吸血鬼 暁:マフラー
「ちょっと… 冷えてきたな。」
木造建築の家の窓からひょっこり顔を出し、
外を確認する。
もうずっと、この森から出ていない。
俺が出たら、迷惑がかかるだろ。
『夢』とか、『希望』とか。
持っていてもしょうがない。
そう思わないか。
人を突き進ませるのも、『夢』『希望』
だけど、人を奈落の底に落とすのも、『夢』『希望』
だから、俺は、そういうの一切持たないことにしている。
台所の方に向い、午前入れた珈琲を割賦に注ぐ。
ふんわりといいにおいが漂い、黒い珈琲は俺の目をうつす。
窓辺に咲いているスイートピーをなで、
珈琲割賦を片手に、外を眺めた。
俺、霧生暁は、日本最古の吸血鬼の末裔で、
小さいころから、赤いものに反応してきた。
ヒトをみると、ウズウズする。
首筋、血管の浮き出る腕、手。
鼓動が聞こえる シンゾウ。
今すぐ、吸ってしまいたい。
…そんなことを考えてしまうからヒトと遮断するため
ここに来た。
暮らしやすいし、空気もいい。
びゅんびゅんバイクが飛ばしてある街中より、
こっちの方がいいのにな。
しばらく、考え事をしていると、珈琲に白い雪が入った。
すんなりと溶けて入っては、また入る。
「初雪、か。」
手元に持ってある珈琲割賦を台所に置き、
マフラーを手に取った。
久しぶりに、外に出てみるか。
黒いコートを着て、自分を隠すようにマフラーをし、
街へと繰り出した…




