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7、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜第7章 優しさの続きを  作者: Nao9999


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第202話 写真の向こうにいる人

写真は、過ぎ去った時間を残してくれます。


けれど、そこに写る人の思いまでは、教えてくれません。


分からないことを想像だけで埋めず、本人の言葉を待つ。優斗が選んだのは、そんな一歩でした。

写真を見つめていても、答えは見つからなかった。


 優斗のスマートフォンには、靴屋で撮らせてもらった二枚の写真が残っている。


 一枚目には、若い頃の老人。


 二枚目には、写真の裏に書かれた言葉。


『この店で、もう一度会うことになる』


『黒糖飴を持った子へ』


 何度読み返しても、そこに書かれている言葉は変わらない。


 けれど、優斗の中では、少しずつ変わってきたものがあった。


 以前なら、老人が自分に声をかけた理由を知りたいと思うだけだったかもしれない。


 今は違う。


 あの老人が何を考えていたのか。


 そして、先代が何を思い、あの写真を残したのか。


 自分が知りたいことの向こうには、まだ知らない誰かの気持ちがある。


「……会って、聞くしかないよな」


 優斗はスマートフォンを伏せた。


 写真から想像することはできる。


 それらしい理由を考えることもできる。


 でも、それを本当の答えだと決めてしまうのは違う気がした。


 翌日、優斗は靴屋を訪ねた。


「こんにちは」


「おや、優斗君。どうしたんだい?」


「ちょっと、報告しておきたくて」


 優斗は店主に、写真を撮らせてもらったことへの礼を改めて伝えた。


「ありがとうございました。あの写真、大事に残されていたんですね」


「父が、どういう気持ちで残していたのかは分からないけどね」


 店主は棚に目を向けた。


「私も、父のことを全部知っているわけじゃないんだ」


 その言葉を聞いて、優斗はうなずいた。


 親しい人であっても、知らないことはある。


 一緒に過ごした時間が長くても、胸の内まで全部分かるわけではない。


 それは、優斗自身も感じたことのあることだった。


「僕も、あの人のことを知っているつもりになりたくないんです」


「そうか」


「国道で声をかけてもらったことも、黒糖飴をもらったことも、僕にとっては大事な思い出です。でも、あの人が何を思っていたのかは、僕には分かりません」


 店主は何も言わず、優斗の話を聞いていた。


「だから、会えたら聞こうと思っています。どうして、あの日の僕に声をかけてくれたのか」


「……私も、父に聞けるものなら聞きたかったな」


 店主の声は、静かだった。


 優斗は返す言葉を探したが、簡単には見つからなかった。


 知らないまま残ってしまったこと。


 もう直接聞くことができないこと。


 そういうものが、人の人生にはある。


 だからこそ、今なら聞ける相手がいるのなら、きちんと向き合いたいと思った。


「もし、あの人に会えたら」


 優斗は言った。


「聞いたことを、店主さんにも伝えます」


「ありがとう。頼んだよ」


 店主は小さく笑った。


 その笑顔を見て、優斗は改めて思った。


 自分が答えを知りたいのは、自分だけのためではないのかもしれない。


 写真を残した人がいて、それを受け継いだ人がいる。


 そして今、その写真を見た自分がいる。


 それぞれが同じことを知っているわけではない。


 それでも、誰かが知ろうとすることで、途切れたと思っていたものが、もう一度つながることだってある。


「じゃあ、また来ます」


「ああ。気をつけて」


 店を出ると、優斗は自転車のそばで立ち止まった。


 老人の居場所は、まだ分からない。


 いつ会えるのかも分からない。


 それでも、聞きたいことは決まっている。


 あの日、どうして声をかけてくれたのか。


 その答えを、勝手に想像して終わらせたくはなかった。


 優斗は自転車にまたがった。


 写真の中の老人は、何も語らない。


 だからこそ、本人の声を聞きたい。


 あの日に始まった出会いが、自分の知らないどんな思いにつながっていたのか。


 その答えを探すために、優斗はペダルを踏み出した。

写真を残した先代にも、国道で優斗に声をかけた老人にも、それぞれの思いがあったはずです。


そのすべてを、今すぐ知ることはできません。


それでも、知ろうとする気持ちがあれば、過去の出会いは思い出だけでは終わらないのかもしれません。

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