06 姫騎士さん、オークリーダーさんにツッコまれピンチ
「『くっ……! 殺せ……!』とお前はたびたび口にするが、なんなのだ?」
連れて来られたオークリーダーの家で、先日と同じように姫騎士が座った途端、問われた。
それに彼女は即答することなく、しばし記憶を探る。
(『たびたび』と言われるほど言ったか?)
自覚はないらしい。「くっ殺」はもはやアイデンティティー、彼女にとって本能レベルで刷り込まれているのかもしれない。
まぁ、頻度はどうでもいい。口にした記憶のある言葉なのだから。
「それがどうかしたか?」
「貴様は他人に殺しを強要するのか」
きっと彼にとっては、大した意識もなく発した疑問なのだろう。
だが苛立ちや怒りといった成分がわずか含まれただけで、これまでオークに対して抱いたものとは違う、本能的な恐怖心をあぶり出した。
彼女が身を固くしていると、オークリーダーは小さく息を吐き、ようやく場の空気がゆるんだ。
「昨夜のことは聞いた。だからあそこには置いてないと思ってな」
急に話が変わった上に、主語が抜けているので、とっさに彼女の理解が及ばなかった。
しかししばらく考えて、牢から出されたことだと見当つけた。
(やはりアレか? 昨夜のことというのは、襲われかけたことか? あれは私の勘違いなどではなく、本当のことだから……)
だが、どう対処しようというのか。牢から出されたからと言って、自由になったとは思えない。
「……一体、私はどうなるのだ?」
「ここで寝ろ」
オークリーダーは言葉が少ない。だから真意の半分も伝われない。処遇そのものを質問したつもりだが、回答は当面のものでしかない。
「それは……やはり、その……」
だから彼女は怯みながら虚勢を張ろうと、失敗して言いよどむ。思考はやっぱりエロ方面から離れられなかった。
「ん? なんだ?」
「いや……私をここに寝泊りさせる理由だ……どうやら家族はいないようだが……」
気配や、部屋の片隅にある寝具の数からして、この家に住んでいるのはオークリーダーではないかと見当つけると、彼は顔をしかめた。
「……私を手篭めにしようと?」
触れてはならない部分に触れてしまったことを察しながらも、肝心なことは聞いていない。彼女が言葉を続けると、オークリーダーは更に顔をしかめた。
「そもそも俺たちにも選ぶ権利があると思うのだが? 俺たちオークから見れば、人間なんてポッキリ折れそうで、ガリガリのチビだぞ? 中にはそういうのがいいと思うヤツもいるかもしれんが、そんなのに種付けしたいなどと思うわけなかろう?」
「そう、なのか……?」
オークリーダーの直接的な表現に、思わず頬を赤らみ、言葉に窮す。そうでなくても他種族の感性など、想像のしようがない。
「ならば問う。お前、やせ細った子供相手に、契りを結びたいと思うのか?」
「すみませんでした」
ショタコンでもかなり上級犯罪行為となると思われる具体例を挙げられて、姫騎士は平伏して謝罪した。




