第十六話 船と
それを見た時、俺は言葉が出なかった。
ただ一言、それを表すとするならば――――
「……デケェ」
やっとの思いで絞り出した一言だ。
だが、それも仕方ないだろう。
本当にデカいのだから。
【ドラール・ファフニル号】。王国が保有する、最も巨大な船だ。
そして何を隠そう、俺は船を見るのも乗るのも初めてである。小さい頃はずっと家に閉じ込められていたからなぁ……。
「ふふっ。クライさん、びっくりしましたか?」
「あ、ああ」
「それは良かったです! 私もクライさんがびっくりした顔を楽しめましたし……」
そして俺の隣にはドレス姿ではなく、ラフな格好をしたリアナがいた。
今回、驚くべきことにリアナの護衛は俺一人だった。船を操縦する船員は乗る事になっているが、国王は「余計な人員はあの少年の邪魔になるだろう」と言って他の護衛を断ったそうだ。
買ってもらえている事は嬉しいが、あんまり自信ないな。
「皆さん、長い旅路になりますが、よろしくお願いしますね」
「「「はい! お任せください!」」」
ちなみに船乗り達のモチベーションは最高潮だ。
なにせ王国一の美女と言われる、リアナとしばらく一緒の船に乗れるんだ。彼らにとっては労働のご褒美みたいなものだろう。
そして、俺とリアナを船に乗せ、お茶会が行われるファルナンク共和国に向けて出航した。
港を出てからしばらくの時間が経った。
船はかなり揺れるから船酔いに注意するようにってヒューズが言ってたから、酔い止めとか用意してきたんだけど無駄だったな。
《浮遊》する時の方がよっぽど酔いそうになる。
「それにしてもリアナは結構平気なんだな」
「私は何度か船に乗っているので割と平気なんです」
俺は今、リアナの部屋にいるのだが、船の中とは思えないほど豪華な部屋だった。王族や貴族が乗る時用の部屋で、風呂まであるのだから驚きだ。
「あ、そうだ! クライさん、甲板に出てみませんか?」
「え? まあ、いいですけど」
「やった! ほら、早くいきましょう!」
俺の手を引いて、
そんなに急がなくても甲板は逃げないって言うのに。
でも、そんな姿も可愛い。そう思っている自分がいた。
甲板に出ると夜空が広がっていた。
雲一つない星空を二人で眺める。
「綺麗ですね」
「うん、綺麗だ」
俺はその言葉を星空ではなく、リアナを見て言った。
星を眺めるリアナはキラキラと瞳を輝かせて、とても美しかった。
すると俺の手をリアナが握った。
見るとリアナは顔を真っ赤にして、上目遣いで言った。
「嫌、ですか……?」
「嫌じゃないよ……」
めちゃくちゃ恥ずかしいけど。
その言葉を飲み込んで俺もリアナの手を握り返す。
小さな手だけど、とても暖かい。
ダンジョンに落とされた時からは想像もできないほど、俺は今幸せだ。
こんな幸せがいつまでも続けばいいのに――――。
「敵襲だぁあああああ!!!」
どうやら、幸せってやつは長くは続かないらしい。
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