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スペースヒーロー~宇宙警察に強引に地球を守るヒーローにされたけど変質者に間違えられました~  作者: よしぞう


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第5話 初めての変身・・・・そして

4月11日 1600


 宇宙警察によって悪質な勧誘をされ、強引にスペーススーツを着て宇宙犯罪組織と戦うことになった西條 亘。


 そのような悲惨な境遇であっても、学校には通わなければならない。


「腹減った」


 そして、生きている以上、お腹も減る。


 今日一日、真面目に授業を受けてはいたが、正直言って、何を教わったのかまったく記憶に残っていない。


 ひたすら昨日のことと、これからのことを考えていた。


 そして、いくら考えても何の結論も出るはずがない。


 地球を救うヒーローとして活躍をすると言えば格好良いが、対する悪の組織は特殊詐欺のようなことしかしないようだし。


 そもそも、あの凶悪保安官と金髪助手が言っていることが、どこまで本当かも分からない。


 いや、正直言って、あいつらの方が犯罪者っぽいとすら思えてしまう。


 どう考えても、街中で怪人が暴れて、そこにヒーローが颯爽と登場し、必殺技で倒すなどという定番ストーリーになりそうにない。


「何となく、グズグズな展開になるか、超過酷になるかのどちらかだよなぁ」


 そう言いつつ、学生服のポケットに入れているマゼラフィギュアを、服の上から軽く触れる。


 あの超ダサいスペーススーツの転送装置であると同時に、思念通信装置でもある、宇宙人のオーバーテクノロジー。


 しかし、見た目は思春期の男子高校生が持ち歩くには危険すぎる代物だ。


 間違っても人前で落としたりしたら、人間関係が大ピンチに陥りかねない。


 特に亘のような陰キャらにとって、それは致命傷と同じだ。


 ハァ、と溜息をつくと、ガクッと肩を落とす。





 気付くと、家の近所のコンビニの前にいた。


 隣には公園があり、無邪気に遊ぶ子供たちの声が聞こえてくる。


 コンビニの駐車場には、配送トラックが2台と軽乗用車が数台停まっており、ドライバーたちが店内で買い物をしていた。


 亘はせめて空腹だけでも緩和しようと考え、店内に入っていった。


 すると――。


「あれ、西條君」


「な、南條さん?!」


 そこには、クラスメイトにして、亘の片思いの相手でもある、南條 由利亜がいた。


 彼女も買い物をしていたらしく、手にサンドウィッチとミルクティーのペットボトルを持っている。


 な、な、な、何でここに南條さんが?! 確か家は隣町のはずだけど?!


 それは本人から教えてもらった情報ではなく、彼女が友達と話していたのを偶然聞いて知ったのだが。


「西條君の家って、この近く?」


 おおっ!! こんなモブキャラの俺にも、笑顔で話しかけてくれるなんて……。


 と、心の中で感動しつつ、何とか会話を繋げようとする。


「うん、この近くだけど、南條さんはどうしてここに?」


「私は、この先のマンションにいる友達のところに行っていたの」


「そうなんだ」


 そう言いつつ、さりげなく商品棚を見るふりをする。


「そう言えば、西條君とは1年生の時からクラスが一緒だったけど、こんな風に話すのは初めてだね」


 ああっ、もう死んでもいい。


 彼女のお願いだったら、あの超ダサい真っ赤なスペーススーツでも何でも喜んで着るのに。


「じゃあ、また明日学校でね」


「うん、また明日」


 そう言うと、南條 由利亜が小さく手を振ってコンビニから出ていった。


 その後ろ姿を見送ってから、好物のポテチとコーラを購入し、現実世界よりまともな特撮ヒーローのBlu-rayでも観て、心を癒そうと考える。





 代金を支払うと、店の外へと出た。


 そして、ふと隣の公園に目を向けると、公園で無邪気に遊ぶ子供たちの姿が見える。


 男の子たちが遊具の周囲でヒーローごっこをし、女の子たちが砂場でおままごとをして遊んでいた。


 俺も、昔はよくああやって遊んでいたなぁ、と思い出す。


 亘自身はテレビゲームやカードゲームよりも、外で走り回る方が好きだった。


 ただ、最初の頃は一緒に遊んでいた友人たちが、一人また一人と、家の中で遊ぶようになり、彼もそれに釣られるように外で遊ばなくなってしまった。


 まあ、一人で、公園でヒーローごっこなどしていたら、それはそれでかなり痛い子供だが。


「ん?」


 その時、公園の入り口から一人の大人が子供たちに近付いて行くのが見えた。


 気温はかなり暖かいというのに、大柄な身体に厚手のコートを着込み、サングラスとマスクで顔を隠し、ボサボサの長い髪を無造作に頭の後ろで結んでいる。


 人を外見で判断してはいけないと分かっているが、あまりに怪しい。


 その男は、砂場で遊ぶ女の子たちに近付いて行くと、


「ねぇねぇ、君たち、ちょっと良いかな?」


 そう声をかけた。


「な、なんてあからさまな不審者なんだ?!」


 まさに事件である。


 そして、喧嘩が強い弱い以前に、したことがない亘では、あの不審者から子供たちを守ることなど出来ない。


「相手は、宇宙人じゃないけど緊急事態だ」


 まあ、警察に通報をするという方法もあったのだが、亘は子供たちを自分で守らなければならないと考えた。


 亘は足元に買ったばかりのポテチとコーラを落とすと、店内に駆け戻っていく。


 スペーススーツを装着すれば、変質者の一人や二人、簡単に倒せるだろうが、このスーツには大きな欠陥があった。


 それは、顔が丸見えということだ。


 買い物を終えて店を出た男子高校生が、血相を変えて店内に駆け戻ってきたので、レジにいた男性アルバイトが驚く。


 そんな彼を無視して、亘は商品棚の間を駆け抜けつつ、マスクとサングラスを手に取ると、レジカウンターの上に叩きつけるように置いた。


 そして代金を払うと、そのまま駆け出していく。


 初めは、コンビニのトイレでスペーススーツを装着しようかと考えたが、それだと変身後に店内を通り抜けなければならず、買い物客やアルバイト店員に目撃されるし、防犯カメラにもバッチリと記録が残ってしまう。


 それを避けるためには、店外で変身(スペーススーツを装着)するしかない。


 公園の方を見ると、先ほどの不審者が女の子たちに、


「ねぇ、この辺りに〇〇通りってあるはずだけど、どっちかな?」


 と、ニヤニヤ笑いつつ話しかけている。


 駄目だ、急がなければ!!


 周囲を見回すが、身を隠せそうな場所はない。


「スーツの転送って言うぐらいだから、光るだろうし……」


 まあ、確かにそれがお約束だ。


 ふと目を向けると、コンビニの駐車場には配送トラックが2台並んで停まっている。


 あの間なら目立たず、さらに店の防犯カメラにも映らないはずだ。


「迷ってる場合じゃない」


 亘はその2台の間に駆け込むと、


「こうなったら自棄だ!!」


 そう叫びつつ、ポケットに右手を入れ、マゼラフィギュアを取り出すと頭上に掲げ、力一杯ブンブンと振り回す。


 すると、頭の中に、


『スペーススーツ、転送信号受信』


 という、いかにも機械の合成音のような声が聞こえた。


 そして、直後に周囲の空気が振動しだす。


『スペーススーツ転送座標固定、スーツ転送』


 そう聞こえると、まるで静電気に包まれたように、肌がピリピリしだした。


 亘はスペーススーツを装着しやすいように、憧れた特撮ヒーローたちのように空を見上げ、仁王立ちになる。


 その彼の姿が眩い光に包まれた。


 そして、その光が消えた時……制服姿のままだった。


「あ、あれ? 失敗?」


 そう呟きつつ、自分の体を見下ろすと、その足元に整然と畳まれた赤い全身タイツと、その上に白い手袋、ブーツ、ヘルメットが並べて置かれていた。


「本当に転送するだけかよ!!」


 そう叫びつつ、大慌てでスーツを両手で持って広げ、背中のチャックを開ける。


 そして、全てを身に着けると、最後にコンビニで買ったサングラスとマスクを着けてヘルメットを被った。


 その頃、公園では……。


「えっと、それなら、公園の前の道を真っすぐ行ったらすぐだよ」


 女の子がそう説明をすると、


「そうか、ありがとう。助かったよ」


 見た目は怪しい男が、そう礼を言って女の子たちに頭を下げる。


「バイバイ」


 最後にそう言って手を振ると、公園の出口を目指して歩き出した。


 どうやら、彼は普通に道を聞いていただけのようだ。


 女の子たちも再び、おままごとを再開しようとする。


 その時、真紅の全身タイツに、胸に大きなVの文字、白い手袋に白いブーツ、さらに白いヘルメット。


 そして、顔をサングラスとマスクで隠した男が、物凄い勢いで公園に駆け込んできた。


 もちろんそれは、スペーススーツを装着した西條 亘だ。


「うわぁああああ!! 変態だぁああああ!!」


 コート姿の男がそう叫び、男の子たちが逃げ惑う。


「ええぇん、怖いよぉ!!」


 泣き叫ぶ女の子たち。


 さっきまで公園で一番怪しかった男が、亘の前に立ちはだかる。


「皆、逃げるんだ!! おじさんが時間を稼いでいる間に!!」


 それを聞いて、子供たちが悲鳴をあげたり泣きながら駆け出す。


「えっ、なにこれ?」


 予想と正反対の状況に、亘が立ち尽くす。


 彼が変質者だと思っていた男性が、


「お前の相手は俺だ! 子供たちには指一本触れさせないぞ、この変質者め!!」


 そう怒鳴りつつ、身構えている。


 何とも言えない沈黙。


 あ、あれ? これじゃあ、まるで俺の方が……。


 そう考えつつ、自分の姿を思い出す。


 あ~っ、確かにこれは、アレだなと、納得をした。


 亘はゆっくりと回れ右をすると、走って逃げ出した。


 そして、この呪われたスーツを脱ぐ場所を探しつつ公園の外に出ると、そこで今、世界で一番会いたくない人と鉢合わせする。


「キャッ!!」


 と、小さく悲鳴を上げて立ち尽くしている、南條 由利亜。


 ゲゲッ!! さ、最悪だ!!


 思わず、驚かせてゴメン、と言いそうになるのを必死に我慢する。


「へ、変態!!」


 さっきコンビニの店内で、笑顔で会話をしていた彼女が、恐怖に引きつった表情でそう叫んだ。


 さらにスマホを取り出して、


「も、もしもし、警察ですか?! 変質者です、変質者がいます!!」


 と警察に通報をしだした。


 ち、違うんだ!! お、俺は……。


 今何を言っても、絶対に信じてもらえない自信がある。


 チクショオオオ!!


 亘に出来ることは、泣きながらその場から逃げることだけだった。





 その夜、地域の防犯サイトに、


《緊急情報》


 〇〇町の公園において、全身赤いタイツ姿の変質者が出没。


 地域の皆さんは注意をするとともに、目撃情報がある人は警察の捜査に協力をお願いします。


 という情報がアップされた。

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