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スペースヒーロー~宇宙警察に強引に地球を守るヒーローにされたけど変質者に間違えられました~  作者: よしぞう


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18/27

第18話 ヒーローになるチャンス!!

4月17日 1200


 半島の北側にある某国の最高指導者官邸。その地下には、豪華な地下室があった。


 その快適で安全な地下で、最高指導者はソファーに腰掛け、コーラを片手に、半島の南側の国のアイドルグループのミュージックビデオを鑑賞している。


「素晴らしい。我が国で同じような事をしても、どうしても固くなってセクシーさが足りないからな」


 彼がそう言った時、サイドテーブルの上に置かれていたアメリカ製の、iナンチャラと言う名前のスマホが鳴った。


「何だ?」


 至福の時間を邪魔されたことで不機嫌になりながらも、画面を一時停止し、それを手に取る。


「私だ」


 そして、そう言うと、


『こちらは日本の警察です』


 予想だにしない相手からの電話だった。


「はぁ?なんだと?」


『特殊詐欺事件の捜査をしていたところ、あなたの名義の口座から高額な不正送金が確認されました』


「な、なに?」


『このままでは、あなたは詐欺、もしくは詐欺幇助の容疑で逮捕されます』


 とんでもない事を言い出す。


『無実を証明するために、あなたの口座番号と暗証番号を教えてくださ……』


 そこで最高指導者は通話を切った。


「ふざけた真似を……」


 怒りでプルプルと震えつつ、手に持っていたスマホを床に叩きつける。


 そして、こちらもサイドテーブルの上に置かれているインターホンのボタンを押し、


「参謀長を呼べ!!」


 と怒鳴った。


 数分後、人民軍総参謀長が、転がるように地下室へ駆け込んで来た。


「お、お呼びでしょうか、閣下!!」


 この国では、国家元首を怒らせると、だいたいろくな事にはならない。


 特に高い地位に上り詰めるほど、些細な事で簡単に抹殺されてしまう。


 この時も総参謀長は、「俺、何かやらかしましたか?」と、すっかり怯えていた。


「今すぐ、弾道ミサイルの発射試験を行え」


「えっ?」


 最高指導者の突然の命令に、思わず固まってしまう。


「いつもは排他的経済水域の外側に落としているが、今回は領海内にやれ」


「り、領海内でありますか?」


「そうだ。日本の陸地のギリギリにだ」


「ま、誠に申し上げにくいのですが、次の発射予定の新型弾道ミサイルは現在工場で組み立て中で、今すぐ発射できるのは旧式だけです。正常に飛ぶかどうか……」


「総参謀長」


「は、はい!!」


「私は、命令を発したのだ。実行するか、しないのか、どちらだ?」


 もし「しない」と返事をしたら、彼はこの部屋から処刑場に直行する事になる。


「偉大なる最高指導者の命令を、速やかに実行いたします!!」


 不動の姿勢を取ると、そう復唱して、彼は逃げるように駆け出した。





 月曜日の午後。


 亘は授業を進める教師の声を聞き流しながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。


 二日前、自分の不注意で、危うくこの街が消滅するところだった。


 しかし、そんな事より、


「俺、南條さんに抱き着いたんだよなぁ~」


 全然違う事を考えていた。


 彼の位置からは、彼女の後ろ姿が見える。


 入学以来ずっと同じクラスだったというのに、会話どころか存在すらほとんど認識されていなかった相手と、最近は挨拶ぐらいは普通に交わせる関係になった。


 2年以上かけてその程度とは、色々問題外だが、本人はそれでも満足しているのだから、まあ良いだろう。





 その時だった。


 ピロン、ピロン、ピロン、と、教室中、いや学校中の教職員、そして生徒達のスマートフォンから一斉にJアラートの警報音が鳴った。


 その存在は知っていても、本当に鳴っているのを聞いたことがなかった生徒達が、皆驚く。


「な、何事?」


 皆がポケットや鞄の中からスマホを取り出して、その画面を見る。


 その時、亘の頭にマゼラの声が聞こえて来た。


『亘さん、チャンスですよ!!』


 驚いて振り返り、窓際一番後ろの彼女の席を見ると、不安そうなクラスメイト達の中、一人だけ滅茶苦茶嬉しそうな笑顔になっている。


 金髪美少女の魅力的な笑顔だというのに、亘には悪魔の微笑みにしか感じられない。


『な、なんのチャンス?』


 学生服のポケットにはマゼラフィギュアを入れているため、思念通話でそう聞き返す。


 なお、一昨日の反省から、そのフィギュアの首には細いチェーンを巻き、その端をベルトに括りつけて、落とさないようにしている。


 知らない人に見られたら、普通に美少女フィギュアを持ち歩いているより、はるかに大きな勘違いをされそうだが、こうしなければ、とても怖くて持ち歩けない。


『某国がこの国に向けて、ミサイルを発射しました』


『あ~、時々飛ばすやつね』


 初めの頃は、そのニュースを聞くたびに、それなりに驚いたり怯えたりしていたが、今ではすっかり慣れて、何とも思わなくなってしまったが。


 亘も自分のスマホを取り出して画面を見ると、確かにその緊急情報が表示されている。


『でも、あれって毎回海に落ちて終わりだけど』


『はい、今回もそうだったのですけど、デスラー保安官が、UFOの牽引ビームで軌道を変えて、この街に落ちるようにしました』


「何だってぇええええ!!」


 驚きすぎてそう叫ぶと、椅子を倒しながら立ち上がる。


 驚いたクラスメイトと教師の視線が一斉に亘に集中した。


「何てことするんだ?!」


 しかし、亘はそれを無視してマゼラに詰め寄った。


『だからチャンスなんですよ』


「何がチャンスだ?!」


『そのミサイルを亘さんがスペーススーツで撃ち落としたら、一躍ヒーローじゃないですか?』


 そ、そのために、わざと弾道ミサイルがこの街に落ちるようにしたというのか?!


「お前なぁ~」


『さあ、急いでください。間に合わなくなりますよ』


「くそっ!!」


 亘がそう言うと、マゼラの手を掴んで走り出した。


「お前も来い!!」


 クラスメイト達からすれば、いきなりブチ切れた亘が、マゼラを怒鳴ったあげく、そのまま教室の外に連れ去ったようにしか見えない。


「さ、西條って、あんなキャラだっけ?」


「あいつ、マゼラさんに何をする気だ?!」


 騒然となる教室を後に、亘とマゼラは屋上を目指して走って行った。





 屋上に着くと、亘はマゼラフィギュアを頭上に掲げて振り回し、スペーススーツを呼んだ。


 そして、それが転送されてくると、大慌てで装着する。


「亘さん、サングラスをかけてください。スペースビームの照準と発射のタイミングが表示されますから」


 街の大ピンチだというのに、相変わらず嬉しそうにはしゃいでいるマゼラがそう言う。


「あと、どれぐらいなんだ?」


「1分もありません。さあ、急いでください」


 なんだかんだ言って、スペーススーツにも慣れてしまった。


 手袋とブーツを着け、ヘルメットを被ると、サングラスをかける。


 すると、マゼラの言う通り、サングラスの内側に十字のレティクルが映っていた。


 そして、その横に表示された数字がカウントダウンされていく。


 あと30秒を切っている?!


 亘は両手を左右に広げてから頭上に上げ、そして胸の前に下ろしてくると、指でハートの形を作った。


 あとは、「スペースビーム!!」と絶叫すれば、発射される。


「これでミサイルは撃ち落とせるんだろうな?!」


「はい、命中すれば跡形もなく蒸発します。逆に地面を撃ったりしたら、マントルまで貫通するので気を付けてくださいね」


「本当に、無駄に威力が強いな」


 ハートの形にした両手の指を、サングラスに表示された十字と重ねた。


「さあ来い。俺が撃ち落としてやる」


 なんだかんだ言って、興奮しているのが分かる。


 原因や経緯は気に食わないが、それでも街を救えるのだ。


 やっとヒーローになれる!!


 カウントダウンが10を切った。


 9、8、7、6、5……。


「あれ……5で止まったんだけど?」


 亘が照準姿勢を崩さないように意識を集中したまま、そう言った。


 すると、マゼラが空を見上げて、デスラー保安官と思念通話している。


「えっ、そうですか……はい、分かりました」


「なんだ? どうしたんだよ? まさか落下地点がズレて、違う街に落ちたとか?」


 そう聞くと、マゼラがテヘヘと笑いつつ、


「ミサイル、バラバラになっちゃったそうです」


「なんですとぉ~!!」


「UFOの牽引ビームで無理に軌道を変えたせいかもしれませんけど、それにしてもチャチ~ですよね」


 それを聞いて、亘の両手がパタッと落ちる。


「お、お、お前なぁ~」


「大丈夫です。次は絶対にこの街に落としますから」


「いい加減にしろぉ~!!」


 そう怒鳴ると、亘がマゼラに詰め寄って行く。


 その時、屋上のドアが開いて、クラスメイト達が飛び出して来た。


 そして、彼らは見た。


 赤い全身タイツの変質者が、マゼラに襲い掛かろうとしている姿を。


「変質者だ、こんなところにまで出没しやがった!!」


「マゼラさんが危ない!!」


「マゼラさんを助けろ!!」


 そして、ワァ~ッ!! と叫びつつ、亘に向かってくる。


「ち、畜生ーっ!!!」


 クラスメイト達に暴力を振るう訳にもいかず、亘は屋上から飛び降りる。


「変質者が自棄を起こして飛び降りた!!」


 しかし、4階の校舎の屋上から飛び降りたというのに、亘は身軽にグラウンドに着地すると、そのまま叫びながら逃げ去って行った。


「あ、あいつ、ただの変質者じゃないぞ?!!」


 驚くクラスメイト達。


 その中にあって、南條 由利亜だけは、市民ホールでの事を思い出していた。


 あの時、彼女を押し倒して美少女フィギュアを強奪した変質者は、信じられない事に、市民ホールの屋根までジャンプをして、そのまま姿を消したのだ。


「やっぱり気のせいじゃ無かったんだ……」


 屋上のフェンスに指をかけ、遠ざかっていく亘の背中を見つめつつ、彼女がそう呟いた。

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