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第十七話 船上の幽霊と

 船乗りの悲鳴が響き渡った。

 周りを見渡してみると、数十を超える幽霊(ゴースト)が船の周りに集まっていた。


「っ、いつの間に……!」

「《荒れ狂う嵐(ウィンド・ストーム)》!!」


 船上に浮いている幽霊を風で遠くに吹き飛ばす。

 これで時間は稼げるはずだ。

「一体何があったんですか?」


 ちょうどこちらに駆け寄って来ていた船長に話を聞いてみた。


「それが、突然の事だったんです。何もない場所から幽霊(ゴースト)が現れて、我々を襲って……」


 それは、はっきり言ってありえない。

 幽霊っていうのは本来、自分が死んだ場所や墓の周りに魂が縛られる事で発生する魔物だ。

 だが、ここは海の上で周りには何もない。


 その事を不思議に思ったのは俺だけじゃなく、船長やリアナもそうだった。


「船長、大変です!」

「なんだ!」

「それが、船員が三人攫われました!」

「何だと!?」


 っ、攫われた? それもおかしいぞ。さっきも言ったが、ここは海の上だ。攫っていける場所なんてないし、大体は習性的に幽霊に攫うなんて事はしない種族だ。


「船長!」

「今度はなんだ!」

「こんな紙が残されていました!」


 そして、その紙を見て驚いた。




 その船一番の戦士と同乗している麗しき女性と二人で我が船に来られたし。場所は北に二キロ離れた場所にある。そうすれば人質は解放してやろう。




「これって……」

「俺とリアナの事だろうな。明らかに俺らがこの船に乗っている事を知っている奴の犯行だ」


 マズイな。

 ここまでの芸当ができて幽霊(ゴースト)を使役できるとしたら、それは――――


「まさか、リッチ?」

「奇遇だな。俺もそう思ったところだよ」


 リアナも同じことを考えていたみたいだ。


 リッチとはアンデット系の上位種だ。知能が高く、中には前世の記憶を継承している個体もいるらしく、魔法を使ったり、同じアンデットを配下として使役する事が確認されている。


 さて、助けに行くか、見捨てるかの判断だが、俺は――――。


「見捨てて進むべきだ」


 そう、断言して口に出した。

 みんなの視線が俺に集まる。


「悪いが、今回の任務はリアナの護衛だ。リアナを連れてまで敵戦に向かう義理は無いし、何よりも生きている保証が無い。そんな場所にリアナを連れていけるわけがない」


 リッチは恐ろしく知能が高い。おそらく、数多くの罠が用意されているだろう。リアナを守り切れるか、と聞かれれば断言できない。無論、俺は死んでも守るがそれでも危険は犯すべきではないのだ。


「まっ、それが筋ってもんだな……」


 船長も賛同してくれた。多少、不満はあるみたいだが、それでも彼はプロだ。優先順位は決めているみたいだ。


 さて、最後にリアナだが。何かを試案しているように顎に手を当てて、そして――――。


「いえ、助けに行きましょう」

「リアナ!」

「私は何が何でも行きますよ。そうすれば、クライさんも来ないといけなくなりますよね?」


 真っすぐと俺の目を見ながら言う。

 揺るぎない意思を感じる。

 俺が何を言っても、もう無駄だな。


「…………はあ。分かったよ」


 まあ、薄々こうなりそうだと思ったんだがな。

 リアナは正義感の強い人だし、優しい人だから。


「ありがとう、ありがとうございます……っ! リアナ王女!」

「俺が頼むのもあれなんだが、どうかよろしく頼みます。大事な、船員なんです……っ!」


 結局、俺が死ぬ気で守ればいい話だ。


 と、いつの間にか俺の耳元まで近寄って来たリアナが――――。




「何かあっても守ってくれるんでしょ?」




 っ、それはずるいだろ……。ドキッとしたぞ。


 俺はリアナには一生、勝てそうも無いな。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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