表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第13章 大事な人
195/195

~その14~ これからも頑張ります!

 日曜は、午前中、私と一臣さんはずっと部屋でのんびりとした。というより、私が本当にぐったりしていて、ベッドでごろごろしたり、起き出してもソファに座り込み、一臣さんの胸にべったりしていた。


 一臣さんは、すっきりとした顔をしていた。でも、私に付き合ってくれたのか、ずっと私の隣にいてくれたし、私が一臣さんに引っ付くと、甘えさせてくれた。


 それが嬉しくて、私はさらに甘えていたかもしれない。一臣さんの指に指を絡めたり、胸に顔をうずめたり、抱き着いたり。一臣さんも、私の背中や髪を優しく撫でたり、時々チュッとキスをしてくれたり、私の太ももを撫でたりしていた。


 甘い時間を過ごし、午後はダイニングでゆっくりと、龍二さんや京子さんとお昼ご飯を食べた。なんだか、二人も昨日より、甘々な雰囲気を醸し出している。何かな?そういえば、京子さんと龍二さんも一緒の部屋に寝泊まりしているんだよね。


「弥生、買い物にでも行くか?」

「え?」

「ジーンズ、欲しかったんだろ?」

「はい」


「じゃあ、これからデートだな」

「はい!」

 嬉しい。

「なんだよ。元気になったな?午前中は本当に疲れ切っていたくせに」


「あ。それはそうなんですけど。でも、すっかり元気取り戻せました」

「そうか。タフだな。お前」

 そう言われ、私はかっと顔を赤くさせた。それを見た龍二さんは、にやっと笑って、

「兄貴、いくら弥生が逞しいとはいえ、少しは手加減してやれよ。今まで男と付き合ったこともないんだろ?経験値もないんだろうしさ」

と、そんなことを言ってきた。


「龍二にとやかく言われる筋合いはないぞ。お前こそ、京子さんは体が弱いんだから、あまり無茶するなよ。ちゃんと考えてあげろよ」

「わ、わかってるよ」

 うわ。龍二さん、真っ赤だ。それに、京子さんまで。


 もしや、何か、進展が…。


「弥生、行くぞ。支度しろ」

「あ、はい」

 ダイニングを一臣さんと一緒に出た。そして、部屋に行き、着替えや化粧をして、一臣さんの部屋に行った。一臣さんも着替えていたが、かなりラフな格好だった。


「生足か?」

「え?はい」

「よし」

 思い切り嬉しそうな顔をしたなあ。


 私は膝が見えるフレアースカートを履いていた。それに夏のサンダル。それから、サマーニット。一臣さんは、Tシャツとジーンズ。それに、ジャケットだ。


「さあ、行くぞ」

「はい」

 わあい。嬉しい!デートだ~~~~。

 

 等々力さんの車で、一臣さんは六本木に出た。この前とは違うビルに入り、ジーンズのお店に行くと、私のジーンズを見立ててくれた。そして、自分もジーンズや、Tシャツを買った。それから、帽子も買うと、その場ですぐにかぶった。


「どうだ?似合うか?」

「かっこいいです」

 うっとり。


 そして、外にあるベンチで、お茶をした。ああ。一臣さん、カッコよすぎだよ。

 うっとり。


 一臣さんは、そんな私の鼻をつついて、

「うっとりと見るなって」

と、笑いながら言った。そんなこと言われたって、素敵なんだもん。


「時々、デートしような?」

「はい」

「ああ、そうだ。テニスもしたいって言ってたな。夏休みの避暑地で、テニスもしような?」

「はい」


 わくわくだ~~~。嬉しいよ~~~。


「あ。そういえば、一度、大阪に来いと副社長に言われていたんだ。いくら龍二が大阪支社を継ぐとはいえ、次期副社長になるわけだから、支社や支店も顔を出しておけってな」

「そうなんですか?」


 泊りでかな。その間、私はお屋敷に一人?

「一緒に行って、うまいもんでも食って来ような?」

「私も行っていいんですか?」

「当たり前だろ。俺のフィアンセだとちゃんと紹介するぞ」

 嬉しい。


「ただ、あんまりバクバク食うなよ。まじで、結婚式、ドレス着れなくなるからな」

「は、はい」

 本当に気を付けないと。体重計にも乗っていないけど、体の重さを最近感じるしなあ。ジムに一臣さんと通うか、何か運動しないと…。


「ドレスは、ジョージ・クゼが引き受けてくれたぞ」

「え?ドレス?」

 ぼけっと考え事をしていたから、一瞬何のことかわからなかった。

「ああ、ウエディングドレスだ。ジョージ・クゼ、喜んで引き受けてくれたそうだぞ」


「そうなんですか。あ、大人っぽいドレスとか、きっと無理…」

「大丈夫だ。お前のイメージにあったのを作ってくれるから」

 そうなんだ。わあ、楽しみ。なんか、ドキドキしちゃうなあ。


 一臣さんは、何を着るのかな。タキシード?似合うんだろうなあ。

 また、ぼけっと、一臣さんのタキシード姿を妄想していると、一臣さんが話を続けてきた。


「それから、お前には見せなかったが、久世からカードが届いていたんだ」

「え?久世君から?」

 なんでまた、久世君から?

「アメリカからお前宛で。悪いが中身を見せてもらった」


「どんな内容のカードですか?」

「婚約おめでとうというカードだ。それから、お前にはすごく迷惑をかけて悪かったと、そう書いてあった」

「……そうなんですか」

「ああ。俺と幸せになれってさ」

「じゃあ、もう、久世君は…」


「お前のことは諦めたようだな」

「良かった」

「トミーも瑠美と結婚を決めたし、久世の奴はアメリカにようやく行ったし、これでお前にちょっかいを出してくるやつもいなくなったな」


「…一臣さんには?」

「俺?」

「また、付き合っていた女性が、言い寄ったりしないですか?」

「するかもな。でも、安心しろ。近づけさせないから」


「はい」

 私はまっすぐ一臣さんを見て、そう答えると、

「ん?俺のこと、ようやく信じる気になったのか?」

と、一臣さんに言われてしまった。


「はい。信じています」

「そうか」

 にこっと一臣さんは優しく笑うと、コーヒーを飲み、

「ああ、ゆっくりできていいな」

と、呟いた。


「はい」

 しばらく、コーヒーを飲み終わっても、私たちはそこにいた。日陰だし、時々気持ちのいい風も吹いてきて、私たちは、穏やかな時間を満喫した。



 翌日、一臣さんは車を正面玄関に停めさせた。

「婚約発表後の反応が見たいから、等々力、正面玄関に停めてくれ」

と言って。


 一臣さんの車から、まず樋口さんが降りると、社員はこの車に注目する。きっと、一臣さんが乗っているとわかるんだろう。でも、まず降りるのは、私だ。


「あ、上条弥生さんよ。一臣様の婚約者の」

「一緒に出社かしら。緒方家のお屋敷に住んでいるんでしょう?」

 そんな声が聞こえてきた。みんなは、ちょっと遠巻きに私を見ている。


 それから、一臣さんが車から降りると、

「一臣様だ。ラッキー。生で見れちゃった」

「ホームページに写真が載っていたけど、実物のほうが素敵よねえ」

 そんなうっとりとした声が聞こえた。


 一臣さんは、私の腰を抱き、そのままエントランスを入った。樋口さんは後ろからついてきていた。

「おはようございます」

 受付嬢が立ち上がり、ぺこりと挨拶をすると、

「ああ」

と一臣さんは答え、

「おい。弥生も返事をしろよ」

と、私に言ってきた。


「え?あ、おはようございます」

 私は慌てて、受付嬢に向かって挨拶をした。受付嬢も私に、

「おはようございます」

と、またぺこりとお辞儀をした。


「弥生、お前、正式発表もあったんだし、次期副社長の奥さんになるんだからな。のちの社長夫人なんだぞ。自覚して、社員にも挨拶されたら、ちゃんと返せよな」

「はい」

 ん?でも、一臣さんも無視すること多いけど。


 いやいや。私にも挨拶をしてくれているのだとしたら、ちゃんと返さないと。一臣さんの言うとおりだよね。

 婚約したんだもの。もうすぐ、緒方弥生にもなるんだもの。気を引き締めなきゃ。


 一臣さんは、私の腰を抱いたまま、エレベーターに乗った。おはようございますという挨拶に、めずらしく一臣さんは、

「ああ」

と返していた。


 私も慌てて、

「おはようございます」

とその社員に返した。すると、その社員もびっくりした顔で、

「あ、おはようございます。上条さん」

と、挨拶をしてきた。


 15階に行き、一臣さんと部屋に入り、カバンを置いた。

「なんか、緊張しました」

「何がだ?」

「社員の人に、挨拶されるのも挨拶するのも」


「お前の顔は、広報誌にもホームページにも載ったしな。これからは、もっと声をかけられるかもな」

 ひゃ~~~。そうなんだ。

「おい。びびるなよ。結婚したら、副社長夫人になるんだぞ?わかっているのか?弥生」

「そそそ、そうですよね。一臣さん、11月で副社長ですもんね。一臣さんは緊張しないんですか?」


「緊張より、プレッシャーのほうがでかいからなあ。本当言えば、なりたくなんかないさ」

「え?そうなんですか?」

「俺が喜んでいるとでも思ったのか?」

「い、いいえ」

 そうだよね。睡眠障害にまでなったんだから、喜んでいるわけがないよね。


「でも、お前との結婚は楽しみだぞ」

「結婚式は面倒だって言っていましたよね?」

「ああ。式は面倒だな。ああいうたぐいは全部面倒だ。だけど、結婚したら、子供を作れるぞ。避妊をしなくてすむし、思う存分エッチも楽しめる」


「……」

 思う存分って、これ以上に?いったい、どれだけなんだ。


「さて。今日も俺は分刻みだ。弥生は秘書課の手伝いに行け」

「はい」

「昼も、外で食うことになると思うから、弥生は大塚か誰かと食べろよな。あ、その時は、誰かガードをつけるからな」


「え?日陰さんですよね」

「日陰だけじゃない。伊賀野か、他の忍者部隊が弥生の警護にあたるからな」

「はい。わかりました」


 私は14階に行き、事務仕事を手伝った。そして、12時を回り、江古田さん、大塚さんと社員食堂に行った。

「ここなら、安全よね」

 そう大塚さんは言いながら、席を取った。


「え?安全って?」

「細川さんに言われているんです。弥生様を守るようにって」

 江古田さんが、私の隣に腰かけながらそう言った。


「え?江古田さんと大塚さんに?あれ?今、弥生様って言いましたか?」

「はい。次期副社長の奥様になられる方ですから」

「い、いいですよ。今迄みたいに呼んでくれて」

 慌てながらそう言うと、

「私も、弥生様って呼ばないとね」

と、大塚さんにまで言われてしまった。


 ひゃあ。なんか、慣れないから変な感じだ。


「あ、弥生様。ご婚約おめでとうございます」

 誰?いきなり、私のすぐ近くに来て、お辞儀をしたけど、多分、面識ないと思うんだけどなあ。30代くらいの女性だ。


「おめでとうございます。私、弥生様の思いが報われるよう、応援しています」

「え?」

 今度は、20代前半くらいの女性だ。


「一臣様と本当に仲良くなれるといいですね。頑張ってください」

 その隣にいた若い女性も私にそう言ってきた。


「は、はい。ありがとうございます」

 思わず私は立ち上がり、ぺこりとお辞儀をしたが、あれ?もう、一臣さんとは仲いいんだけどなあ。と、思い直した。


 そのあとも、社員の人が、話しかけてきた。ご婚約おめでとうございますという言葉や、頑張ってくださいという激励や、早く一臣様と仲良くなれたらいいですね…なんて、そんな言葉もたくさん聞いた。


 もう仲いいんです。とは言えず、私は笑顔を返すだけだった。一臣さんだったら、もう仲がいいと言い返しているかもしれないなあ。


 なんとか、お昼を時間ぎりぎりに食べ終わり、私たちは急いで秘書課に戻った。

「弥生様、人気者~~」

 大塚さんが、腕をつっつきながらそう言った。

「でも、良かったですね。みんなが祝福してくれて」

 江古田さんはにこにこしながら、そう言ってくれた。


「はい、ありがとうございます。とても嬉しいです」

 みんなに「弥生様」と呼ばれるのは変な感じだ。上条家でだって、そうそう私を弥生様と呼ぶ人もいないし。緒方家のお屋敷でくらいだからなあ。そう呼ばれるのも。


 だけど、12月には、私は緒方商事副社長夫人になるんだもんね。やっぱり、気を引き締めないと!


 浮かれている場合じゃないよ、弥生。今から、ちゃんと副社長夫人の名に相応しい女性になれるよう、頑張らないと。


 そんな気持ちで、1日の仕事を終え、15階に行った。すると、すでに一臣さんがいて、

「弥生、こっちに来い」

と手招きされた。

「はい」


「は~~~。疲れたぞ」

 一臣さんは、私を膝の上に乗せ、太ももを撫でながら、耳たぶに噛みついた。

「ひゃ」

 ああ。もう~~~。せっかく、気を引き締めたばかりなのに、いきなり、こんなスケベなことされたら、気持ちが緩んじゃうよ。


「あの!私、今日、弥生様って呼ばれて、社員のみんなに、ご婚約おめでとうございますって言われたんです」

「へえ。俺にはそんなこと言ってくるやついなかったけどな。多分、俺が婚約を喜んでいないと思っているんだろうなあ」


「そ、それで、私、副社長夫人になるわけなんだし、それに相応しい女性になるために、いろいろと頑張ろうと思って」

「よせ」

「え?!」


 なんで?

「お前が頑張ると、ろくなことにならない。前も、頑張ろうとして、へんてこりんになったんだろ?」

「そ、それは」

「弥生。お前はこのままでいろって言ったよな?」

「はい」


「弥生は弥生でいたらいい。それだけで、もう十分だ」

「でも」

「十分最高なんだよ。副社長夫人としても、俺の嫁としても」

 わあ。俺の嫁?なんか、照れる。


「だから、このままの弥生でいろ。な?」

「はい」

「あ、でも、レベルアップはしろよな?」

「は?」


「エッチの方だ。それはぜひ、頑張れよ。な?」

 もう~~~~~~~~~~。スケベ。変態。そう口から出そうになったが、一臣さんがキスをしてきたから、何も言えなくなった。


 わあ。また熱いキスだ。ヘナヘナだ。

「弥生」

「はひ?」


「ガーターベルト、青山が揃えてくれた。今すぐにはいていいぞ。ストッキングもある」

「へ?」

「それつけて、エッチしてから帰ろうな?」

 ええ?!


「こ、ここで?」

「ああ」

「え?今からですか?」

「ああ」


 一臣さん、ニコニコだ~~~。


 そして、何やら袋を渡された。見てみると、ガーターベルト、小さなパンティ、ストッキングが入っていた。

「本当に、今から?」

「向こうの部屋でつけてこい。待ってるからな?」


 これは、嫌だと言っても、聞いてくれそうもない…。


 ちょっと、いや、かなり前途多難のような気がする。だけど、やっぱり、一臣さんと無事婚約できて、私は最高にハッピーだ。


 隣の部屋で、ガーターベルトを着け、ストッキングを履きかえ、パンティも履きかえて鏡に映してみた。今度はなんと、黒のガーターベルトだ。ストッキングまで黒。


 ひゃあ。なんか、色気があると言うか、エロっぽい。

 一臣さん、どう思うかなあ。

 スカートをちゃんと直し、隣の部屋に戻った。一臣さんは、長いソファに腰かけていた。


「へえ。白のスカートに黒のストッキングもいいな」

 目がにやけていますよ。かなりスケベな顔になっていますってば。


「来いよ、弥生」

 そう言われ、私は一臣さんの隣に座った。一臣さんはすぐさま、私のスカートをたくしあげてきた。

「黒のガーターベルト、すげえ色気があるな」

「そ、そうですか?」


「ああ。やばいな」

 本当にやばかった。一臣さんにすぐに押し倒されてしまった。


 熱いキスで私もすぐにスイッチが入った。そして、甘い世界に連れて行かれた。


 はう。


 今日の一臣さんも、麗しい。



 上条弥生、一臣さんと無事婚約できました。

 毎日、甘々の、ラブラブ生活を送っています。


 こんなでいいの?と思うくらい、幸せ満喫中。


 頑張らばらなくていいぞ。と言われたけれど、結婚まで半年、上条弥生、一臣さんのおそばで、いろいろと頑張りますっ!!!


                      ~おわり~

 



長い間、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ