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7、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜第7章 優しさの続きを  作者: Nao9999


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第178話「黒糖飴を知っていた人」

一枚の古い写真。


そこに残されていた、見覚えのある老人。


そして――


「黒糖飴を持った子へ」


あの日からずっと優斗の中に残っていた出来事が、少しずつ別の記憶と繋がり始めます。


けれど、まだ答えは見えません。


優斗は写真の中に残された「あの日」を、自分の目で確かめようとします。

「……これ、持っていていいんですか?」


優斗は写真を見つめたまま聞いた。


店主は少し考えてから、首を横に振った。


「いや」


「……?」


「それは、お前が持っていたほうがいいと思う」


「でも……」


「俺には、もう必要ない」


店主は静かに笑った。


「たぶん、その写真を見つけるべきだったのは俺じゃない」


優斗は何も言えなかった。


手の中にある一枚の写真。


そこには、まだ若い老人が写っている。


そして、その裏には――


『黒糖飴を持った子へ』


その言葉。


どうして。


なぜ。


そんなことを知っているのか。


優斗の頭の中を、いくつもの疑問が駆け巡っていた。


「店主さん」


「ん?」


「この写真……いつ頃のものですか?」


店主は写真を見た。


「かなり前だな。俺がまだ子供だった頃だ」


「じゃあ……」


優斗は言葉を止めた。


老人が国道にいた日より、ずっと前。


つまり。


この写真に写っている老人は、優斗が出会うより前から、この場所に来ていた。


「老人は……ここに何をしに来ていたんですか?」


店主は少し黙った。


「それが、分からないんだ」


「分からない?」


「ああ。親父は、その人のことを詳しく話さなかった」


店主は古い棚に手を置いた。


「ただ、一度だけ聞いたことがある」


「何を?」


「親父が、その人に言ったんだ」


店主は記憶を辿るように話した。


「『あんたは、何を待ってるんだ』って」


優斗の胸が、わずかに揺れた。


何を待っている。


その言葉を聞いた瞬間。


第1話の光景が蘇った。


国道。


自分。


そして、老人。


『おーい』


『おーい』


『起きてるか?』


あの日。


優斗は眠っているふりをしていた。


老人が何度も声をかけてきた。


その理由を、優斗は今まで深く考えなかった。


ただ、声をかけられた。


そう思っていた。


けれど。


「……それで?」


優斗は聞いた。


店主は小さく息を吐いた。


「親父が聞いたら、その人はこう答えたらしい」


「……」


「『待ってるんじゃない』」


優斗は顔を上げた。


店主は続けた。


「『出会うのを待ってるだけだ』って」


「……出会う?」


「そう言ったらしい」


店の中が静かになった。


外から、車の音が聞こえる。


一台。


また一台。


国道を走っていく。


優斗は写真を見た。


そこに写る老人は、何も語らない。


ただ、静かにこちらを見ている。


「それって……」


優斗は呟いた。


「誰かと出会うのを待っていたってことですか?」


「俺には分からない」


店主は答えた。


「親父も、最後まで分からなかったんじゃないかな」


優斗は視線を落とした。


だったら。


あの日。


老人は――


自分を待っていたのだろうか。


いや。


そんなはずはない。


優斗は首を振った。


そんな偶然があるわけがない。


自分はただ、人生に疲れて国道で寝ていただけだ。


老人だって、たまたまそこにいただけ。


そう思いたかった。


「……でも」


優斗は写真の裏を見る。


『黒糖飴を持った子へ』


この言葉だけは、どうしても説明できなかった。


「店主さん」


「ん?」


「この文字……本当に昔からあったんですか?」


「分からない」


「……え?」


「親父が書いたのか、その人が書いたのか。それすら知らない」


店主は写真を指差した。


「だから、俺もずっと気になってた」


優斗は黙った。


そして、ふと思った。


「……他に写真はありませんか?」


店主が顔を上げた。


「写真?」


「この人が写っている写真です」


しばらく沈黙したあと。


店主は奥の棚を見た。


「……あるかもしれない」


そう言って、倉庫へ向かった。


優斗も後を追った。


古い箱。


使われなくなった靴の箱。


昔の帳簿。


色褪せた紙。


店主が一つずつ箱を開けていく。


「これじゃない」


「……違うな」


「これも違う」


しばらくして。


店主の手が止まった。


「……あった」


小さな声だった。


優斗が近づく。


店主が取り出したのは、一枚の古い紙だった。


写真ではない。


手紙のようだった。


封筒はない。


紙だけが、一枚。


店主はそれを開いた。


そこには、短い文章が書かれていた。


『もし、あの子がもう一度ここへ来たら』


優斗の呼吸が止まった。


店主も、続きが読めずに黙っている。


紙の下には、さらに一行。


『その時は、靴を渡してやってくれ』


「……靴?」


優斗は呟いた。


店主が顔を上げる。


二人の視線が重なった。


「あの日……」


優斗は思い出した。


自分がこの店で経験したこと。


あの時、渡されなかった靴。


そして。


後になって店主から渡された、


「あの日渡せなかった靴」。


優斗は、自分の足元を見た。


今履いている靴。


その記憶が、静かに蘇る。


「……全部、繋がってるのか?」


誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。


店主は答えない。


ただ、古い手紙を見つめている。


優斗は写真と手紙を交互に見た。


老人。


靴。


黒糖飴。


国道。


そして、自分。


偶然だと思っていたものが、


一つずつ、


過去からこちらへ歩いてくる。


そのとき。


店の外から、子供の声が聞こえた。


「おじちゃん!」


優斗が振り返る。


店の入り口に、小さな男の子が立っていた。


その手には――


一つの黒糖飴。


「これ、あげる」


優斗は目を見開いた。


「……どうして?」


男の子は笑った。


「前に、お兄ちゃんにもらったから」


優斗は言葉を失った。


その瞬間。


古い写真の老人。


母の黒糖飴。


あの日の国道。


そして、今ここにいる子供。


すべてが一本の線になるわけではない。


まだ、分からない。


それでも。


優斗は初めて思った。


もしかしたら。


老人が残したものは、


答えではなかったのかもしれない。


誰かから誰かへ渡っていく、


小さな優しさそのものだったのかもしれない。


優斗は男の子から黒糖飴を受け取った。


そして、笑った。


「ありがとう」


男の子も笑った。


その笑顔を見ながら。


優斗は、もう一度だけ写真を見た。


写真の中の老人は、


何も言わない。


ただ――


どこか優しそうに笑っていた。

「あの日」の謎が、少しずつ動き始めました。


老人は何を待っていたのか。


なぜ「黒糖飴を持った子へ」と残したのか。


そして、なぜ靴だったのか。


まだ、すべては明かしません。


これまで優斗が出会ってきた人たちとの出来事も、ただの寄り道にはしない。


一つ一つの出会いが、最後に意味を持つように。


ここから、物語をさらに繋げていきます。

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