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スペースヒーロー~宇宙警察に強引に地球を守るヒーローにされたけど変質者に間違えられました~  作者: よしぞう


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第12話 ヒーロー、家宅捜索される?!

『お疲れさまでした、亘さん。街の平和は守られました!!』


 脱ぎ散らかしたスペーススーツが光に包まれて、UFOに転送されていく。


「そして、赤い全身タイツの変質者は犯罪者の仲間になりました」


『まあまあ、私とデスラー保安官は、亘さんが正義の味方だって知っていますから』


「何の慰めにもならない……」


 そこは、公園の公衆トイレだった。


 ドアを開けて、まず頭を出し、周囲の様子を探ってから外に出る。


 入る時に、周囲に人がいないことは確認していたが、もし目撃者がいて警察に通報などされていたら一大事だ。


 一体俺は何をしているんだ?情けないにも程がある。


『では、また明日、学校で』


 そう言うと、マゼラが思念通話を切った。


 よく考えたら、俺をUFOに転送して、そこでスーツに着替えてから再度地上に転送してもらった方が、色々なリスクが軽減されるような気がする。


 とりあえず疲れたので、自分の家に向かう。


 ここは家の近所の公園のため、10分程歩くと無事に帰宅できた。


 肩を落とし、溜息をつきつつドアを開けて玄関から家に入ると、ちょうどお向かいの家にも家人が帰って来た。


 それを背中で感じつつ、振り返ることなくドアを閉じる。





「ドクター、質問があります」


「何だ、シャリ?」


「確かに私は頑丈ですが、他に方法はないのでしょうか?」


 宇宙犯罪組織のドクターと戦闘用アンドロイド・シャリが、アジトを目指して住宅街を歩いていた。


 残念ながら、当たり屋計画は失敗してしまった。


 犯罪者らしくお金を集める方法を、また考えなければならない。


「私なら、この惑星レベルの防犯システムなら、一人で現金輸送車を襲撃する事も、銀行を襲う事も出来ますが」


「あまり派手に暴れると、宇宙警察に感づかれる」


「この惑星にもいるのですか?」


「ああ、奴等は犯罪者を捕まえるためなら、惑星の地表を焼け野原にする事も厭わないからな」


「我々より、犯罪集団っぽいですね?」


「まったくだ」


 そう言う二人の前を、一人の男子高校生が歩いている。


 彼は自分の家の前に着くと、溜息をつきつつ玄関から家に入って行った。


 そしてドクターと戦闘用アンドロイド・シャリは、道を挟んだ反対側の家に入って行ったのだった。





4月14日 0750


 戦闘用アンドロイドを使った当たり屋が未遂で終わった翌日。


 亘は普段通り登校して来た。


 すると、教室の雰囲気がいつもと違う事に気付く。


 クラスの女子達が、教室の中央付近に集まって何か騒いでいるのだ。


「何かあったのかな?」


 そう呟きつつ自分の机に向かい、横目で女子達の様子を探る。


 彼女達は南條 由利亜の机の周囲に詰まっていて、さらに言うと、その本人の姿が見当たらない。


 嫌な予感がする……。


「何の騒ぎ?」


 さりげなく、隣の席でスマホで動画を見ていた男子にそう聞くと、


「南條が休んでいるんだよ」


 と、教えてくれた。


「南條さんが?」


「ああ、これ見てみろよ」


 そう言うと、その男子が自分のスマホの画面を見せてくれた。


 どれどれと覗き込んだ亘が、思わず目を見開いて驚く。


「な、な、なんだこれ?!」


 それは昨日の当たり屋による事故現場の動画だった。


 真紅のボディースーツに白いヘルメット、顔はサングラスと白いマスクで隠れているが、紛れもない自分と、南條 由利亜が向き合っている。


 おそらく、あの場にいた野次馬の誰かが撮影し、ネットにアップしたのだろう。


「可哀想な由利亜」


「本当に、信じられない」


「この変質者、南條さんのストーカーじゃないの?」


 女子達の声が聞こえて来た。


「ど、ど、どう言う事?」


 額から大量の汗を噴き出させつつ、亘がそう言った。


「南條が立て続けにその変態と遭遇したせいで、怖くて寝込んだんじゃないかってさ」


 それで女子達が怒っているのだ。


 もちろん、その怒りの矛先は、真紅のボディースーツ、つまりスペーススーツを身にまとった亘に向けられている。


 お、俺のせいで、南條さんが?!


 もちろん、あの超ダサスーツ姿で2回も彼女の前に登場したのは偶然である。


 いくら顔を隠しているとはいえ、あのような恥ずかしい格好で、片思いをしている相手の前に出たいなどと思うほど、亘はマニアックな性癖をしてはいない。


「こんな変質者に付きまとわれたら、私なら絶対家から出られないわ」


「警察は何やってるのよ。一昨日なんか、学校の側のマンションで暴れたんでしょ、この変態」


「めっちゃ怖いんだけど」


 女子達がスマホの画面を見つつ、口々にそう言っている。


「どうしたんだ、西條? 顔色が悪いぞ」


 男子生徒が心配そうにそう声をかけて来た。


「えっ、ああ、実は俺も、その事故現場にいたんだよ」


「マジかよ、すげぇ!!」


 嘘ではない。事故発生時、亘は南條 由利亜と一緒に事故現場にいた事は確かだ。


 ただ、その後、事故の被害者が宇宙犯罪組織の戦闘用アンドロイドだとマゼラから教えられたので、最悪の事態に備えてスペーススーツを装着したのだ。


 結果として、ふざけていると思われた亘は南條 由利亜に説教をされ、その隙に戦闘用アンドロイドたちは逃走している。


 スマホの動画は、最後は亘が猛ダッシュで逃走したところで終わっている。





 今日一日、何の授業を受けたのか覚えていない。


 気が付くとホームルームが終わり、亘はトボトボと家に向かって歩いていた。


「よりによって、俺のせいで南條さんが……」


 彼女に直接会って説明がしたい。


 決して南條 由利亜に付きまとっているわけではなく、偶然だったのだと。


 そして謝りたい。


 しかし……。


「絶対に信じてもらえないし、変質者の正体が俺だと分かったら……」


 あの明るくて可愛い彼女から、氷のような冷たい目線で見下ろされ、


「西條君があの変質者だったなんて、今後、私の視界に入らないでくれる」


 と言われている自分の姿を想像して、膝から崩れ落ちそうになった。


「俺って、地球を救うヒーローになったんじゃなかったっけ?」


 そう呟いた時、ちょうど家の前に着いた。


 そして、玄関のドアに手を伸ばした時、突然、背後から声を掛けられる。


「西條 亘君だね?」


「へっ?」


 驚いて振り返ると、面識のないスーツ姿の男性が2人立っていた。


「〇〇警察署の者だけど」


 そう言うと、刑事ドラマでしか見たことがなかったが、スーツの内ポケットから警察手帳を取り出して亘に見せてくる。


「け、警察?!」


「我々が何しに来たか、分かっているよね?」


「分かりませんよ!!」


 思わずそう答えると、警察手帳をポケットに戻し、今度は1枚のA4サイズの紙を広げて見せる。


 そこには、家宅捜索令状と書かれていた。


「ここ数日、市内各所で赤い全身タイツ姿の変質者が出没しているんだけど、初めて目撃された時、その近所のコンビニで君はサングラスとマスクを購入しているよね」


 うわぁ~っ!! あの時か?!


 公園で変質者から子供を守るために、スペーススーツを転送してもらったが、顔が丸出しのため、咄嗟にコンビニでそれらを買ったのだ。


 ちなみにあれ以降は、宇宙警察から支給されている物を使用している。


「コンビニの防犯カメラに、随分慌てた様子でサングラスとマスクを購入している君の姿が映っていたんだよ」


「君、あの変質者と体格が似ているよね」


 もう一人の警察官がそう言う。


「と、言う訳で、今から家宅捜索をさせてもらうよ」


 そう言うと、二人が亘が開けようとしていたドアに手を伸ばし、それを開けた。


「すいません、西條さん!」


 家の中に向けてそう言うと、キッチンにいた亘の母親が慌てて玄関まで出て来た。


「はい、どちら様ですか?」


「〇〇警察の者です。今からお宅を家宅捜索させていただきます」


 そう言うと、警察手帳と令状を見せた。





 二人の警察官が、亘の部屋を徹底的に捜索している。


 立会人として亘はそれを呆然と見つめていた。


 母親はおろおろとしつつ、父親に電話をしている。


 当たり前だが、本物の警察手帳を見せられたのも、自分の部屋が家宅捜索されるのも初めての体験だった。


 二人の警察官は白い手袋をし、机の引き出しやクローゼットの中、さらに本棚やベッドの下まで捜索している。


 一昔前ならば、ベッドの下は男の子にとっての聖域であり、親に見せられない物や知られたくない物が隠されていたが、今はそれらは全て電子化されていた。


 亘はパソコンを持っていないため、そういったデータは全てスマホの中に入っている。


「ちょっと、身体検査をさせてもらうね」


 一人の警察官がそう言うと、亘の学生服のポケットに手を入れた。


「あっ、そこは!」


 そして、そこに入れられていたマゼラフィギュアを取り出す。


「これ、君の?」


「……はい」


「学校にこういう物を持って行ってるんだ?」


「……はい」


 警察官の目が微かに細められた。


 そのフィギュアが、転校生の姿にそっくりだなどと知られたら、もう変質者確定だ。


 警察官が亘にさらに何か言おうとした時、彼のスマホから着信音が鳴った。


「ちょっと失礼」


 と言って、マゼラフィギュアを持ったまま廊下に出て、スマホで誰かと通話をする。


「はい……えっ……それは本当ですか?」


 その声が微かに聞こえて来た。


 そして、1分程会話をすると通話を終えて部屋に戻って来た。


「西條 亘君」


「はい……何でしょう?」


「実は、君が買い物をしたコンビニの駐車場にも防犯カメラがあったんだけど、当日は故障していたんだよ」


 そんなところにもカメラがあったのか?!それを知っていたら駐車場のトラックに隠れてスペーススーツなど転送してもらわなかった。


「そ、それが何か?」


 故障していなければ、駐車場に向けられていた防犯カメラに、亘が駐車されていたトラックの間に駆け込み、次にそこからスペーススーツ姿になって出て来た姿が録画されていたはずだ。


 しかし、警察が店側の許可を得て調べた結果、データが消えていたらしい。


 そのため、警察は店内の防犯カメラの映像のみで亘を特定して、今日の家宅捜索に踏み切ったのだ。


「でも、コンビニから連絡があって、その消えていたデータを修復できたそうなんだ」


「そうですか」


 終わった。もう言い逃れはできない。


「その映像によると、君がコンビニから出て去った後に、例の変質者が店の影から駐車場を横切るように走って、隣の公園に向かう姿が映っていたらしい」


「へっ?」


「つまり、君への嫌疑は晴れたという事だね」


 そう言うと、彼は同僚に、


「家宅捜索は終了だ」


 と、声をかけ、亘と母親に「ご迷惑をおかけいたしました」と言って頭を下げ、帰って行った。

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