↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペースヒーロー~宇宙警察に強引に地球を守るヒーローにされたけど変質者に間違えられました~  作者: よしぞう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/27

第15話 マゼラフィギュア大捜索

 市民ホールの内部及びその周辺には、大勢の人が集まっていた。


 コスプレイヤー、売り子、カメラマン、そして同人誌やグッズを抱えた人達が、楽しそうに盛り上がっている。


 そこに亘とマゼラが駆けつけて来た。


「こ、この人混みの中から、あの小さなフィギュアを探すの? 無理だよ……」


 まさに、よりにもよってと言った感じだ。


 するとマゼラが、


「こういう時こそ、スペーススーツの出番ですよ」


 と、言った。


「ふざけている場合か?!」


「スーツの特殊能力を使えば、きっと見付ける事ができます」


「……」


 確かに、聴覚、視覚、嗅覚、味覚を最大で千倍にまで上げる事ができる。


「仕方がないか……」


 まさに苦渋の決断である。


 亘は、会場の近くにある公衆トイレへと向かって行くと、入り口にマゼラを残して中に入った。





4月15日 1000


 亘のクラスメイトにして片思いの相手である南條 由利亜には、趣味があった。


 実は、彼女はアニメやゲームが大好きだったのだ。


 今時の女子高生なら珍しくもないため、別に秘密にしたりはしていない。


 しかし、不必要に自分から周囲に言いふらしたりもしていなかった。


 本人的には、


「アニメ、うん、好きでたまに見るよ」


 程度で済ませておきたかったのだが、本当はかなりガチで大好きで、推しのキャラクターも一人や二人ではない。


 この日は、自分の住んでいる街でコミックマーケットが開催されると聞いて、ずっと楽しみにしていた。


 下調べをした結果、かなり有名な同人サークルも参加しているし、彼女がファンのコスプレイヤーも来ることが分かっている。


「この日のために、お年玉も残しておいたし、あ~っ、楽しみ」


 そう言いつつ、入場待ちの長い列に並んでいた。


 このような地方都市では、規模の大きなアニメやゲームのイベントなど滅多に行われない。


 かといって、一人で東京まで行って有名なコミックマーケット等に参加するのはちょっと怖いし、親も許してくれないだろう。





 会場の内外では、すでにアニメやゲームのコスプレをした人達の周囲に人垣ができていた。


「わぁ~、可愛い~」


 それを見た時、彼女の頭にある男の姿が浮かんだ。


 赤い全身タイツに胸に黄色いVの文字、白い手袋とブーツ、そしてヘルメット。何より不気味なのは、その格好でサングラスとマスクを着けている事だ。


 あれもコスプレと言って良いのだろうか?


 最近この近辺に出没し、騒ぎを起こしている変質者。ネットでは胸の文字からV男などと呼ばれていた。


「いえ、あれは正真正銘の変態よ」


 そう呟くが、心のどこかでふと思ってしまう。


 またどこかで会ったらどうしよう?気味が悪いし怖いが、それでも・・・・・。


「はぁ、駄目、駄目、今日はあんな変質者の事なんか忘れて、楽しまないと」 


 そう言うと彼女は、市民ホールの方に目を向けた。


 そのドーム型の屋根に1羽のカラスがとまっている。


「ん?」


 その嘴が、何かフィギュアのような物を咥えているように見えた。


「もしかして、どこかのサークルの商品?」


 しかし、目を凝らして確かめようとすると、羽を広げて飛び去ってしまったのだった。





 トイレに駆け込んでから3分後、最近この街ではちょっとした有名人になっているスペーススーツ姿の亘が、トイレから出て来る。


 もちろんサングラスとマスクは付けているため、正体がバレる事はない……はずだ。


 市民ホール周辺には、アニメやゲームキャラクターのコスプレをしている人達が大勢いるため、これまでに比べて全然目立たない。


「これは、良いかも」


 いつもなら、この格好で人前に出るだけで大騒ぎになったが、今回に限っては地味で目立たない方だ。


「まずは聴覚からいきましょう」


 トイレの外で待っていたマゼラがそう言った。


「わ、分かった」


 いくらここでは目立たないとは言え、この格好で人前に出るのは危険すぎる。


 もしコスプレではないとバレたら、即警察に通報されてしまうからだ。


 一刻も早く、カラスに強奪されたマゼラフィギュアを発見しなければ。


 街が蒸発する前に、そして自分が警察に逮捕される前に。


 亘が意識を集中し、スーツの聴覚能力を上げていく。


 さすがに、いきなり千倍にしたりはしない。


「新刊買えた?」


「そのフィギュア、どこで売ってました?」


「撮影お願いしまーす!!」


「おおっ、良いアングル!!」


「ええっ、もう完売?!」


 全体の音を聞くと雑音にしかならないため、ピンポイントで一人ずつ声を拾う。


「だ、駄目だ……」


 亘がヘルメットの上から頭を抱えた。


「どうしたんですか?」


「会場の三分の一がフィギュアの話をしている! あとパンチラ!!」


 その中にマゼラフィギュアらしきものは無かった。


 あと、もしそれを手にしてスカートの中を覗いている者がいたら、今頃ここは閃光に包まれ、蒸発している。


「なあ、遠隔操作で、その自爆装置は解除できないのか?」


「駄目です。現物を手にすれば可能ですけど」


「くそっ、このままじゃ、地球を救うヒーローの変身アイテムのせいで街が吹き飛ぶことになるぞ」


「では、視覚はどうですか?」


 そう言われて亘は少し試してみるが、


「人が多すぎる。あと、似たようなフィギュアがあり過ぎて特定できない」


 亘がそう言うと、マゼラがウ~ンと少し考え込んだ。


「仕方ありません、出来ればこれは使いたく無かったのですが」


「何か奥の手があるのか?」


「スーツの嗅覚探知を使いましょう」


「匂い?」


「はい、ただ視覚や聴覚と違って、嗅覚はフィルター機能がかかりずらいのです」


「何で?」


「良い臭いかどうか、それは個人の好みによってかなり変わるからです」


「な、なるほど」


 ちょっと想像しただけで、それがどれほど危険な事か理解できる。


 亘が大いに盛り上がっている会場の方に目を向けた。


 特に市民ホール内は、とてもかぐわしい香りが充満していることが想像できる。


「そ、そもそも、あのフィギュアって、何か匂いしたっけ?」


「いいえ、しませんけど、紛失時に探しやすいように、遠隔操作で出す事ができます」


 要は、どこにしまったのか分からないスマホを探す機能のようなものだ。


 いつもニコニコしているマゼラが、険しい表情になっている。


 まあ、その気持ちも分からないでもない。自分そっくりなフィギュアから臭いを出すのだから。


「ちなみに、どんな匂い?」


「えっと、一週間履き替えていない靴下の臭いです」


「もっと、他に出せないのかよ?!」


「一番分かりやすい臭いですので」


「宇宙人の基準ってどうなってるの?!」


 しかし、もう一刻の猶予もない。


 今こうしている間にも、誰かがあのフィギュアを拾い、スカートの中を覗いているかもしれないのだから。


「分かった、やってくれ」





 南條 由利亜はまず市民ホール内に入り、欲しかった同人誌を購入すると、外に出て来た。


 そこではコスプレイヤー達が、デカいレンズを付けた一眼レフカメラの砲列から、フラッシュの集中砲火を浴びていた。


 もっとも本人達は超ノリノリで、決めポーズなどを取っているのだが。


「うわぁ~、素敵」


 スタイルの良いモデル体型の女性が、彼女の好きなアニメキャラクターの恰好をしている。


 ちなみに、そのキャラクターはクールなイケメンだ。


 南條 由利亜は自分のスマホを取り出すと、そのコスプレイヤーに近付いて行った。


 その時、頭上で鳥が翼を広げて飛び立つ羽音がした。





「じゃあ、やりますよ」


 マゼラがそう言うと、遠隔操作で、カラスに奪われた自分そっくりなフィギュアから、臭いを出した。





「ギャアアアア!!」


 頭上から不気味なカラスの鳴き声が聞こえて来たかと思うと、何か小さな物が落ちて来た。


 驚いて顔を上げた南條 由利亜が、自分目がけて落ちて来たそれを咄嗟に受け止める。


「痛っ!!」


 それは手の平サイズのフィギュアで、かなり尖っているパーツがあったため、かなり痛かった。


 おまけに、


「うわっ、くっさぁああ!!」


 滅茶苦茶臭かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。