21・ドラゴン退治(前編)
ジャンル別ですが日間30位になりました!
感謝の意を込めて、本日2回目の更新です。
俺達——三組全員はマターヌの森を訪れていた。
「ここは私の庭みたいなものなので任せてください!」
ロレッタが胸を張り、戦闘を歩く。
そういえば昔、ロレッタと一緒にスライム退治をした思い出の地でもあるな。
あの時はロレッタのレベル上げと資金稼ぎが目的であったが……、
「先生……本当にレッドドラゴンの討伐なんかするつもりか?」
「うん? 戦闘狂のジェシカとしては願ったり叶ったりじゃないのか?」
「戦闘狂と言うな」
三組全員では初めての課外授業挑戦となる。
三組ではちょっとした遠足みたいになっていて、生徒達のテンションも高い。
レベルも高いせいか、道中で遭遇するスライムやコボルトは簡単に薙ぎ払うことが出来た。
その中で一人だけ浮かない顔をしている少女がいる。
三組の中で最もレベルが高いジェシカである。
「レッドドラゴンってのは強いのか?」
——今回の課外授業はその名も『レッドドラゴンを討伐せよ!』である。
ザコモンスターが多く生息するマターヌの森。
そんな森の中に何処からやって来たのかレッドドラゴンが棲みついてしまった。
このままではモンスターの生態系も狂い、近隣の村や街に被害が出てしまうかもしれない。
そういうわけで教育ギルドを通して依頼が送られてきたわけである。
「強いも何も! 普通、ドラゴンというものは王国の騎士団が三十人くらいのチームを組んで戦うような相手なんだぞ」
「ほうほう」
「騎士団にいるモノは全員、選りすぐりの兵士達だ……三年生ならともかく。戦いとしては素人の一年生でドラゴンに立ち向かうなんて……無謀だ」
「良いじゃないか。三十人なら三組の人数と同じだ」
「——っ! 先生は何も分かっていない!」
大きな声を張り上げてむきになってくるジェシカ。
ジェシカは元々、騎士団に所属していたこともある。
だからこそドラゴンの脅威を誰よりも理解しているのだろう。
(心配しなくてもいいのにな……)
なんてたって、現在の俺のレベルは95。
昔は手間取ったキングベヒモス相手にも今ならワンパンだろう
「もしお前等が危なくなったら俺が助けて——」
——やる、と言おうとした時であった。
バッサバッサ。
翼が動くような音。
今まで快晴だった空が一気に暗くなる。
何事かと思い、空を見上げると——それは空から地上に降臨した。
『人よ。我に用事あるみたいであるな』
赤色の分厚い鱗。
見るだけで相手を怯ませてしまうような威圧。
一口で五人くらいなら飲み込みそうな口腔。
見上げてしまうような巨躯。
ぎょろっと赤色の瞳が俺達に向いた。
「レ、レッドドラゴン——っ!」
——そう。
早くも課外授業の目的であるレッドドラゴンが俺達の前に姿を現したのである。
『ふむ。貴様……なかなか強いようであるな』
レッドドラゴンが興味深げに声を出す。
「お前……喋られるのか?」
『そこらへんの低俗なモンスターと違い、高貴なドラゴンは人の言語を使いこなすことも出来る』
思わず後ずさりしてしまいそうになるレッドドラゴンの強者の雰囲気。
空気がピリピリと肌に突き刺さる。
今まで楽しそうに騒いでいた三組の生徒が絶句している。
な、なんだ? この異常な威圧感は。
『——どちらにせよ、我の巣にしようとしていたこの森に侵入してきた害虫は排除しなけらばならない』
レッドドラゴンの大きな口が開かれる。
「——み、みんな! 伏せ——」
俺がそう警告しようとした刹那であった。
レッドドラゴンの口腔から火炎が吐かれる。
突然のことだったので危なかったが——そこは流石に優秀な三組。
火炎の直撃を避けるようにして、各々が回避を成功させる。
焼かれていく森。
一気に周囲が灼熱の赤へと変化していく。
「こ、これがドラゴンの力……っ」
流石の俺達でも直撃をくらえば、かなりヤバい雰囲気を感じ取った。
俺は一歩前に出て、通信簿を開きレッドドラゴンのレベルを確認する。
『レッドドラゴン レベル100』
「ひゃ、100だとぉ?」
今まで相手しきた連中とは桁違いじゃねえか!
そういや課外授業の推奨レベルも100に設定されていたよな!
ギルド職員の人も心配してそうな顔で、
『大丈夫ですか? 本当に良いんですよね?』
と何度も確認していた意味が今になって分かる。
「まあけどこっちは三十人もいる。これだけいればレッドドラゴンに立ち向かうことも出来るだろう」
俺だって、レッドドラゴンには及ばないがレベルも100に迫っているしな。
とはいっても——この調子なら、楽しく授業といかないらしい。
仕方ない。
生徒の命も危なそうだし、ここは俺が決着を付けてやろう。
そう思い、レッドドラゴンの方へと走りだそうとすると、
「先生。ここはわたくしに任せてください」
森を焼く炎を浄化するような声。
——このクラスでは唯一の魔法使い、アリアが俺よりも一歩レッドドラゴンに近付いた。
「ア、アリア……流石にこいつはヤバい。ヤバい相手を生徒に相手にさせるわけにはいかないよ」
「この課外授業の目的はそもそもなんだったんですか?」
……そりゃあ。
もっと広い屋外でアリアに魔法をぶっ放してもらい、生徒達の『魔法』に対する知識を深めようと思ったのだ。
とはいってもレッドドラゴンが予想外に強すぎて、そんな暇はなくなったけどな。
「——ドラゴンという種は魔法に弱いとも言われます」
「ま、マジ?」
「はい。このレッドドラゴンは火属性のモンスター。わたくしが使う水属性の魔法を使えば効果抜群です」
「そんなポケ○ンみたいな仕組みだったのかよ」
「はい? ポケ○ンが何なのか分かりませんが……先生。一度、わたくしに魔法を使わせてください」
まあアリアがそこまでやる気を見せているならやらせてみよう。
実際、アリアはおっとりとした雰囲気で積極的とは言い難かったからな。
アリアは一人、レッドドラゴンの前に立つ。
レッドドラゴンの前にアリアが手を掲げると、青色の光が出現。
それは粒子となり空へと舞い上がっていき、
「《ウォーター・シュート》」
何もない空間に水を生みだした。
水は弧を描きながらレッドドラゴンへと直撃。
慎ましい水の射撃にレッドドラゴンは——、
『何だ? これは。水浴びか?』
と平気そうな顔をしていた。
「ってそれじゃあただの水鉄砲じゃねかぁぁぁぁぁあああ!」
アリアの手の平から出現したのは弱々しい水であった。
レッドドラゴンに水鉄砲を浴びせかけているようにか俺の目には見えない。
「《ウォーター・シュート》は低級の魔法ですかね……今のわたくしの力ではここまでのようです」
がっくしと肩を項垂れるアリア。
自信満々だったくせに、早くも敗北宣言しちゃったよ!
『我を舐めるな』
レッドドラゴンが激昂し、その大きな右足を上げアリアを踏みつぶそうとした。
「アリア!」
俺はすぐさまアリアを担ぎ上げ、レッドドラゴンから離れる。
——少し離れた場所でレッドドラゴンを見ると、その大きさがはっきりと分かる。
まさに地上の覇王と言ったところだろうか。
その大きな体だけでも脅威なのに、口からは森を焼き払うような火炎を吐く。
……もしかして、三組最大のピンチなのだろうか。
「な、何か……この窮地を脱する手段はないのか」
——俺はポケットの中に手を突っ込む。
ポケットにはチョーク入れしか入っていなかった。
本来、黒板もないこんなところでそのチョークは役立たずでしかなかったが、
「チョ、チョークが光っている?」
チョーク入れの中に入っている青色のチョークだ。
そのチョークが「ここから出してくれ!」と言わんばかりの青色の光を発している。
俺は導かれるようにして青色のチョークを手に取る。
「——っ!」
その瞬間。
脳内に情報が一気に流れ込んできた。




