エピソード文月 八坂神社の例大祭 美味しいフルーツアイスキャンデーのレシピ付き
「翔子ちゃん、リサちゃん、準備は良い?」
「はーいシャロンさん」「いいよ〜」
「せ〜のぉ!」
三人は露店販売用のテントを設営していました。
今日は喫茶店「樹」がある商店街近くの八坂神社の例大祭。
お祭りには毎年沢山の人が集まるので、商店街でも各お店が露店を出します。
喫茶店「樹」も例外ではありません。
「アイスコーヒーにアイスティーに…フルーツアイスキャンデーっと」
「…喫茶店らしいメニューだとは思うけど、お祭りには『かき氷』の方が良くない?シャロンさん。」
リサはシャロンが用意した果物が沢山入ったアイスキャンデーを見ながらそう言った。
「最初は私も『かき氷』を出そうかと思ったんだけど…」
と翔子の方を見るシャロン
「『かき氷』は他のお店でも出してるし、それに両手が塞がっちゃうでしょ?『かき氷』って。」
翔子は片手で食べられるアイスキャンデーを販売するようシャロンに勧めたのだ。
「確かに『かき氷』は両手が塞がっちゃうけど…でも何で両手が塞がるのがダメなの?」
「だってほら!」
翔子は片手にアイスキャンデー、そしてもう片方の手で飲み物のカップを持った。
「あ、なるほど!お客さんに両方買ってもらう作戦ね!」
「そういう事」
相変わらず仕事熱心な軍師さんです。
「でもね、このフルーツアイスキャンデー特別なのよ?」
「そうなの?」
「あかりさんの事、覚えてる?」
「ああ、元ライバル店員で今は栃木のいちご農家の美園あかりさんね!」
「そうそう」
「あかりさんから、沢山の果物と無農薬果汁100%の果物ジュースを送ってもらって作った「樹」特製アイスキャンデーなのよ!」
「相変わらず元気そうだねー、あかりさん」
口ではそう言いながらも、リサは(手広くやってんなー……)と内心でツッコミを入れていた。
そして露店の準備が整ったところで
「今日はお祭りらしく浴衣姿で販売しましょう」
シャロンの提案で、シャロン、翔子、リサの三人が浴衣に着替えます。
その間、露店を任されているのはジャンとリサの父の誠次。
「…最近どうだ…」
「…何がデスカ?」
「…いや、店の景気とか…」
「店のケーキは、オイシイですヨ?」
「いやそう言う意味じゃ無く」
「冗談デスヨ♪」
「お前な(# ゜Д゜)」
と、相変わらずなオヤジ二人組です。
「お待たせ〜」
「店番ありがとうございます」
「パパ!どう?リサの浴衣姿!」
「おお…馬子にも衣装だな」
「…パパ」「叔父様(汗)」「それは…ちょっと」
リサに睨まれる誠次
「スマン…失言でした(汗)」
「OH!ミナサンよく似合ってマスヨ♪サァ看板娘サン達!お客さんが待ってますヨ」
ジャンがフォローして三人が露店に立ちます。
するとすぐにお客さんから注文が…
「アイスキャンデーは1本250円でーす」
「アイスコーヒーとアイスティーは300円です。」
「アイスキャンデーと飲み物のセットだと500円ですよー、セットですね!はいありがとうございまーす!」
もう夕方とはいえ、今日は午前中からよく晴れていたので、冷たい飲み物も、フルーツアイスキャンデーも飛ぶように売れていきます。
「わ〜!このフルーツアイスキャンデー美味しいよ!」
「美味いな、このアイスコーヒー」
「このアイスティーも美味しい!」
お客さんにも大好評です。
「お父さん!アイスコーヒーの追加をお願い!」
「アイスティーもです〜」
「アイスキャンデーは追加ないですよね?」
「樹」の厨房では、オヤジ二人組が慌ただしくアイスコーヒーとアイスティーを作っています。
「ハイハイ(汗)追加のアイスコーヒーとアイスティーですヨ!」
「こりゃあ追加分もすぐになくなっちまうなあ」
そして、思った以上に早く商品が売り切れてしまいました。
「すみませ~ん、アイスコーヒーとアイスティー今作ってますので〜」
「追加分ができたらまた販売しま〜す」
「フルーツアイスキャンデーは売り切れちゃったんだよ〜、ごめんね〜」
追加分のアイスコーヒーとアイスティーができるまで一旦販売を中断する事になりました。
「それまで、八坂神社にお参りしておいで」
「ソウデスネー、三人で神様にお礼を言ってきてクダサイ」
と言うことで、シャロン、翔子、リサは八坂神社にお参りする事にしました。
参道には露店が立ち並び、親子連れやカップル、沢山の子供達で賑わっています。
お囃子の音も軽やかに、皆笑顔でとても楽しそうにお祭りを楽しんでいます。
「あら、総代長さん」
「おやシャロンさん、お疲れ様です。」
「いえ総代さん達こそご苦労様です。」
神社の境内に、神社の氏子を取り纏める総代と呼ばれる各地区の代表が集まっていました。
総代長はその名の通り総代たちの長です。
総代たちは祭りの間中、神社に詰めていて交通整理やらイベントの進行などを行っています。
「リサは八坂のお祭りは初めてじゃない?」
「うん、でもここ八幡神社でしょ?八坂神社じゃないよね…」
「境内にある末社が八坂神社ですよ。」
総代長が八坂神社について教えてくれました。
「あちこちにある八坂神社は京都の八坂神社から勧請された末社(八坂神社)なんですよ。」
「京都のって祇園祭の?」
「そうです、祇園祭は7月に開催されますよね」
「ああ、だから八坂神社のお祭りは7月なんですね。」
「ええ、でも昔の人々にとって、7月の八坂神社のお祭りは、単なる楽しいイベントではなかったんですよ。」
「え!そうなんですか?」
「昔の日本では夏場に亡くなる人が多かったんです。
だから『この夏を病気にならずに生き延びるための切実な祈り』だったからこそ、1年の中で最も重要な「例大祭」としてこの時期に執り行われるようになったそうです。」
「…『生き延びるための祈り』か…ホントに切実だったんだ」
翔子は言葉の意味の重さを感じていた。
「医療が発達していない時代の昔の日本では、人々は病気を「目に見えない怨霊や、疫神の仕業」だと考えていました。
そのため、本格的な夏を迎えるこの時期に、神様の力を借りて病魔を追い払う必要があったのでしょう…」
「病魔を追っ払う八坂神社の神様って、どんな神様なんだろう?」
リサがそう呟くと、総代長は
「八坂神社に祀られている主祭神の素戔嗚尊、および神仏習合時代の牛頭天王は、非常に強力な力を持つ「疫病を司る神・防ぐ神」とされています。
「疫病が流行る時期(7月)に、疫病を防ぐ神様(八坂の神)を熱狂的にお祀りして、街から病気を追い払ってもらう」という意味から、7月に例大祭が集中しているんですよ。」
と、教えてくれた。
「さすが総代長さん、お詳しいんですね。」
「いえいえ、先代からの受け売りです。」
総代長はそう言って笑います。
「今ではもう、そんな事知らない人ばかりでしょうね…まぁ、お祭りを楽しんでもらえば十分です。」
「…でも、今も昔も、大切な人の健康を祈る気持ちは同じだと思います。」
シャロンは、遠くを見る様にそう言いました。
「シャロンさん…そうですね。」
翔子は、シャロンはきっと、病気で亡くなったお母さんを…樹さんを思い出しているのだろうと思いました。
「私も、お祭りにそんな意味があったなんて知らなかった…けど、機会があったら皆に教えてあげようと思うよ。」
リサもちょっと神妙な面持ちになっています。
そして三人は、境内にある小さな八坂神社のお社に手を合わせました。
「神様、八坂の神様…どうか皆の健康を守って下さい。」
そう願うシャロンなのでした…
〜美味しいフルーツアイスキャンデーのレシピ〜
フルーツジュースとたっぷりのフルーツを使って作ったシンプルなフルーツアイスバーです。
ジュースは100%のものを使ってヘルシーに仕上げます。
お好みのフルーツとジュースを使っていろんなアレンジが楽しめる、あっさりとしたアイスバーです。
【材料】(アイスバー型 約4〜5本分)
お好みの100%フルーツジュース:300ml
粉ゼラチン:5g(大さじ2の水でふやかしておく)
お好みのフルーツ(いちご、キウイ、オレンジ、ブルーベリーなど):適量
①木の棒はそのまま使うと浮いてくるので水で湿らせておく。
型をよく冷やしておく。
②フルーツをスライスしたり、ダイス状にカットしておく。
スライスしたものは型の側面に貼り付けると見栄えが良くなります。
③大さじ2の水でふやかしたゼラチンを500wで20秒程度レンジに掛けて溶かす。
④ジュースをボウルに入れ、溶かしたゼラチンを加えて混ぜる。ボウルの底を氷水に当ててよく冷やす。
⑤4を少量型に入れ、スライスしたフルーツを適量側面に貼り付けます。
ダイスカットしたフルーツを少量いれる。
さらに4を加え、フルーツと交互に2.3回繰り返して入れます。
⑥型ごと2.3回台に落して型の中の空気を抜き、蓋をし、棒をさして冷凍庫で6~8時間程度冷やし固めます。
⑦アイスが固まったら、型をホルダーからはずし、水につけてから手で少し温めて棒を引っ張って型から取り出します。
喫茶店「樹」特製フルーツアイスキャンデーです。
栃木の農家さんから送って頂いたとっても美味しい果物を使ってます。
エピソード文月 八坂神社の例大祭 終わり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の「エピソード文月」では、夏の風物詩であるお祭りを舞台に、喫茶店「樹」の賑やかな一日を描きました。
浴衣姿のシャロン、翔子、リサの三人娘の華やかさや、相変わらずなジャンと誠次のオヤジコンビの掛け合いを楽しんでいただけていれば幸いです。
また、今回は栃木で頑張っているあかりさんも、美味しいフルーツという形で間接的に登場してもらいました。
作中で総代長が語った「八坂神社」や「祇園祭」の由来は、実は私自身、調べていく中でその切実な歴史に深く心を動かされた部分でもあります。
現代では楽しいイベントであるお祭りも、昔の人々にとっては「目に見えない病魔から大切な人を守るための、命がけの祈り」だったのですね。
母・樹さんを想うシャロンの祈りと、現代を生きる私たちの健康を願う気持ちを重ね合わせ、少しノスタルジックで温かい読後感を目指しました。
巻末には、あかりさんのフルーツを使った「樹特製アイスキャンデー」のレシピも掲載しています。ゼラチンを少し加えることで、おうちでも簡単にシャリッと美味しいアイスバーが作れますので、ぜひ皆さんも夏の暑い日に試してみてくださいね!
それでは、また来月のお話でお会いしましょう。




