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7、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜第7章 優しさの続きを  作者: Nao9999


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第177話「残されていたもの」

ここから物語は、少しずつ「あの日」の核心へ近づいていきます。


これまで優斗が受け取ってきた優しさ。


そして、その始まりだった老人。


偶然だと思っていた出会いの裏側には、まだ語られていない記憶がありました。


第1話から続いてきたものが、少しずつ繋がり始めます。

国道を離れてから、しばらく歩いた。


夕方の空は、少しだけ赤かった。


優斗はロードバイクを押しながら、いつもの道を歩いていた。


第1話のあの日から、何度この道を歩いただろう。


数えたことはない。


ただ――


この道を歩くたびに、昔の自分を思い出す。


人生なんて、もう終わった。


そう思っていた自分を。


「……不思議だな」


優斗は小さく呟いた。


あの日、自分は何も持っていなかった。


いや。


正確には、一つだけ持っていた。


母からもらった黒糖飴。


それだけだった。


その黒糖飴を守ろうとして、老人と出会った。


そして、その出会いから人生が動き始めた。


「……あの人、今どこにいるんだろう」


老人。


あの日の国道にいた、裸足の老人。


優斗は何度も考えた。


老人は、自分に何かを与えた。


黒糖飴だけじゃない。


人生が終わったと思っていた自分に、


「まだ終わっていない」


そう教えてくれた。


でも――


なぜだったのか。


どうして、あの老人は自分に声をかけたのか。


どうして、黒糖飴を返してくれたのか。


そして。


どうして、その後に自分の人生に現れた大富豪と繋がっていたのか。


「……」


優斗は足を止めた。


国道の向こう側に、あの靴屋が見えた。


第1話の頃とは、少し違う店になっている。


店先には、子供用の靴が並んでいた。


必要な人に渡すための靴。


優斗は少しだけ笑って、店の扉を開けた。


「いらっしゃ――」


店主が顔を上げる。


「ああ、優斗か」


「こんにちは」


「また来たのか」


「近くまで来たので」


店主は笑った。


以前なら、こんな会話をすることもなかった。


あの日。


優斗がこの店を訪れたとき。


自分は、ただの客だった。


いや。


店主にとっては、少し困った客だったかもしれない。


けれど。


今は違う。


人と人として、言葉を交わせる。


それだけで、少し嬉しかった。


「そういえばな」


店主が突然言った。


「何ですか?」


「この前、倉庫を整理してたら、変なものが出てきたんだ」


「変なもの?」


「ああ」


店主は奥へ入っていった。


しばらくして戻ってきた店主の手には、一枚の古い写真があった。


「これなんだけどな」


優斗は写真を受け取った。


古い。


少し色褪せている。


そこには、昔の店の前が写っていた。


店主らしき若い男性。


その隣に、数人の人。


そして――


優斗の目が止まった。


「……え?」


写真の端。


店の前に立っている、一人の老人。


裸足ではない。


まだ服も綺麗だ。


けれど。


その顔は、間違いなかった。


「この人……」


店主が驚いたように優斗を見る。


「知ってるのか?」


優斗は答えられなかった。


写真の中の老人は、今よりずっと若かった。


それでも。


あの目だけは、変わっていない。


あの日。


国道で優斗を見ていた、あの目。


「……この人」


優斗の声が震えた。


「俺が……国道で会った人です」


店主はしばらく黙っていた。


そして。


写真を見つめながら、ぽつりと言った。


「やっぱり、そうだったのか」


「……やっぱり?」


優斗が顔を上げる。


店主は答えなかった。


代わりに、写真の裏側を指差した。


そこには、古い文字で一言だけ書かれていた。


――


『この店で、もう一度会うことになる』


「……何これ」


優斗は写真を裏返したまま、動けなくなった。


「俺も知らなかったんだ」


店主が言った。


「誰が書いたのかも分からない。ただ、この写真をしまったのは……昔の店主だ」


「昔の……?」


「俺の親父だよ」


優斗は写真を見つめた。


胸の奥で、何かがゆっくり動き始めていた。


老人。


靴屋。


国道。


そして――


自分。


偶然だと思っていた。


全部、偶然だと思っていた。


けれど。


もし。


あの日よりずっと前から。


この老人と、この店と、誰かの人生が繋がっていたのだとしたら。


「……あの人は、何を知ってたんだ?」


誰も答えなかった。


店の外を、車が走り抜けていく。


轟音が遠ざかる。


優斗は写真を握りしめた。


その瞬間。


写真の裏に、もう一つ小さな文字があることに気づいた。


今まで見えていなかった。


紙の端に、薄く残った文字。


優斗は目を凝らした。


――


『黒糖飴を持った子へ』


「……」


息が止まった。


黒糖飴。


その言葉を見た瞬間。


優斗の中で、あの日の国道が蘇った。


裸足。


老人。


母。


黒糖飴。


そして――


「……俺?」


優斗は、震える声で呟いた。


店主も、その文字を見つめていた。


二人の間に、長い沈黙が落ちた。


まだ、何も分からない。


ただ一つだけ。


あの日の出来事は。


優斗が思っていたよりもずっと前から、


誰かの記憶の中に残されていた。


優斗は写真を見つめたまま、静かに息を吐いた。


そして――


初めて思った。


「あの日、俺が老人に出会ったんじゃない」


もしかしたら。


「あの日……老人のほうが、俺を待っていたのかもしれない」


国道を走る車の音が、


遠くで響いていた。

今回は、これまでとは少し違う角度から「あの日」を掘り下げました。


老人は何者だったのか。

なぜ優斗に声をかけたのか。

そして、「黒糖飴を持った子へ」という言葉は何を意味するのか。


ここから、過去に散りばめてきたものを大切に拾いながら、物語を前へ進めていきます。


まだ答えは出しません。


だからこそ、続きを読んでください。

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