穏やかな(?)時間…
約束通り、15日に防衛省で辞令を貰い、諸々の手続きを小会議室でしていたら、
通りすがりの防衛大臣がひょこっと顔を出して…
いやぁ〜
諏訪さん!
色々とすいませんでしたねぇ〜
今後のご活躍、期待していますよ!
と満面の笑みで握手して部屋から出て行った。
怒涛のような勢いで入出して呆気に取られたのだが…
誰のせいだよ!あんたが決済書類にサインしなければ、私はのんびりと余生を送れたンだ!
と呟くと、隣にいた宮澤3佐…副官がプっと吹き出し⋯
まぁお気持ちは分かりますが、そろそろ諦めて下さい。
あ!こちらはサインだけで大丈夫です。押印は必要有りません。
と…
私の事務手続きを手伝ってくれている。
副官も悪かったな。こんな爺さんのお子守係をさせてしまって…
いえいえ…
何をおっしゃいますか!
私は
伝説の陸将補
の元で働けるなんて言う幸運な事を誇らしく思います。
ん?
伝説の陸将補?
なんだね?そのドキュメンタリー番組の題名みたいなのは?…
あれ?
局長、ご存知ありませんか?
幕僚副長であり乍ら、自ら積極的に現場に赴き部下と共に汗をかく。
退役1週間前迄消火活動のUH-1に乗っていた。
なんて人、いませんよ(笑)。
あゝ、その事か(苦笑)…
お陰で部局の事務方には大目玉だったンだがな(笑)。
でもそのお陰で派遣隊はめちゃめちゃ士気があがったそうですよ。
まぁ局長の武勇伝って調べたら山の様に出て来て…
しかもその殆どが
隊員と一緒に汗をかいていた。
と言う話で…
みんな感謝しているンですよ。
と言ってにっこりと笑った。
う〜ん…
イケメンの笑顔って破壊力が凄いなぁ…
いや…
現場ファーストなんてのはな…
加齢に伴って減らさないと…
つい出しゃばって現場の指揮系統が混乱するからなぁ。
その後、手続きは滞り無く終わり、指揮局に戻ったのは退勤時間2時間前であった。
指揮局では、堅苦しい儀礼用制服を脱ぎ、ディープグリーンのワークパンツと同じくポロシャツになった。
ポロシャツには半袖の左袖口と左胸に…
JGSDF
と刻んである。
実は私の新しい身分は組長と有事の際にサポートをお願いしている、駐在所の警察官以外には明かしていないのだ。
一応、
今迄の事務経験を活かして事務のパートとして働き始めた。
と言う事にしてある。
なので、赴任後、戦闘服ではなくこの新しい服を着用しているのだ。
さてっと
行きますか…
今日は⋯っと…
千須和2曹か…
着任後、輪番制の地域巡回を取り入れている。地域パトロールがメインだが、本当は、
隊員には地域住民を
地域住民には隊員を
其々知って貰う事が実は一番の目的としている。
千須和2曹、付き合ってくれますか?
すると、
事務仕事をしていた千須和2曹が、ため息交じりにこう言う。
局長、付き合うのでは無く仕事ですからネ。
し・ご・と!
はいはい
と苦笑い。
彼女も私と同じ…
ディープグリーンのポロシャツとワークパンツ
を着用している。
これは、地方の小さな分局の此処の隊員が、戦闘服3型を着てパトロールなんかしていたら怖いですから…
と防衛大臣に直訴して予算を取って作って貰ったれっきとした、制服なのである。
さて行こうかネ…
と、公用車5号と言われる…
私の愛車と同じモデルの4枚ドア版に向かう。
コイツも防衛大臣に直訴して整備して貰った新型公用車だ。
ハンドルを握るのは千須和2曹。
免許を取得したのは入隊後だそうだが、なかなか運転技術は高いと思う。
じゃ、だしますネ。
千須和2曹の声でベルトを確認して出発。
警らはこのエリアと例の
トンネル
を一周廻る大体1時間のコースだ。
先ずは駐在所に行ってくれるかな?
又、寄り道ですネ(笑)。
金丸さんに東京土産を渡したくてネ…
駐在所の金丸警部補は、元県警捜1のベテラン刑事だったが、定年を前に何故かこの駐在所に異動してきた方だ。
組会の時に同じ公務員(私は元だが…)として親交を深めたいと思ってネ、一寸話し込んだのである。
いやぁ、私も諏訪さんと一緒ですよ。
もう、バタバタし乍ら犯人を追い掛けるのは疲れました。
のんびりと定年迄を過ごしたくてネ…
と片目をつぶった。
その姿は昔々公共放送で放送していたアメリカの刑事ドラマの主人公によく似ていた。
シガーを加えてしわくちゃのトレンチコート。愛車は1959年式のプジョーのコンパーチブルで
ウチのカミさんがネ…
と言うのがお決まりで…
多分、同世代の金丸警部補も観ていたのだろうなぁ~
と勝手に好感を持っているのだが…
お土産とは防衛省にあるPX(Post Exchange…つまり売店ですな)で売っている防衛省限定のお菓子やらなんやら…
を買って行ってみたのだ。
喜んでくれればいいのだが…




