第七十一話 リクの望み
目の前に飛んでくる魔法を受け流しながら両方の戦局を見る。
グレンさんとシュウは両者一歩も譲らずといった様子で攻撃の手が止まらない。グレンさんは倒す気がないのか防御に徹している。ただ、たまに繰り出される攻撃がエグイ。建物を切り刻んで飛ばしたりしてる。
とりあえずあっちは隙を見て光魔法とか無理。次!
ダルシオンさんとリクは正反対に、静かな戦いって感じ。隙をみて魔法を放ったり、罠を仕掛けたり、と頭脳戦っぽい。つまり私が狙えるのはこっちだ。リクだ。
「おい、ナコ」
「なんですか? シルビアさん」
シルビアさんを見ると、シルビアさんはグレンさん達を見つめている。
「マスターあれ、倒す気ないよな? 仲良くしてたから倒しづらいんかな?」
「わかりませんけど……そもそもマスターは人間側でも魔族側でもないって言ってませんでした?ペーター君の時も傍観してた、ってダルシオンさん言ってました」
「マジか……」
シルビアさんは剣を握ってシュウを見つめている。
もしかして……。
「シルビアさん。シュウ倒しに行きます?」
私が言うと、驚いた顔を向けられて、私まで驚いてしまった。てっきり喜んで行くと思ったから。
「ナコを守るのが私の役目だ。私情は挟まない」
「でもその間に大群来ちゃうかも」
「まぁ……確かにな……」
そんな話をしていると轟音が地面を揺らした。
ダルシオンさんの罠が発動したらしい。真っ赤な炎が目の前でごうごうと音を立てている。
「ナコ! こっち来い!」
シルビアさんに言われて慌てて後ろに下がった。振り向くと、少し焦げた跡の残るリクが空中に見えた。
なんでグレンさんを殺したいんだろう?
ふと頭に浮かんだ。
分かってるつもりだった。白竜は魔族にとって天敵。倒しておきたいのはわかる。でもグレンさんは白竜の力を使ってない。昔から今までずっと。むしろ魔族とも仲良くしてた。だったらそこまで敵視する必要ないのでは?
避難して私はシルビアさんに言った。
「シルビアさんはシュウの方に行ってください。私はリクの方に行きます」
「はぁ?! 何言ってんだ。ナコは隙をつくんだろ?」
私はシルビアさんを真っすぐ見つめた。
「この戦い、止めます。説得します。リクなら説得できるかもしれません。シュウは戦いを楽しんでる。でもリクは何か違う気がするんです。お願いします」
シルビアさんは私と2か所の戦闘を順番に見た。そして頷いた。
「わかった。気をつけろよ!」
「はい!」
シルビアさんが走って行くのを見送って私は、ダルシオンさんの元に走った。
「ダルシオンさん!」
「ナコ殿! 離れててください!」
「私も戦います! というかリクと話したいんです!」
「はぁぁ?!」
顔が怖い。何言ってんだこの小娘って顔してる。次のセリフも分かる。絶対言うぞ。
「馬鹿なんですか!」
ほらねー。
「リクはシュウと違って戦いを楽しんでません。なんで戦うのか聞きたいんです」
「そんなの白竜であるマスターを狙って」
「マスターは今まで白竜の力を使ってません! 脅威にならないはずです!」
ダルシオンさんに被せて言うと、ダルシオンさんは黙ってしまった。
すると頭上から声が降ってきた。
「何? 話したいの?」
微笑んだリクが見下ろしてくる。
私は念の為、光魔法を掌に出して、リクに話しかける。
「なぜあなたは白竜であるマスターを殺したいんですか? 今まで脅威にはならなかったはずです」
リクは表情を消した。そして悩む素振りをしながら話し出した。
「マスターは好きだよ。面白いし頭もいい。僕の話についてこれるし。でも白竜は天敵だ。いざって時のために殺しておいた方がいいだろ?」
「でも彼は白竜の力を使うつもりはありません。今までと同じでこれからも」
リクは黙って見下ろしてくる。するとダルシオンさんが私の隣に立った。
「リク。あなたの望みは?」
望み? 白竜を殺すことじゃ?
私が首を傾げながらリクを見ると、リクは寂しそうに微笑んだ。
「ハナちゃんの望みと同じだよ。四天王を壊滅させたい。自由になりたいんだ。きっと今頃彼女が魔王とアヤを始末してくれている。そして僕が白竜を消す。もう僕らを縛るものはない」
私とダルシオンさんは目配せをした。
ハナって誰? まさか海のこと?
「だから僕は白竜であるマスターを消す。納得して貰えた?」
リクは空に浮かんだまま、さっきの寂しそうな顔を消した。私はリクの説得を続けようと口を開いた、その瞬間、ダルシオンさんとリクが同時に同じ方向を向いた。
「え?」
私も遅れて2人の視線の先を見る。
山の方から黒い何かが飛んでくる。黒い点はどんどん大きくなって、数が増えていく。
「ダ、ダルシオンさん?」
「えぇ。お出ましです」
私はダルシオンさんの返答に、掌の光魔法を強めた。
「やっと来たか。邪魔されるのは嫌だけど、これで戦力は大幅に僕らの方が上になった。もう諦めなよ。逃げ場はないよ?」
勝ち誇った顔のリクを睨んで、私は黒い大群目掛けて光魔法を放った。
魔族側のキャラの深堀りができればと考えてます。番外編……書けるだろうか……。
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