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第七十二話 懺悔と砂塵

「さて、続きを始めようか、ダルシオン」

そう言うと、リクはいきなり魔法を放ってきた。ダルシオンさんは私を突き飛ばしてそれを受け止める。

「ナコ殿! 魔族を頼みます!」

「はい!」

突き飛ばされて転がった私は、痛みも忘れて立ち上がった。そして迫り来る魔族を見据えて光魔法を放った。


魔族は想像以上の数だった。

シュウと戦ってたグレンさんも、シルビアさんを守りながらシュウと魔族と戦っている。一人一人はそこまでじゃない。けど数が凄い。圧倒的な物量で押されている。

四方八方から魔族が襲ってくる。光魔法で撃退しているけど防御魔法を張り続けているから集中力がもたない。


必死に防御しながら魔族に対していると、ふと目の端にあるものが写った。違和感と戸惑い。

飛んでくる魔法を弾きつつ、光魔法を放つ。そしてあの違和感を探す。視線だけ動かして違和感の正体を捉える。


まさか……そんなこと!


私の心臓が早鐘を打つ。全身の血が凍った。

私はみんなに伝えるために大声をしぼりだした。


「ペーター君!」






ナコのありえない言葉につい視線をナコに移した。ナコは驚きを隠せない様子で空の一点を指さしている。私はそれを追う。

そしてナコの言う通りだと実感した。

「ペーター……」

そこには死んだはずのペーターがいた。姿は魔族になってたけどあれは間違いなくペーターだ。

私はペーターから目が離せなくなった。剣が勝手に下を向く。


キンッ


頭の上で金属音がした。

「シルビア! ボサっとするな! 死ぬぞ!」

マスターが珍しく焦ったような顔をしている。私の隙をついてきたシュウを弾き返したのだろう。

手に力が入らない。

「で、でも……ペーターが……」

動揺している私にマスターは冷たい声で言った。

「ペーターは異世界人。異世界人が途中で死んだら魔族になる。つまり記憶はない。諦めろ」


分かってる……分かってる! でも!


「でもペーターなんだ! 目の前で死んで、助けられなかった! 天昇の儀までやった! 死んだんだ! でも魔族として生きてるんだ!」

「シルビア!」

初めてこの人の怒鳴り声を聞いた。

「諦めろ。お前が今すべきことをやれ」


私は自分で自分の頬を引っぱたいて、喝を入れる。そして剣を握って眼前の敵に向かった。


「おらぁぁ!」


目の前に迫り来る魔族を斬り倒す。何度も、何人も。ペーターへの悔しさを断ち切るように。

目の前が歪む。頬に伝うものもそのままに体を動かす。耳には、ナコが必死に呼ぶ声が聞こえる。


「ペーター君! ペーター君!」


ナコ、やめてくれ。もうこれ以上ペーターを呼ぶな。あいつは死んだんだ。あの時、私の目の前で、手の届くところで死んだんだ。守れたのに、守らなきゃいけなかったのに、死んだんだ。


「あいつ……魔族になったのか」


プツンと私の中で何かが切れる音がした。声の発生源に視線を移す。

今のは……まさか?

シュウは興味なさげにペーターを見ている。そして……鼻で笑った。ペーターを殺したあいつが……魔族になったペーターを鼻で笑った……。


私は勝手に体が動いた。シュウに向けるべき剣を持って走った。そして斬りかかる。


「ペーター! お前ペーターだろ! 忘れたとは言わせねぇ! 散々面倒見てやっただろうが!」


私の剣を受け止めたペーターは表情も変えない。まるで別人みたいだ。

何度も話しかけながらペーターに斬りかかる。ペーターと話したこと、一緒に鍛錬したこと、馬鹿な話をした事、こいつが憧れてたルークのこと。

「さっきから何を言ってるんですか?」

奥歯を噛み締めてペーターの言葉を受け止める。


ペーターに話しかけながら剣を交えていると、ダルシオンの嫌な声が耳を掠めた。

「ナコ殿!」

バッと振り向くと、ナコが今にもリクに襲われそうになっているのが目に入った。


ナコは尻もちをついてリクに恐怖の顔を向けている。

リクは冷笑を浮かべて短剣を振りかざしている。

ダルシオンは魔族を振り払いながら懸命にナコの元に行こうとしてる。

マスターも気づいて動こうとしてるが間に合わない。

私は顔を向けた一瞬の隙をつかれて、ペーターの重い一撃を受けた。剣でギリギリ受け止めたが、後方に飛ばされている。


『ナコが……死ぬ……』


その現実を受け止めた瞬間、ナコとリクが砂塵に包まれた。





砂塵が現れると、私らも魔族も誰1人動かなかった。動けなかった。時が止まったみたいに全員がそこに視線を向けていた。ダルシオンもマスターも固まったように動かない。

砂塵が消えるまで音もなく全員が見つめていた。


そして砂塵が消えていくと――


目に入ったのは大きな黒い翼。

そして黒いツノ、黒い尾。


人の姿をした黒竜。


ようやくこの静かな空間に音が生み出された。ナコの声。聞きなれたフレーズ。


「……う……み?」



ペーターは天昇の儀のためにお気に入りだったのに殺しました。その事が頭から離れず、このような形で復活させました。でもシルビアにとっては残酷な出来事です。

(懺悔)ごめん、シルビア、ペーター。


最後までお読みくださりありがとうございます。


感想、レビュー、評価など頂けたら励みになります。誤字脱字、読みずらいなどありましたらコメントください。日々精進です。

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