エピソード長月 王冠のボールペン 秋の新メニュー「完熟イチジクと紅茶のパフェ」のレシピ付き
9月、
翔子とリサの通う学校も、二学期が始まりました。
「リサ!放課後ちょと寄って行きたい所があるんだけど、いいかな?」
「いいけど、どこ行くの?」
「3丁目にある文房具屋さん」
「あれ?そんな所に文房具屋なんてあった?」
「私も最近知ったの!ちょと奥まった所にあるから…今まで気が付かなかったみたい」
「そっか、じゃあ「樹」に行く前に寄ってみよう!」
放課後、翔子とリサは件の文房具屋に立ち寄りました。
「ここだよ」
「ここ!?
…これじゃ気が付かない筈だわ、ツタが絡まってて、看板が見えないじゃん」
リサは半ば呆れ顔です。
「こんにちは」
店に入り、翔子が声を掛けると…
「いらっしゃいませ…おや、この間のお嬢さん」
店の奥から人の良さそうな、店主らしき中年の男性が顔を出しました。
「こんにちは、また来ちゃいました。」
「こんにちはー」
「おやおや、今日はお友達も一緒とは…
狭い店で申し訳ないが、まあゆっくりしていって下さい。」
小さな店ながら品揃えは豊富で、所狭しと沢山の文房具が置いてあります。
特に筆記具が豊富で、5本で200円のリーズナブルなボールペンから、ペリカンの有名な万年筆「スーベレーン」まであります…
「これは、ちょと手が出せないわね…あら?」
翔子は店の一角に、見たこともないペンが飾られているのを見つけました。
そこにあったのは、王冠の装飾にタッセルまで付いた、6本のボールペンでした。
金、銀、紺、黒、赤、白…6色のボールペンは軸の上部が透明なケースになっています。
ケースの中には、紫水晶や金箔、銀箔、星形ビーズや蓄光ビーズなどetc…
それぞれのボールペンによって違う物が入っていました。
店主によると、
「このコーナーは、作家さん達の作品を展示・販売しているコーナーでね…このボールペンは、ある作家さんの作品で、全て1点物なんですよ。」
しかも1本1本に物語があると言うのだ。
読書好きの翔子は、どんな物語なのかと店主に聞きました。
「ハハハ、あまり詳しくはお話しできませんが…」
そう、前置きをして
店主は、6色の王冠のボールペンの話を始めました…
◇金のボールペン
『黄金郷の書記官』
ここは、太陽が沈まない伝説の黄金都市。
すべてが富と知識で満ちた場所。
このボールペンは、黄金郷の正史を記録する唯一の道具でした。
何世紀もの間、選ばれた「書記官」だけがこのペンを握り、王国の出来事を記録するのです。
ペンのガラスボディの中の金箔と紫の石は、記録された知識の結晶。
金色に輝くタッセルには、過去の書記官たちの魂が宿っており、正しい記録を導くために揺れるのです。
ある日、若い書記官が、未来を予言する奇妙なインクを見つけます。
そのインクで書いたことは現実になるため、彼は王国の運命を左右する重大な選択を迫られる事になります。
果たして、彼はどんな選択をし、何を書くのでしょうか…
◇銀のボールペン
『星の記憶』
ここは氷に覆われた惑星。
住人は、空に輝く「星の記憶」を読み解くことで未来を知ります。
このボールペンは、星の運行を記録し、そのメッセージを解読するための道具なのです。
主人公は、失われた古代の星図を探し、旅をする冒険者。
彼は凍てつくような旅の中で、見つけた星の欠片や、星からのメッセージを、このペンで記録していました。
銀のタッセルは、星の光を反射して、暗闇でも書くことができるように光ります。
ある夜、彼はこのペンで描いた星図の中に、隠されたメッセージを見つけます。
それは、氷の惑星を溶かすことができる伝説の太陽の位置を示していました。
彼は、氷を溶かし、凍てつく寒さから皆を解放できるのでしょうか…
◇紺のボールペン
『深海の契約』
海底に広がる神秘的な王国。
人魚や不思議な生物が暮らしています。
このボールペンは、深海の住人たちが交わす重要な契約を記すための道具でした。
主人公は、人魚の王から「海の平和を守る」という重要な任務を授かります。
彼は、一緒に任務を務める海の生物たちと契約を交わします。
このペンで契約書にサインをすると、その契約は誰にも破る事は出来なくなるのです。
紺色のタッセルは、深海の波に揺られても千切れず、契約の誠実さを証明しています。
ある日、海の平和を脅かす強大な魔物が現れます。
彼はこのペンを使って、魔物との契約を試みます。
それは、自らの命を懸けた、最後の契約でした。
果たして彼は、海の平和を守る事ができたのでしょうか…
◇黒のボールペン
『闇の守護者』
影と闇に支配された世界。
光は、わずかに残った人々の心の中にだけ存在します。
このボールペンは、闇の力を操り、人々の心に残った光を守るための道具でした。
主人公は、闇の世界の「守護者」です。
彼は、人々の心に光を灯すため、このペンで闇の力を封じ込める、魔法陣を描きます。
黒のタッセルは、闇の中で揺らめき、主人公に勇気を与えます。
ある日、彼は闇の世界を支配する魔王と対峙します。
彼はこのペンを使って、魔王を封じ込め、世界に光を取り戻すことができるのでしょうか…
◇赤のボールペン
『情熱の誓い』
剣と魔法の世界。
人々は、情熱と誓いを胸に、それぞれの道を切り開いていきます。
このボールペンは、人々が心に秘めた誓いを刻むための道具です。
主人公は、剣士になることを夢見て、故郷を旅立ちます。
このペンを使うと、彼が旅の中で出会った人々や、自らの誓いを記録する度に、心に刻み込まれます。
赤のタッセルは、主人公の情熱に燃え、彼を突き動かします。
ある日、彼は自らの誓いを果たすため、強大な敵と対峙します。
彼はこのペンを使って、敵に勝利し、誓いを果たすことができるのでしょうか…
◇白のボールペン
『純真な願い』
ここは、天使と妖精が暮らしている、光と夢の世界。
人々は、純真な願いを胸に、幸せな日々を送っています。
このボールペンは、人々が心に秘めた願いを天に届けるための道具です。
主人公は、妖精の国で幸せに暮らしています。
彼は、天に人々の願いを届ける係りでした。
その人々の願いは、このペンを使って記録しています。
白のタッセルは、主人公の願いに寄り添い、彼に幸せを与えます。
ある日のこと、
彼は自らの願いを果たすため、このペンを使ってしまいました。
ところが、それを天使に見られてしまいます。
自分の願いを記録するのはもちろん禁止です。彼は天使と対峙します。
彼は、天に願いを届け、叶えることができるのでしょうか…
「さて…どれをお求めですか、お嬢さん?」
話を終えた店主が翔子に聞きました。
「う〜ん、どうしよう…」
「えっ!?翔子、買うつもり?…1本2000円もするよ?」
「だって…物語の続きが気になって…」
「ち、ちょと翔子!ほら「樹」のバイトの時間に間に合わなくなるから、また今度にしよう!」
「え〜?」
リサが翔子の手を引っ張って店を出る。
「またどうぞー」
と、文房具屋の店主の声が背に、リサは翔子を喫茶店「樹」に連れて帰りました。
「急に、どうしたのよリサ?」
「だって!あのままいたら、翔子6本全部買っちゃいそうなんだもん!」
「そ、そんな事は、しないわよ…」
「…翔子、目が泳いでるよ」
「う…(汗)」
そんな二人にシャロンが声をかけます。
「二人とも、お帰りなさい。」
「あ、シャロンさん、聞いて〜」
リサは、さっきまでいた文房具屋での出来事をシャロンに話しました。
「…3丁目の文房具屋さん?」
「そう!翔子ったら今にも買っちゃいそうな勢いで!」
「そんな事ないでしょ!実際買ってないし…」
「あたしが止めたからでしょー」
「いつもとは反対ね(笑)」
とシャロンは二人を微笑ましく見守りながら、奥から小皿を運んできました。
「はい、お疲れ様。もう9月だし、秋の新作の『完熟イチジクと紅茶のパフェ』の試作を作ってみたの。二人とも食べてみて?」
「わぁ、すごい!グラスの中でイチジクが宝石みたいに光ってる!」
翔子が目を輝かせると、リサがクスッと笑います。
「ほらね、やっぱり翔子、さっきのボールペンのこと引きずってるじゃない」
「も、もう!関係ないでしょ!……あ、でもこの濃い紫、金のボールペンの紫水晶にちょっと似てるかも……」
「ほら見ろ〜!」
和やかな笑い声が「樹」の店内に広がります。
そんな中、シャロンはふと窓の外……3丁目の方向を静かに見つめていました。
「……それにしても、3丁目に文房具屋さんなんてあったかしら?」
ちょっと不思議な文房具屋さんと、6本の王冠のボールペンのお話しでした。
〜〜〜『完熟イチジクと紅茶のパフェ』レシピ〜〜〜
【材料】(2人分)
・完熟イチジク:2個
・紅茶※アールグレイがおすすめ:ティーバッグ2個
・お湯:200ml
・グラニュー糖:大さじ1
・ゼラチンパウダー:4g
・生クリーム:100ml
・グラニュー糖(生クリーム用):大さじ1/2
・市販のバニラアイス(または紅茶アイス):2スクープ
・砕いたビスケットまたはシリアル:適量
・(お好みで)ミントの葉、ピスタチオ、シナモンパウダー:適量
【作り方】
1.紅茶ゼリーを作る: ボウルにお湯を注ぎ、紅茶ティーバッグを入れ、しっかりと蒸らす。ティーバッグを除き、グラニュー糖とゼラチンパウダーを加えてよく混ぜ、溶かす。別の容器に流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める。
2.イチジクを準備する: イチジク1個は飾り用に縦4等分に切る。もう1個はグラスの中に入れる用に、小さめの乱切りにする。
3.クリームを泡立てる: 生クリームにグラニュー糖を加え、7分立て(ツノが少しおじぎする程度)に泡立てる。
4.パフェを組み立てる:
・グラスの底に砕いたビスケットを入れる。
・その上に、冷え固まった紅茶ゼリーをスプーンでクラッシュして入れる。
・乱切りのイチジクを入れ、バニラアイスをのせる。
・泡立てた生クリームを絞り、飾り用のイチジクを美しく飾る。
・最後に、お好みでピスタチオ、ミント、シナモンパウダーをトッピングして完成。
【シャロンのアドバイス】
「イチジクの甘さと紅茶の香りが、お互いを引き立て合う秋の自信作です。
ゼリーはあえて少しクラッシュすることで、口当たりを良くし、グラスの中で宝石のように光らせることができます。
金のボールペンの紫水晶を思い出して食べてみてください(笑)」
喫茶店「樹」の秋の新メニュー『完熟イチジクと紅茶のパフェ』です。
まだまだ暑いですが、このパフェで秋を感じて頂ければいいな♪
「…それで虹川君、文化祭の演目の台本なんだが…」
「あ、佐嶋部長、ちょと待ってて下さい。」
きい…
蔦の絡まる3丁目の文房具屋、
古い紙とインクの匂いのするその店に、
珍しくお客がきました。
「おや、いらっしゃい」
「あの…」
「はい、何でしょう?」
そのお客は、近くの高校の制服を着た女生徒
指にはペンだこがあって、店主には、この人物は物書きだということが分かった。
「あの王冠の…赤のボールペンを下さい。」
「赤がお気に召しましたか、
このボールペンには、物語がありましてね…」
エピソード長月 王冠のボールペン おしまい
あとがき
『シャロンの喫茶店』エピソード長月 王冠のボールペン をお読みいただき、ありがとうございました。
新学期が始まり、少しずつ秋の気配を感じる9月。
今回は、路地裏にひっそりと佇む不思議な文房具屋さんと、6色の王冠のボールペンを巡るお話をお届けしました。
店主の語る6つの短い物語は、それぞれのボールペンの世界観を表したものです。
翔子が思わず全部欲しくなってしまう気持ちも分かりますよね(笑)。
リサの冷静なツッコミと、相変わらず仲の良いふたりの掛け合いを楽しんでいただけていれば幸いです。
そしてラストシーン、赤のボールペンを手にしたのは、春の演劇祭でリサをジュリエット役に抜擢した、演劇部の佐嶋部長と虹川副部長でした。
自分の手で物語を生み出す「物書き」の手に渡った『情熱の誓い』のペン。これからあのペンによってどんな物語が紡がれていくのか、ぜひ想像を膨らませてみてください。
作中に登場したシャロンさんの秋の新メニュー『完熟イチジクと紅茶のパフェ』は、ご家庭でも作りやすい再現レシピとなっております。イチジクの甘みとアールグレイの香りが織りなす贅沢な秋の味覚を、ぜひお試しください。
朝夕は涼しい風が吹く季節となりました。温かい紅茶や美味しいパフェをお供に、皆様が心地よい秋のひとときを過ごせますように。
それでは、また来月のエピソードでお会いしましょう。
…因みにこのボールペン、メルカリに出品してます。
ご興味のある方、探してみてね。




