第12話「また死んだんだが、今度は見える」
階段を降りた瞬間、空気が変わった。重い。湿ってる。血の匂い。
(……揉め事じゃねえな)
視界の先。倒れてる店主と——三人。目が死んでる。まともじゃない。
「おい、また客かよ」
歯の欠けた男が笑う。
「運ねえな、兄ちゃん」
「……そっちだろ」
三対一。
(普通に考えたら逃げ一択)
舌打ち一つ。
「短時間で終わらせる」
「はぁ?」
踏み込む。一人目に拳——
「遅ぇんだよ」
「……は?」
横から衝撃。見えてない。腹に一撃。息が潰れる。
「ぐっ……!」
よろける。背後。
「終わりだ」
鈍い音。頭。視界が揺れる。
(マズ……)
床。冷たい。遠くで笑い声。
「雑魚じゃねえか」
(……クソ)
動けない。何もできない。
——暗転。
⸻
「——はい、死亡おつかれ」
「軽っ」
目を開ける。白い空間。
「……あんたか」
「いらっしゃい。今回で6回目?」
「来たくて来てねえよ」
「でも来ちゃったね」
「死んだからな」
「うん、知ってる」
ため息。
(ほんと変わんねえな……)
「で?今回もガチャか」
「もちろん」
即答。見慣れた画面が出る。
「説明いるかい?」
「いらん」
「成長したね」
「死んだけどな」
「ノーカンノーカン」
軽い。
「どうだった?さっき」
「最悪」
「だろうね」
「見えなかった」
「うん」
「横からで終わり」
「それそれ」
「楽しそうに言うな」
「事実確認」
——まあいい。
(あれが見えれば)
「引くぞ」
「どうぞ」
押す。回る。光る。止まる。
【新スキル獲得:動体視力強化(D)】
▶ 動体視力を一時的に強化
▶ クールタイム:1分
▶ 使用期限:次の死亡まで
「……お」
「いいの来たね」
「当たり?」
「ドンピシャ。君の負け方に」
「見えてなかったやつな」
「それ」
理解が落ちてくる。速い。クリア。
「……なるほど」
「世界、変わるよ」
「楽しみだな」
「じゃ、戻すね」
「待て」
「ん?」
「やっぱ死なないと引けない?」
「基本はね」
「効率悪いな」
「そういう能力だから」
「もう6回死んでる」
「適応が早い」
「褒めてる?」
「褒めてる」
「……次は死なねえ」
「いいね」
神様が笑う。
「いってらっしゃい」
「軽すぎるだろ」
白が弾ける。
⸻
——戻る。階段の上。同じ音、同じ匂い。
(リスタート)
目を開ける。
(……見える)
空気の流れ。足の向き。全部、少しだけクリア。
降りる。三人。
(同じ配置)
でも——
(今回は違う)
「運ねえな、兄ちゃん」
「……どうかな」
一歩。
来る。拳。
(遅い)
回避。カウンター。一人、沈む。
「は?」
(次)
横。さっき俺を殺したやつ。
(見える)
捻る。紙一重。顎を打ち上げる。二人目、崩れる。
「なっ……!」
(最後)
ナイフ。
(それも見える)
踏み込む。内側。拳。
——終わり。
静寂。
⸻
「……」
息を吐く。
(全然違うな)
さっきまでの“無理”が——
(普通に勝てる)
拳を見る。震えてない。
「悪くない」
小さく笑う。
(あいつ、見てんのかね)
あの神様。
「……まあいいか」
肩を回す。
「とりあえず——」
倒れてる店主を見る。
「現実の方、片付けるか」
《To be continued》




