がある」
アイテムボックスで物の管理は簡単だ。
掃除なんかは放っておいても大丈夫な所は無視ってことになるけどね。
とはいえ、最低限動かすだけなら1名で何とかなるわけだ。
「最悪、動かすだけとなれば、運転手一人でどうにでもなるようにしているからね。レーダーとかも運転手で把握できるように簡易システムも組んでいる。だが、本格的に陸上戦艦としての性能を最大限発揮するのであれば、相応に人数がいるってわけさ。まあ5名以上は誤差というか、サポートが充実するぐらいのモノだけれど」
「どういうことでしょうか?」
「簡単に言うと、5名までは指揮官、操舵手、砲撃手、オペレーター、メカニックという陸上戦艦の心臓分になる。一人で動かせないことはないけど、効率は落ちるからね。この5名がいればほぼ最大限の性能を発揮する。とはいえ、のこり120名がいれば、さらに細かい情報が集められ、的確な指揮ができ、細かく動き、攻撃も細部にいきわたり、戦艦内部の快適さも上がるわけだ。何より敵地への占領行為もできるだろう」
最後のは本当に大きな違いだ。
陸戦要員、つまり拠点制圧などは数がいないと意味がない。
そしてその逆に陸上戦艦の防衛も必要だしね。
「なるほどね~。確かに、敵の拠点とかは数がいるよね~」
「……普通は5名とかで最低限の運用ができるとかは無い。この陸上戦艦がおかしいだけ」
まあ、クリーナの言う通りだ。
本当に最低限といったが、毎回125名最大人数は乗艦してほしいね。
あと、十分な休みとなると、倍は欲しいんだけど、今は難しいからね~。
と、そこはいいとして。
「最大収容人数っていうのは、避難民とかそういうのかしら?」
「そこに関しては、そうだね。まあ、もちろん軍人を収容できるって意味でもある。なにも別にすべて陸上戦艦の運用要員である必要はないからね。さっき言った陸戦要員も別に船の方で用意する必要はないんだ」
「……そう。元来の空母や戦艦などは、陸軍を載せる上陸艇も載せている。まあ、輸送船からもでるけど、陸上戦艦はそういうのも兼ねる。もともと空母を見本にしているから、航空機などの兵器もあるから、そういうこと」
うん、空母を見本としたので、そういう専門家も乗せる必要があるというわけさ。
とはいえ、ここまでの話は基礎の基礎。
「さあ、陸上戦艦のスペックは理解したようだね。あとは、君たちが指揮する兵器についての説明を始めるよ」
そう笑顔で告げると、カグラたちは少しげんなりした顔になる。
あれ? 少し休憩を入れるべきかな?
陸上戦艦のスペックは空母とさほど変わりません。
違うのは積載量が半分ぐらいです。
理由は空中に浮いているという特性上安全マージンを取っているって感じですね。




