第20話:ドリアと、限界の旦那さん
12月も押し迫ったある日の夕方。外は雪がちらつく寒さだというのに、我が家はまるでお風呂上がりのようにぽかぽかと暖かかった。
「お待たせ、結。今日はちょっと特別なものを作ってみたよ」
旦那さんが満面の笑みで運んできた器を見て、結は思わず目を丸くした。
耐熱のお皿の上で、ホワイトソースとチーズがぐつぐつと音を立てて焦げ目を躍らせている。ご飯の上にホワイトソースをかけて焼いた、洋食屋でも滅多に見かけない**ドリア(どりあ)**だ。
「わあ……凄いわね、あなた。でもこれ、どうやって焼いたの? うちにオーブンなんて……」
「あ、いや、それはね、ちょっとググってみたら、フライパンと魚焼きコンロでもいけるって出てきたからさ!」
「ぐぐって……?」
聞き慣れない不思議な言葉に、結がパチクリと瞬きをした、その瞬間。
お腹の赤ちゃんが、まるで「今のワードはアウトー!」と突っ込みを入れるように、内側から力強くドコッと結のお腹を蹴り上げた。
「あら、坊やもびっくりしちゃったみたい」
「あ、あはは……。あ、ちょっとごめんね結! 業者に、その、ちょっと電話してくるから!」
完全にキャパシティをオーバーしてごまかしきれなくなった旦那さんは、顔を真っ赤にしながら、ポケットから薄くて四角い、透明なプラスチックの板をスッと取り出した。そして、それを耳に当てながら、大慌てで雪の降る外へと飛び出していった。
残された結は、手の中のプラスチック板に向かって「もしもし!? もしもしシステム!? 出力バグってるって!!」と庭で必死に怒鳴っている旦那さんの声を背中で聞きながら、ふふっと声を立てて笑ってしまった。
「おいしいわね、赤ちゃん。お父さん、私たちのために一生懸命ね」
熱々のドリアをスプーンですくい、フーフーと冷ましながら口に運ぶ。
クリーミーで、どこまでも温かい未来の味が、結の口いっぱいに優しく広がっていった。
第20話をお読みいただき、ありがとうございました。
先日は、結の名前の件であまりにも取り乱した文章を載せてしまい、大変失礼いたしました。ちょっとプロデューサー(?)として冷静さを欠いておりました。反省しております。
……それにしても、今回の旦那さんには呆れてしまいました。結を喜ばせたい一心なのは分かりますが、いくら何でも時代考証がめちゃくちゃです。「ググる」って何ですか。プラスチックの板って何ですか。せっかく私が昭和39年の綺麗な冬景色を維持しているのに、裏での彼のアドリブのせいで、こちらの設定がガタガタです。もう少し落ち着いて演じてほしいものですね。
それでは、またお会いしましょう。
[SYSTEM_LOG: COMPILATION_ERROR]
[Status]: ..................(深いため息)




