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7、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜第7章 優しさの続きを  作者: Nao9999


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第206話:いつもと違う知らせ

待っているだけでは、何も変わらないと思う日があります。


けれど、こちらから動いたからといって、必ず望んだ答えが返ってくるわけでもありません。


それでも、人と人との間には、言葉を交わさなければ分からないことがあります。


変わらないと思っていた日常に、小さな変化が訪れます。

その日は、特別なことなど何も起きないはずだった。


 優斗は朝食を終え、拓海に声をかけてから家を出た。


 いつもの道。

 いつもの景色。

 通り過ぎていく車の音。


 日々の暮らしは、昨日から続いている。


 老人に会いたい気持ちは変わらない。


 けれど、いつ会えるのかも、伝言が届くのかも分からない以上、今できることを続けるしかなかった。


 優斗は自転車のペダルを踏んだ。


 そのとき、ふと靴屋のことを思い出した。


 店主は、先代が残した写真と向き合っている。


 自分と同じように、誰かのことを知りたいと思っている。


 ただし、店主が知りたいのは、自分の父が何を思っていたのかということだった。


 同じ老人に繋がる問いでも、二人が知りたいことは違う。


 優斗は、それを忘れないようにしたかった。


 自分の知りたいことだけを追いかけて、店主の思いまで置き去りにしたくはなかった。


     *


 靴屋では、店主が開店の準備をしていた。


 入口を整え、店内を見回す。


 父が使っていた道具は、今も奥にある。


 写真も、先代が残した言葉も、なくなったわけではない。


 だが、それらを眺めているだけでは、父の思いを知ることはできなかった。


 店主は、作業台の上を片づけた。


 今日も、客が来るだろう。


 靴の修理を頼む人もいれば、相談をしに来る人もいるかもしれない。


 父が続けてきた仕事を、自分も続けていく。


 その先に、いつか知りたかった答えが見つかることもあるのだろうか。


 店主は、入口の扉に手をかけた。


 そのときだった。


 店の外から、足音が近づいてきた。


 店主が顔を上げる。


 扉の向こうに立っていたのは、見覚えのある老人だった。


 しばらく、言葉が出なかった。


 老人もまた、店内を静かに見渡していた。


「……いらっしゃいませ」


 店主は、ようやく声を出した。


 老人は、小さく頷いた。


「久しぶりだな」


 その声を聞いた瞬間、店主の中で、長い時間が動き始めた気がした。


 父がこの店にいた頃。


 自分がまだ、父の仕事を当たり前のものだと思っていた頃。


 そして、写真の裏に残された言葉を、何度も読み返した時間。


 聞きたいことは、いくつもあった。


 けれど、すべてを一度に尋ねることはできなかった。


 店主は、まず老人を店内へ案内した。


「どうぞ、お掛けください」


「ありがとう」


 老人は椅子に腰を下ろした。


 店主は、目の前の人を見つめた。


 この人なら、父のことを知っている。


 写真に残された言葉の意味も、何か知っているかもしれない。


 それでも、答えを急ぐことはしなかった。


「今日は、どうされたんですか?」


 老人は少し考えてから、答えた。


「伝えておきたいことがあってな」


 店主は、静かに耳を傾けた。


     *


 老人の言葉を聞きながら、店主は優斗のことを思い出していた。


 あの青年は、老人に会いたがっていた。


 あの日、なぜ自分に声をかけてくれたのか。


 その理由を、本人から聞きたいと言っていた。


 今、目の前にいる老人は、何かを伝えに来たという。


 それが優斗に関わることなのか、先代に関わることなのか。


 店主には、まだ分からなかった。


 ただ、ここで話を聞くことができる。


 父が残したものを、写真だけで判断しなくていい。


 目の前にいる人の言葉を、直接聞くことができる。


 店主は、老人の次の言葉を待った。


 今度こそ、誰かの思いを、自分の想像だけで決めつけないために。

新しい章の始まりとして、物語を動かすきっかけを描きました。


優斗が知りたいことと、靴屋の店主が知りたいこと。


二人の問いは違いますが、どちらも、誰かの思いを想像だけで決めつけず、本人の言葉から知ろうとしています。


ここから先は、これまで積み重ねてきた出会いや記憶を大切にしながら、物語を一歩ずつ進めていきます。

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