第8話「なんか危険人物認定されたんだが?」
「……マジで?」
閉じられた扉を見つめる。
外から聞こえた会話。
“例の反応”
“あのタイプ”
「どう考えても俺のことだよな」
ため息をつく。
だが——焦りはない。
(まあ、そうなるよな)
むしろ納得している。
死に戻り。スキルガチャ。異常な挙動。
普通じゃない。
バレない方がおかしい。
「問題は——どう扱われるか、だな」
壁に寄りかかる。
状況整理。
武器は没収されていない。だが部屋は施錠。
つまり——
(完全な敵扱いではない)
様子見。
判断待ち。
「なら、交渉の余地はある」
数分後。
カチャッ、と音。
扉が開く。
「お待たせしました、ユウキ様」
受付嬢が戻ってくる。
変わらない笑顔。
——だが後ろ。
男が二人。
重装備。
完全に戦闘要員。
「……あー、はい」
察した。
「ちょっといいですか?」
「拒否権は?」
「ありません」
「ですよねー」
苦笑い。
部屋の中央へ促される。
男たちが左右に立つ。
(完全に取り囲まれてるな)
逃げ場はない。
でも——
(まだ“敵”じゃない)
「では単刀直入に伺います」
受付嬢が一歩前に出る。
声のトーンが変わる。
仕事の声。
「ユウキ様。あなた——“外来者”ですね?」
「……外来者?」
「この世界の人間ではない、という意味です」
ド直球。
「……どう思います?」
「質問に質問で返さないでください」
にっこり。
圧。
「……まあ、そうです」
あっさり認める。
隠しても無駄だ。
あの反応。
誤魔化せるレベルじゃない。
「やっぱり」
受付嬢が、小さく息を吐く。
後ろの男たちがわずかに緊張を強める。
「安心してください」
「どの辺が?」
「即時排除対象ではありません」
「“即時”って付いたな今」
「状況次第では変わります」
「怖い怖い」
軽口を叩く。
だが内心は冷静。
(ラインを見極めろ)
「……で、俺はどうなるんです?」
「基本的には——監視対象です」
「やっぱりな」
想定通り。
「ただし」
受付嬢が続ける。
「協力していただけるのであれば、話は別です」
「協力?」
「はい」
一拍。
「“外来者”は、例外なく特殊な能力を持ちます」
(まあ、持ってるな)
「それは時に——災害級の脅威にもなり得ます」
「ひどい言われようだな」
「事実です」
きっぱり。
「ですが同時に——」
少しだけ、声が柔らぐ。
「有用でもあります」
「……なるほどね」
理解した。
要するに——
(使えるなら使う、ダメなら処理)
シンプル。
合理的。
「で、俺に何させたいんです?」
「簡単です」
受付嬢が微笑む。
今度は、営業の笑顔じゃない。
“交渉”の顔。
「ギルド所属として活動していただきます」
「普通じゃん」
「その代わり」
一拍。
「行動は常に記録・監視されます」
「……やっぱりな」
「拒否された場合」
後ろの男が一歩前に出る。
「拘束・隔離の対象となります」
「はい二択」
苦笑い。
でも——答えは決まっている。
(こんなの選ぶまでもない)
「やりますよ」
「即答ですね」
「だって——」
肩をすくめる。
「外で野垂れ死にするよりマシだろ」
「賢明です」
受付嬢が頷く。
「では、契約成立ですね」
その瞬間。
空気が少しだけ緩む。
男たちの緊張も、わずかに解ける。
(とりあえず第一関門クリア)
「それともう一つ」
「まだあるのかよ」
「重要事項です」
受付嬢が真っ直ぐこちらを見る。
「あなたの能力——申告していただきます」
「……どこまで?」
「可能な限り正確に」
(全部言うのはアウトだな)
死に戻りなんてバレたら終わる。
確実に“隔離コース”。
「……スキルがランダムで変わるタイプです」
嘘はつかない。
でも、核心はぼかす。
「なるほど」
受付嬢が頷く。
じっと観察されている。
(見抜けるか?)
一瞬の沈黙。
だが——
「理解しました」
それ以上は追及してこなかった。
(セーフか?)
「では、仮登録を進めます」
空気が完全に通常へ戻る。
「ようこそ、ユウキ様」
改めて、微笑む。
今度は——
少しだけ本物に見えた。
「トータス冒険者ギルドへ」
「……どうも」
肩の力を抜く。
助かった。
……とりあえずは。
(監視付きだけどな)
でもいい。
居場所は手に入れた。
そして——
(ここからだ)
この街で。
このギルドで。
俺は——
もっと死んで、強くなる。
《To be continued》




