1.4.5異世界にやって来た引きこもり
森の中特有の匂いが辺りに漂っている。
今日でスライム娘のメルがやって来てから1年がたった。つまり僕たちは8歳だ。
最近ではメルも知らない人が聞いても人間だと分かるくらいには話せているので、今日は姉妹3人で街に遊びに行く。
ジル「ベルベル、ジルたちだけで街に行ってもいいのー?」
ベル「一応僕たちの両親はここの街の領主だからね。街には感謝してる人は多いから大丈夫だよ?だけど、危ないからはぐれたり、人がいないところは行っちゃ駄目だからね?」
僕は一人で街を行ったり来たりしていたが、親なしで家の外に出るのはメルもジルも初めてだからな。
メル「やっぱり記憶にあるとはいえ、初めて人間がいるところに行くのは緊張しますネ。」
緊張が話し方にも出てるね。
メルもアンナとしての記憶で大きな街に何回か来たことがあるらしい。とはいえそれは映像で見た、位の認識らしいが。
ジル「メルになにかあっても、ベルとジルが助けるから大丈夫だよ!」
ベル「危ないと思ったらどんな状況でも、必ず大きな声を出してね。すぐに行くからね。」
メル「うん。ジルもベルもありがとう。でもその前に一人にならないようにするわ。」
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5歳で最初にルイセントに来たときとは違い、20分くらいでルイセントに着いた。
検問は領主の娘ってことで顔パスだった。
メル「ふわぁー
すごい大きな街ですね!私の記憶にもこんな大きなところはありませんでした。」
へぇー、メルもルイセントに見覚えはないのか、ならアンナはどこから来たんだろ?
ジル「ベルもメルも速く行こーよー!」
メル「ジルー!一人になっちゃダメだからねー!」
ということで、メルの初めてのおつかい(?)に選んだのは洋服屋さんだった。
なぜ来たのかって言われると、やっぱりメルもお下がりばっかりは嫌じゃん?
メルも案外おしゃれ好きだからね。自分で着る服は自分で選びたいよね?
前世では引きこもりだったからほとんど縁がなかった、店の入り口の横に服が飾ってある、おしゃれな雰囲気のお店に入っていく。
まぁ、僕は中身が男だからファッションには興味がないため、ジルとメルが着てくるのを見てるだけになるが。
メル「ジル、ベル、こんなのはどうかしら?」
メルが着てきたのは、黒と白のいわゆる前世にあった「和風ゴスロリ」だった。
………やばい、めっちゃ似合ってる。
服に所々髪と同じ赤が混じっていて、メルのために作ったと言われて納得するくらい似合ってる。
ゴスロリって髪が黒だったり、グレーの方が印象としてあると思うが、赤髪でここまで似合うとは思わなかった。
ちなみに、今のメルは森で出会った時とは違い、お母さんに化粧水とか色々教えて貰ってそばかすが落ちている。
ちょっとくすんでいた赤髪は鮮やかな紅色になり、背中あたりまで伸びている。
ジル「メルメルすっごく可愛い!その服何なの?ジルも着てみたい!」
ベル「すっごく似合ってるよ、やっぱりメルは可愛いね。」
定員「こちらの服は昔、聖国にて召還されたと言われている勇者様が作ったとされているデザインが元になっております。」
この店の定員さんが教えてくれた。
なるほど、だから和風ゴスロリ何て色々混ざったような服なのか。
勇者については聞いていたが、そのなかには確実にオタクがいるな。
……僕がメルの服装を褒めるだけの語彙力がないことは言わないでくれ、前世にそんなことを言う機会はなかったんだ。
……グスンッ(泣)
余談だが、この国の、いや世界かな?
この世界にある技術は前世に既にあったものが多い。
世界が変わったから、もう少しなにか変わったりしないのかな?と思っていたけど。
大体はこの勇者が関係してるとわかった。
一番最初の召還は、本当に魔物による大災害だったそうで、その後からは定期的に召還しているそう。
一番最初の初代勇者もその後の勇者も国の軍に所属したりはしていない。
国に召喚されたあとは個人で若しくはひとつのパーティーとして行動していたらしい、だがその勇者がもたらした技術の権利は基本的に聖皇国が持っているのだとか。
ここからは推測だが、聖皇国は勇者がもたらす利権を勇者の死後に所有権を主張して、奪い取ったのであろう。
そして聖皇国はそれに味をしめて、定期的に召還することにした。ってところじゃないかな?
まぁ、すべてが憶測でしかないが、大体はあっているだろう。
そんなことをしている国にはあまり近寄りたくはない。
そもそも宗教って異世界だとお金にがめつい印象とか独裁的な印象があるからな。
マンガやアニメの影響かな?
その後は、メルもジルも僕を着せ替え人形にするのに、満足したあとに店をでた。
メル「すっごく楽しかったです。ジルもベルもありがとう!」
ベル「ん?いやいやメルさん。まだまだお昼も食べてませんぜ?」
ジル「え?ベル何なのそのしゃべり方、何て言うかすごく変」
あれま、まぁ8歳の美少女がこんなこと言ってたら変だな。
どうでもいいが、8歳の美少女の中身が20歳の男って犯罪っぽく聞こえない?ホントにどうでもいいけど。
ベル「メルメル、お昼になに食べたい?」
メル「うーん、食べたいものがいっぱいあるのよね。」
ジル「ジルは何でもいいよー!あっ、でもでも、出来ればベルが作った料理が食べたいなー。」
ベル「せっかくメルが初めて街に来たんだから、皆で街のなにかを食べようよ。
うーん、そうだねー、いっぱい食べたいなら、広場に行って屋台の料理をちょっとずつ食べるのが良いと思うよ?」
メル「ならそれにしましょうか。じゃあ、行きましょう。「メル?そっちは広場じゃないよ?」……ベル、広場ってどこにあるの?」
ということで、ルイセントの広場までやって来た。
周りにはスープや、サンドイッチ等のいろんな食べ物のいい匂いがする。
広場の中央辺りには、剣と杖を構えた凛々しい男女のでっかい石像が建っている。
今まで両親は僕たちをここには連れて来なかった。
ルイセントの守護神という称号とか、どことなく石像の男女が両親に似ていることは、両親のためにもメルやジルには言わない方がいいだろう。
ベル「じゃあ食べない分は僕たちが食べるから、メルは自分の欲しい物を全部買って。」
ジル「ジルもいっぱい食べるよ!」
メル「ありがとうねベル、ジル。なら、まずはあそこの美味しそうな匂いのスープを買いに行きましょ!」
30分後
メル「美味しかったー。」
ベル「美味しかった?なら良かった。」
ジル「ジルもお腹いっぱいだよー。」
美味しかったのは当たり前だ。
今まで僕が食べてきた美味しい屋台に誘導したからな。考えながら会話をすると疲れるが、これくらいは可愛い妹のためならいくらでもやってやれるな。
ベル「じゃあお皿を返してくるね。いろんなお店の買ったから時間かかるかもだけど、ジルもメルもここで待っててね。」
メル「良いよ、ベルはここに座ってて、私達が返してくるから。」
ジル「そうだよ!足りないお金出してくれたしね!」
ベル「そう?なら僕はここで待ってようかな?」
そう言われて、僕は一人でベンチで待つことにした。
ちなみにさっきジルが言ってたお金は、僕が日課として魔物を狩っている時に稼いだお金で、別に親がくれたお金が少なかったからではない。というより子供が持つには多すぎた。
足りなくなった理由は、この世界の衣服は当たり前かも知れないが前世よりもレベルが低くて、今回行ったところは結構技術も値段も高い場所だった。
そしてジルとメルが気に入ったものが多すぎて、買いすぎたからだな。
日課で魔物を狩っているのもこういうときの為でもあるからね。
本当なら僕が甘やかして全部お皿を返しに行きたいところだけど、何でも代わりにやってあげると腐っちゃうからね。
買った服はどうしたかと言うと、僕たちに気付かれないようについてきていたお父さんにもって帰らせた。
別に僕がずっとお父さんの尾行に気付いていたわけではない。
でも、お母さんとは違い、メルが初めて街に来たからきっとどこからか見ていると考えたから。
「どうしよ?これじゃ重くてメルの初の街デビューが出来ないなー。」とちょっと大きめの声で意味不明なことを言ったら、しばらくしてお面を被った自称スーパーマンが路地裏から出てきたから、荷物をあずけて帰らせた。
……わかりやす過ぎてジルもメルも言葉が出なかったらしい。
ジル「ベルー帰ってきたよー!」
ベル「おかえり、ジル。」
ジルが先に帰って来たか。
まぁ、メルはゆっくり歩いていたけど、ジルはちょこちょこ走ってたからな。周りの大人が見守る中に危険な目をしている人がいないか、確認するのが大変だったぜ!
ジル「ねーねーこのあとどこに行くのー?」
ベル「どこに行こうか?メルに意見がなかったらだけど、劇を見に行くのもいいし、道でマジックとかしてるのを見るのも面白いかもね?」
ベル「じゃあ私は劇を見てみたい!お母さんたちが出てるの!」
ジル「えっと、かわいそうだからお母さんたちには内緒だからね?」
ん?今直感スキルが一瞬だけ反応したな。
……今度はお母さんでも来たのかな?
Side メル
今日は本当に楽しかった。
あのとき、暗い森のなかを行く宛もなくさまよっていた時とは大違いね。
あのとき助けてくれたメルには本当に感謝しないと。
今は買った料理のお皿を返して、少しだけお金を返してもらってる。
メルがお皿を返すんじゃなくて、使い捨てにすればいいとか言ってたけど、どういうことだろう?串焼きみたいに棒に刺すのかな?
あっ、このお店のサンドイッチが一番美味しかったな。
でも、それでもベルの作った料理の方が美味しいってどういうことなんだろ。
お母さんたちは「ベルだから」って言ってるし、ベルは凄いけどよくわからないわ。
あれ?最後のお店どこだっけ?こっちかしら?
あ、あったけどちょっと遠いな。ちょっと人が少ないところだから速く行こう。
ガバッ
(えっなにっ?!後ろからね!そうだ、叫ばないと!でも口と目が塞がれてっ、声が出せない!待って!誰?!私を担いでどこに連れていくの?!)
「うー!うー!」
「アッハッハッハッ!上玉だな!これは!初めての俺の手柄だぞ!おいおいお嬢ちゃん、一人で歩いていたらダメじゃないか!次からはもうちょっと用心しなきゃな。ま、次があるかどうかも分からないがな!」
10分位の間ずっとぐるぐると男は私を担いで走っていた。走るのをやめたと思ったら、階段を下りてどこかに着いたあとは目元の布だけ外されて、どこかの牢屋みたいなところに放り込まれた。
灯りはなく、周りは暗くてよく見えない。
(ベルが大丈夫だって…言ってたから、…でも…暗いよぉ……怖いよ…誰か……おねがいだよぉ、ベルぅ…ジルぅ…お母さん…お父さん…誰か……助けてよぉ…)
「ねぇ、そこのあなた。口の拘束具は外してあげるから騒がないでね。」
「っ!」(誰!?来ないで!!)
私はいきなり声をかけられて、しりもちをついて後ずさった。
「そんなに怯えないで、
私も捕まっちゃったのよ。でも魔法は使えるから口の布はとれたの。あなたのも今から取ってあげるわね。
でね、これを一番聞いて欲しいのだけど、私を探しに誰が来ると思うから私達は助かるわよ。だから騒がないでね?いい?」
助かると言われて落ち着いてから、頷いた。
「…はい、取れたわ」
拘束具はガシャンと音を立てて地面に落ちた。
「あ、ありがとうございます。」
「あら可愛い子ね。
もう少しで誰かが助けに来るから怯えないで待っててね。」
「…ベルが助けに来るから大丈夫」
「ベル?」
「絶対に来る。約束したもん。」
「ベルって言うとやっぱり、ここの領主の娘のことかしら?その人と約束したの?じゃあ…」
ドッガァン!!!ドガッガゴッ!ゴロゴロゴロ……
「「え?」」
上の方で耳が痛くなるくらい大きな爆発音がしたと思ったら、一拍置いて大量の物が落ちた音がした。
音が止んだと思ったら、地上に続く階段に右の眼を人間の血のように深紅に染めたベルが居た。
「あっ!ベル!来てくれたのね!」
「メルッ!居た!ん?もう一人いるのか。ならついでについてこい!」
ベルはそう言い、立ち上がろうとしている私達を両脇に抱え、地上へと駆け出した。
そのあとはベルも混乱していたのか、私達をおろさずに連れたまま誘拐犯の拠点を潰し回っていった。
……私のために怒ってくれてたのは、なんとなく胸が暖かかった。でも、お母さんにこれは流石に見られたら怒られちゃうわね。
Side :ベル
やっちまった…
日頃からいつか役にたつかも知れないから、事前に犯罪者組織を確かに調べていた。スキルとか自分の今使えるものをすべてを使いこの街の地下のどこに何があるかも調べた。
そしてメルが帰って来ないなーって言って、メルにプレゼントした、普通の人間には聞こえない超音波を常時放っているアクセサリー型の魔道具の位置を音魔法と魔力感知の応用で調べて、犯罪者組織の地下にいることが分かったところまでは覚えてる。
だが、そこから覚えていない…
犯罪者組織を壊滅させたことは覚えてるが、過程を思い出せない。
どうしよう?絶対に冒険者ギルドとか両親に聞かれる。
両親に対しては、
「メルが誘拐された。カッとなってやった。後悔も反省も後始末もしない。」
と、でも言えば納得するだろう。その上、「よくやった!あとは任せろ!」とか言うだろう。
だが、冒険者ギルドには…あれ?両親は一応貴族だし、両親に丸投げで解決じゃない?
…なるほど。問題など無かったわけだ。
そうなったら、誰かに声をかけられる前にこの街から出ようか。
ベル「よし帰ろう、後始末はお父さんたちがやるそうだから速く家に帰ろう。」
「あの、ベルといったかしら?助けていただいたお礼をさせてもらえないかしら?」
ん?誰だこいつ?
あーメルがいたとこに誰か居たけど、こんな派手な金色の髪の綺麗なお姉さんはいなかったぞ?
いや、見えなかっただけで居たのか?
ベル「いや、なるべく速く帰った方がいい、お父さんたちが暴走する前に、だ。下手したらこの街が沈みかねない。」
なるべく、信憑性が出るように深刻そうなシリアスっぽいセリフと顔をしてみる。
「そ、そうなのね。ならあなたとはこれから先も会うだろうからその時にお礼をさせていただくわ。」
ベル「別にお礼なんてしなくてもいいよ?メルのついでに助けたってだけだし、他にもいっぱい誘拐されてたのはいたしね。自分の運とメルにでも感謝しとけばいいよ。」
メル「ベルベル。この人はいい人だったよ、怖かったところを大丈夫だよって言ってくれたの。」
ベル「へぇ、なら…お姉さん。このペンダントをあげちゃう。余り物だからお姉さんが貰わないと捨てちゃうし、メルのことを気遣ってくれたならありがとうって感謝すべきだしね。
よし!それじゃ、メル、ジル。ダッシュで帰るよ!一番速かった人にはシュークリーム作ってあげるよ!よーいスタート!」
ジル「シュークリーム!?ジルがたべる!!」
メル「えっ?シュークリーム!あんなに美味しい物がもう一度?…絶対に一番になる!」
「え?さっきまであなたが着けてたペンダントでしょ!?余り物でもないじゃない!っていうかあなただけ屋根を走るのは競争にならないと思うのだけど?!小さな子供がどうやったらそんなことできるのよ!メルちゃんもジルちゃんもすごく速いじゃない!シュークリームってそこまでするほどに美味しいの!」
後ろからなにか聞こえるが無視だ無視。
これからはしばらく僕が罰とは言えないかも知れないが、料理を作る日が続くだろう。
その上で騒ぎが広まる前に買い物とか、途中で猪とかを狩って行かないといけないんだよ!
自業自得だし、憂鬱では無いんだが、これから親に説明するのはちょっと面倒だ。
メルが誘拐されたってくだりで街にそいつらを潰しに行くのを止めるのが面倒だ。
はぁ。




