第6話「勝利きたんだが?ついでに街も見えた」
「頼むから今度は攻撃系で来い……」
白い空間。神様がニヤニヤしている。
「はいはい、それじゃあガチャ結果いくよー」
ウィンドウが、確定する。
【新スキル:《焼却付与(C)》】
▶ 武器に“微弱な火属性”を付与する
▶ 持続:短時間
▶ 効果:低〜中威力だが継続ダメージあり
▶ 使用回数:3回(死亡時消失)
「……お?」
「お、いいじゃん。ちゃんと戦闘系だね」
「“微弱”が気になるけどな」
でも、今までよりは100倍マシだ。
(燃えるなら——虫には効くだろ)
そして、今回は“勝ち筋”も見えている。
「核を真っ先に潰す」
「お、いいねいいね。学習してる」
「うるせえ」
深呼吸。
意識を切り替える。
「行くぞ、六回目」
世界が、反転した。
⸻
森。
同じ場所。
でも——今回は違う。
「最短で終わらせる」
走る。
群れを呼ぶ前に、奥へ。
草を踏み、枝を払う。
(あの位置だ)
記憶を頼りに、一直線。
——ザザザッ。
「来たか」
背後から音。
だが振り向かない。
「無視でいい」
目的は一つ。
核。
それだけ。
視界の奥。
黒い塊の“流れ”。
その中に——
「いた」
わずかに遅れる個体。
全体のリズムを握る存在。
間違いない。
「ビンゴ」
距離、まだ遠い。
だが——間に合う。
「今だ」
ナイフを構える。
「《焼却付与》」
発動。
刃が、じわりと赤く染まる。
熱。
空気が揺れる。
「お、ちゃんと燃えてるな」
弱いが——確実に“火”。
(十分だ)
前方から数匹が飛びかかる。
「邪魔」
一閃。
斬る。
ジュッ、と音。
「……お?」
斬った個体が燃えながら落ちる。
「いいじゃん」
確信。
効いてる。
「そのまま焼けろ」
踏み込む。
距離を詰める。
群れが加速する。
だが——
「もう遅い」
核が、目の前。
「終わりだ」
踏み込み。
全力。
ナイフを振り抜く。
「——当たれ!」
ザシュッ。
手応え。
同時に——
ボッ、と火が走る。
「……入った!」
核に直撃。
燃える。
明らかに“他と違う反応”。
核が暴れる。
その瞬間。
群れ全体が、崩れた。
「来たな」
統制が消える。
動きがバラバラになる。
速度も、連携も、全部落ちる。
「これが正解か」
追撃。
もう一度。
「燃え尽きろ」
斬る。
焼く。
叩き込む。
核が、完全に燃え上がる。
そして——
ピタリ、と。
全てが止まった。
「……終わり?」
静寂。
黒い群れは動かない。
崩れるように、地面へ落ちる。
「マジで?」
数秒待つ。
……反応なし。
「——勝ったわこれ」
その場に座り込む。
息が荒い。
でも——笑う。
「やっと……一勝……」
思わずこぼれる。
「五死一勝だけどな」
でもいい。
勝った。
ちゃんと、“攻略した”。
(核を潰せば終わる)
この世界のルールを、一つ掴んだ。
「デカすぎるだろ、これ」
立ち上がる。
周囲を見渡す。
敵はいない。
静かな森。
——その先。
「……あれ?」
木々の隙間。
遠くに見える。
壁。
煙。
建物。
「……街?」
目を凝らす。
間違いない。
人の文明。
「マジか……」
笑いが漏れる。
「やっとスタート地点かよ」
森を抜ける。
足取りは軽い。
そして——
⸻
門。
石造りの壁。
見張りの人影。
「……異世界だな」
今さら実感が来る。
血まみれのまま立ち止まる。
「……どう入るんだこれ」
所持金ゼロ。
身分証なし。
しかもボロボロ。
「詰んでね?」
そのとき。
「おい、そこのやつ!」
声。
門の上から。
「止まれ!」
「……あー、はい」
両手を上げる。
(まあそうなるよな)
門兵が警戒している。
「何者だ!」
「えーと……遭難者?」
「その格好でか!?」
「いやマジで」
苦笑い。
でも——ここまで来た。
森を抜けて、勝って、辿り着いた。
「……入れてくれない?」
間。
門兵たちが顔を見合わせる。
「……一先ず武器はしまえ!」
「はいはい」
ナイフを腰に仕舞う。
両手を見せる。
門が、ゆっくり開く。
ギィィ、と音を立てて——
「……ようこそ、トータスの街へ」
「……どうも」
一歩、踏み出す。
その瞬間。
(やっと——人の世界だ)
胸の奥で、何かがほどけた。
⸻
そして。
俺の“死にゲー異世界生活”は——
ここからが本番になる。




