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7、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜第7章 優しさの続きを  作者: Nao9999


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第207話:聞きたいことの先に

知りたいことがあるからといって、相手の答えまで決めてしまってはいけない。


聞くことと、受け取ること。

その二つの間には、思っているより大きな距離があるのかもしれません。

翌日。


悠斗は、靴屋へ向かっていた。


ポケットの中には、スマートフォン。

そこには、あの写真の表と裏が残っている。


何度見返しても、写真に写っているものは変わらない。


写っている老人。

裏側に残された文字。


「この店で、もう一度会うことになる」

「黒糖飴を持った子へ」


意味を考えようとすれば、いくつもの想像が浮かんでくる。


けれど、今はそのどれも答えではない。


答えを知っているのは、書いた人か。

あるいは、その言葉を残した人のそばにいた誰かなのか。


悠斗には、まだ分からなかった。


店の前に着くと、扉の向こうで店主が作業をしていた。


「こんにちは」


声をかけると、店主が顔を上げた。


「おう。来たか」


「少し、お話ししてもいいですか」


「もちろんだ」


店主は手を止め、作業台のそばに椅子を出した。


悠斗は腰を下ろした。


「この前、父と話したんです」


「お父さんと?」


「はい。あの人に会えたとき、聞いたことをそのまま伝えたいと思っているんです。でも、自分がどう感じたかと、相手が実際に話したことは、分けておいたほうがいいって」


店主は黙って聞いていた。


「だから、会えたらまず、あの日どうして僕に声をかけてくれたのか。それを聞こうと思っています」


「そうか」


短い返事だった。


店主は、作業台に置いてあった布を静かに畳んだ。


「俺も、聞きたいことはある」


その言葉に、悠斗は顔を上げた。


「先代のことですか?」


「ああ。親父が、あの人と何を話していたのか。どういう付き合いだったのか。今でも分からないことがある」


店主は少し間を置いた。


「ただな。あの人に会えたとしても、親父のことを全部聞き出せるとは思っていない」


「……はい」


「話したくないこともあるだろうし、覚えていないことだってある。俺が知りたいからといって、無理に答えてもらうものでもない」


悠斗は、その言葉を聞きながら、写真の裏側に書かれた文字を思い出していた。


知りたいことがある。

確かめたいことがある。


それでも、相手には相手の時間がある。


「それでも、聞いてみたいんですよね」


「ああ。聞いてみたい」


店主は、今度は迷わず答えた。


「知らないままにしておくことと、知ろうとしないことは違うからな」


悠斗は小さく頷いた。


自分も、あの日のことを知らないままにしたくなかった。


国道で声をかけられた理由。

あの老人が、自分に何を見ていたのか。


それを知れば、何かが変わるのかもしれない。


けれど、変わらなかったとしてもいい。


あのとき声をかけてもらったことは、もう自分の中に残っている。


「会えたら、聞いてきます」


悠斗がそう言うと、店主は静かに頷いた。


「頼む。ただし、焦らなくていい」


「はい」


店の外では、商店街を歩く人の声が聞こえていた。


誰かが店の前を通り過ぎる。

自転車のベルが鳴る。

遠くで、店の戸が開く音がした。


いつもと変わらない町の音だった。


悠斗は立ち上がり、店主に頭を下げた。


「また来ます」


「おう」


店を出たあと、悠斗はスマートフォンを取り出した。


写真を開く。


今度は、文字の意味を想像しなかった。


ただ、そこに残されている言葉を見つめた。


聞きたいことはある。

けれど、答えを決めてから会いに行くわけではない。


相手の言葉を受け取るために、まず自分の中の答えを空けておく。


悠斗はスマートフォンをしまい、歩き出した。


会うためにできることは、まだ多くない。


それでも、何を聞きたいのかは、少しだけはっきりしてきた。

悠斗が老人に聞きたいこと。そして、靴屋の店主が先代について知りたいこと。


二人には、それぞれ確かめたい過去があります。


けれど、過去を知ることは、誰かの記憶に無理やり答えを求めることではありません。


悠斗は、会えたときに何を聞くのかを少しずつ整理し始めました。


次の一歩は、まだ見えない相手に向けたものです。

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