第1957堀:彼女たちの出番だ
彼女たちの出番だ
Side:カグラ
「……北部も大変ね」
「ほんとだよね~」
私たちはユキから送られてきた北部の最前線の町のひとつである、アンドの町の情報を見てそうつぶやく。
本当にそれしか言えない。
「そういう二人も大変そうですが」
私たちの様子をみて、横にいたスタシアがそういう。
「そうね。大変じゃないってわけじゃないけど。南部は落ち着いているからね」
「だよね~。今は交易が動き始めているし、ミコスちゃんたちは窓口受付始めているからね~」
そう、ミコスの言う通り、私たちは現在南部での外交官兼、歴史調査を行っているけど、外交の方は当初やっていたジェヤエス王国での家電、いえ家魔製品が大ヒットして、ほかの南部の国に波及し、ウィードの名前は相応に広がっている。
オーエを窓口とすることで、オーエの求心力も上がっているし、中央部の妙な動きに関しての同盟も動き出している。
まだ全部ではないということで疑問があるかもしれないが、まだ新大陸に来てからの活動期間は約2ヶ月もないのだ。
それでここまで広がれば十分といえるわね。
あとは歴史調査だけど、オーエに協力してもらってはいるけれど、まだオーエがなぜ中央から逃れてきたのかはわかってはいない。
別に隠している様子はないのよね……。
ある意味、そこがヒントなのかもしれないけれど……。
「そういう、スタシアはどうなの? 北の町の防衛をしているみたいだけど? ほら、捕虜の方も扱っているでしょ?」
私よりもスタシアの方が気になる。
私たちの方は今言ったように安定しているけれど、スタシアに関しては北の町の防衛はもちろん、町との折衝もあるし、新兵訓練、果てはギアダナ連合軍の捕虜もいる。
そういうことを考えると決して楽ではないはずだ。
「ご存じかと思いますが、基本的には私たちウィード戦力は、オーエが対抗できない敵への対処です。捕虜の管理もしてはいますが、それもオーエの軍と協力してですね。医療に関しては当初は反発する連中がいましたが、エノラ、ハイレン様ががっつりやっていましたので、大人しくなりましたし、ハイレン様がウィードに戻ってからはリュシが来てくれて、特に問題はありません。そういえば、オーエ全体の医療に関してはどうなっていますか?」
「そっちの方は、すでにオーエ王都のチナウ殿とご友人の治療院のおかげで、医療品の配布や治療は広まっているわ。北の町や南の町についてはエノラから聞いているわよね?」
「それはもちろん。今も言いましたが、エノラはもちろん、ハイレン様やリリーシュ様もでばってやっていたこともありましたから、不衛生関連は確実に減っていますし、病人も減っていますよ。オーエ王都や周辺も上手く行っているようで何よりです。意外と医療関連は進み辛いですからね」
それはスタシアの言う通り。
というか、新しい考えというのはなかなか受け入れられないのよね。
今までの考えを否定するものだから。
とはいえ……。
「医療に関しては、オーエのナドア王はもちろん、護衛というか親衛隊長のマーティン殿の怪我を完治させたのが大きかったわね。それで信頼を得られたわ」
「だね~。ルルアには感謝だよ」
「確かに、そこでの治療の成果は私たちの活動の後押しになりましたね。まあ、もちろん、その後のエノラたちの活動も間違いなくあるでしょうが」
うん、それも絶対に否定できない。
エノラはもちろん、ハイレン様やリリーシュ様もけが人には問答無用で治療に取り掛かるものね。
「となるとやはりオーエの方はある程度落ち着いているという方向で間違いはないのですね」
「そうね。スタシアの言う通り、北部や中央部よりは落ち着いているわね」
「だね~。とはいえ、空けられる状態ではないけどさ~。北部や中央の状況次第では向こうに出張る必要もあるし、実際エノラは中央部のギアダナに出たりしているけどね~。まあ、あれはエノラにしかやれないけど」
「亜人救出と有能であり友人であるアピールも含むからね。代わりにリュシが出て行ってある程度切り盛りしているって話よね」
「そうですね。ハイレン様は亜人問題で飛び出してしまう可能性もありますのでウィードに戻ってもらっていますし、今医療関係者で私たちのメンバーとなるとリュシが一番に上がりますね。まあ、カグラやミコスも出ているようですが」
「そりゃ~、ミコスちゃんたちも一応エノラはもちろん、ルルアやリリーシュ様、ヒフィー様にもしごかれましたからね~」
医療となると、ウィードにはエキスパートが何人もいるからね。
……本当にお世話になったわ。地獄を見せてくれたし。
「……ふむ。つまり、二人とも多少なりとも余裕があるということでしょうか?」
「余裕というと違うかもしれないけれど、北部に比べればそこまでひっ迫はしていないわね」
「だね~。まあ、元々ミコスちゃんに限っては、カグラの補佐って感じだし~。カタログ更新とかでウィード勤務がメインだけど」
「私も一応窓口ってことでオーエには毎日顔を出してはいるけれど、ラッツやエリスとの物資や資金、外交関連でウィードへの出入りが多いわね」
オーエからの要求は既に落ち着いているというか、契約は結んでいるから定期便を送るだけでいいのよね。
納品の確認などは部下に任せているので、そこまで手間でもない。
「それで、余裕があるとどうなるの? 何か仕事?」
「うへ~、これ以上の仕事は勘弁してほしいんだけど~。どんな内容?」
ミコスの意見に同意したいけれど、流石にスタシアが言っている仕事ってことは、色々理由があるんだろうから、聞くしかないわよね。
「内容としては、北部の話ですよ」
「北部?」
「いや~、まだまだ何があるかわからない北部に行くって長期出張でしょ~。流石に無理じゃない? あ、拠点を構えてそこから出勤って感じ?」
私もミコスも自分たちの仕事を抱えている。
というかスタシアたちもそうだが、新大陸に出張っているメンバーの分の仕事も肩代わりしている。
全部ではないが、それでも手伝わないと問題がある部分があるから。
「それも良いですね。とはいえ、私たちだけの話ではないのですよ」
そうスタシアが言うと、会議室のドアが開かれて、人が入ってくる。
「ごきげんよう」
「……きた」
そこにはサマンサとクリーナが立っている。
「ツッコミとしては、そこまで居るならジェシカは?」
「ジェシカさんはウィードの軍を指揮しなければいけませんからね」
「軍部はどこも動けない。だから私たち。というか、いい加減新大陸の状況を把握しないと」
「そういえば、2人も新大陸のことに力を入れるって言ってたわね」
「向こう側が、新大陸に来ないからだっけ?」
ミコスの言う通り、新大陸の情報が集まらないので、どこの大陸の大国も新大陸の荒野に来たがらないって話だったわね。
もちろん、ハイデンもそうだけど。
とはいえ、別にそれだけが理由じゃないんだけど。
誰を送るかとか、そういう編成でも時間がかかるのよね。
「そうですわ。まあ、誰を送るとか管理とか防衛をどうするとか、遅くなる理由もわかるのですが」
「ウィードにおんぶにだっこはなるべくやめたいと。馬鹿みたい。元々おんぶにだっこのくせに」
「クリーナさんはこんな様子ですからね。向こうで発言すれば反感を買いますわ。おじい様やお姫様もそれを案じてこっちに回しましたのよ」
「「「ああ~」」」
凄く納得。
クリーナはこういう政治的なことは分からないわけではないけれど、性質はユキが好きな魔術師なのよね。
目の前でユキの好意を踏みにじるような話し合いがされているとなると暴言が素直に飛びでる。
まあ、それぐらいは良いにしても、最悪アグウストを吹き飛ばしかねないものね。
そういうのは流石に認められないか。
「さて、外交メンバーもそろいましたね」
「え? いや、外交メンバーで言うならシェーラとかルルアもでしょ? ロガリ外交メンバーがいないわよ?」
スタシアの言葉に私は思わずそういう。
だって、その通りだし。
「あはは、分かりますが、流石にウィードの外交主要メンバーを全員外すわけにはいきませんので。それに、ロガリに関しては陸続きなのでそこまで困らないのですよ。部下の外交官も下手をしなくても私たちよりも長い付き合いですからね」
「あ~、確かにそうか。それで、シェーラがまとめている間に私たちが新大陸の方を手伝えってことか~」
「……そういうこと。あの馬鹿共に付き合うよりは遥かにマシ。シェーラには悪いけど」
私たちは各大陸の新大陸進駐のために新大陸での仕事を優先するってことにするわけか。
確かにこっちも姫様が上の会議は揉めているって言っているもの。
車と医療品の生産施設を土地ごと丸ごと渡すって言っているからね。
幾ら国の指示で運営するとはいえ、それを任命されるということは、今後の国の命脈を任されるというかなりの名誉なのは、ウィードに来て車、そして医療を把握している連中は即座に理解するでしょう。
その初代所長とか、まあ、取り合いよね。
流石にこの役目も姫様の派閥が取るわけにはいかないのよね~……。
「それで、スタシアは私たちを集めて、新大陸での活動を説明するというわけですわね? 今まで具体的な方針は出ていなかったはずですが?」
そうなのよね。
私たちが新大陸で活動しようって話はあったけど、新大陸での情報がかなり面倒になっているから、私たちをどこに出すかってことで待ったがかかっていたのよね。
別にアスリンたちの南端捜索でもよかったんだけど、それだと別に私たちが行ってもほぼ役に立たないのよね。
その手の知識がほぼないし。
敵を倒すぐらいかしら?
「簡単ですよ。危険もほぼない。とはいえ、いないと困る立場があるのです」
「もったいぶるね~。いったいなに?」
そうミコスが聞くと、スタシアはモニターの画面を点け、こう告げる。
「陸上戦艦の砲手です」
ほう……しゅ?
言っている言葉が理解できなかった。
他のメンバーも同じだったようで、スタシアは改めて言い直す。
「砲手だとイメージが湧きませんか。つまりですね。陸上戦艦の攻撃担当というわけです。皆さん、魔術師としては優秀ですよね? 運転手はきまりました……とは言い難いですが、データは取っていますので、今度は攻撃手が欲しいというわけです」
「「「……」」」
なんというか、絶句。
いえ、当然の話ではあるのだけれど、それでも……。
「ねぇ、それってミコスちゃんたちを砲弾にするとかそういうのじゃないよね?」
ミコスの質問にスタシアは笑顔で返すのみであった。
つまり、開発はそういうことなのだろう。
そうです。
操作はできました。
後は攻撃手段となりますが、主に遠距離攻撃になるのは当然。
そしてその役をこなせるのは、魔術に慣れた者ですよね~。
負担はよくわかっていません。




