05 姫騎士さん、オークの集落で見世物状態でピンチ
「くっ……! 殺せ……」
オークリーダーに牢から連れ出され、姫騎士は思わずうめいた。
日が昇り、既に集落の営みは始まっている。だから集落の広場から見るだけでも、多くのオークがいた。
人間からすれば、原始的ながらも巨大な斧や棍棒、槍を持つ彼らは口元を歪める
「村長ァ、それが人間ですかい?」
「そんなの、どうする気でやすかい」
女だてらに冒険者などやっていれば、同業者の男に粗野な言葉をかけられることも珍しくはない。多くは酒に酔っての勢いで、適当にいなしても問題ない。
だがたまに、それでは済まない場合もある。犯罪者スレスレか既に犯罪を犯しているような輩から声をかけられれば、事を荒立てざるをえない場合もある。
彼女は自分の容姿が、男の目を惹くことを自覚しているために、自己防衛手段もそれなりに鍛えている。
しかし今は、同様の切り抜け方ができるとは思えない。狩猟道具とはいえ武装しているオークの集団に囲まれているのだから。
対し彼女は、拘束されていないとはいえ、武器はない。抵抗しても無駄であろうと、当然のように結論が出る。
「まさか村長ぁ、人間を嫁にしようって、子供を作ろうってつもりなんですかい?」
「そんなわけないだろう」
粗野なオークに、オークリーダーは面倒くさそうに答える。
「だったらよ、オレが孕ませてやるぜ」
するとオークの一体が、無造作に手を伸ばしてきた。
(くっ……やはりか! しかもオークたちだけとはいえ、衆目の中で犯されるなど……! えぇい! やはり汚されるぐらいならば殺せ!)
思わず体を固くしたが、意味はない。彼女の筋肉質だが細い手を取り、大きく分厚い手で包みこむように握られた。
(………………ん?)
それだけ。他にはなかった。唇を吸われることも、下半身をまさぐられることも、押し倒されることもない。ぬくもりを感じるような時間を置いて、彼女の覚悟が馬鹿馬鹿しいほどに、オークはあっさりと手を離した。
「へっへっへっ……人間のメスぅ、これでお前は俺の子供を孕んだぜ」
「コウノトリさんが運んでくるんだよな!」
粗野な口調でオークたちは告げ、ゲラゲラと笑いながら森の中へ入っていた。
冗談めかしたような言い方だが、声にも、それを語る瞳にも、冗談は全く感じられなかった。どうやら本気でそう信じているらしい。
「……おい」
理解が浸透した姫騎士は、オークリーダーにゆっくり振り返る。
彼女とて似たようなことを考えていた時代はあった。父と母がキスして同じ床で寝ていれば、そのうち精霊が赤子を運んで来るのだと。しかし子を産める体になった証が来た時に、教育係から真実を教えられた。
「オークの性教育はどうなってるんだ!?」
「余計なことを言うな。アイツらはまだ成人の儀を行っていないのだから」
人間の目には区別できないが、純真さを失っていない、生意気がカッコイイとでも思っている、お子様オークの集団だったらしい。




