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最下層の現実
「…生きてはいない。死んでいる」
「!!」
目の前で…死体なんて…初めて見た。此処から見てもただ眠っているようにみえるのに。
「数日後には死体回収業者が片付ける。
此処では家で誰かが死ぬとこうやって外の邪魔にならないところに置いておくんだ」
「何…それ……そんなの酷い」
日本じゃ絶対に考えられない。
「勿論上層区では人が死ねばそれなりの葬儀を行い、墓も立ててもらえる。
身寄りのない奴隷でさえ、火葬されて奴隷専用の共同墓地に葬ってもらえる。
だが此処では……死体から取れる物を取って、ゴミと一緒に燃やされる」
「酷い…」
いつまでも死者から目を離せずにいる私をノワールはひっぱり、歩かせる。
「……ノワールのお父さんは偉いんでしょ?最下層区に援助とか出来ないの?」
あんなに大きなお屋敷にノワールは住んでいるし、ジャンヌだって自分の屋敷を持っている。なら少しくらい此処に寄付とか出来るんじゃないの?
「無駄さ。どんなに援助の為に金を送っても彼らに届く前に誰かの懐に入る。貴族なんて皆腐ってるんだよ」
「……」
私だって募金くらいしたことある。小学校の時、赤い羽根募金で10円とかだけど…それだって、貧しい国では大金だ。
何十円かでポリオの薬も買えるし、食べ物だって。




