18・合同授業6
破竹の本日3回目の投稿。
こうして合同授業の締めは俺とリュウヤの一騎打ちとなった。
「先生……」
後ろからロレッタが心配そうに声を出す。
「大丈夫だ。心配するんじゃない」
「でも……先生……」
「リュウヤなんて俺がボッコボッコにやっつけてやんよ」
「パンツが見えてるよ?」
ロレッタが俺の股間を指差した。
視線を下に向けると、ズボンのチャックが開いていて縞模様のトランクスが見えていた。
「——っ! そういうことは早く言え!」
すぐにチャックを閉める。
「サービスシーンかと思って、口を挟めずにいました」
「男のパンチラなんて誰が見たいんだ!」
やれやれ……。
そこはやっぱり三組。
こういうシリアスな空気は似合わないようだ。
「夫婦漫才はいいけどよ」
不機嫌そうなリュウヤの声。
「早く始めようじゃねえか。もう少しで授業が終わっちまうぞ?」
今にも人を殺してしまいそうな殺気。
襲いかかってきそうなリュウヤの雰囲気に三組の生徒が圧される。
「ああ? そうだな。さっさと始めよう」
今までの俺なら、生徒同様怯んでいたかもしれない。
しかし——リュウヤの顔を見て、恐れが全部吹っ飛んだ。
こいつは俺の生徒をバカにしやがったんだ。
軽いお灸を据えてやらないといかん。
「では両者、中央へ——」
審判役をかって出たのはジェシカ。
文句なしで、一組と三組——いや下手すればアドルフ奴隷学校で最強の称号を得る少女である。
「遺言はないか?」
ニタニタとリュウヤが言う。
「遺言? 何、言ってんだ。これはただの模擬戦だ。遺言ってのは日本語が可笑しいだろ」
「まあそう思っておけばいいんだ」
——ああ、俺だって分かるよ。
リュウヤが何を言いたいのか、くらいにな。
(リュウヤ……ニホンにいる頃だったら、俺なんて瞬殺されていただろうな)
ニホン時代、リュウヤは他校の生徒と喧嘩に明け暮れていた、という。
一方、俺は口喧嘩もろくにしたことがない弱い男だった。
しかし……ここは、
(異世界……っ! 俺はここで第二の人生を歩むって決めたから……)
——何よりも。
生徒にカッコ悪い姿なんて見せてられないだろ?
「始め!」
凜としたジェシカの声。
それと同時にリュウヤが鞘から剣を抜き放ち、最後の戦いが開幕したのである。
「はぁあああああ!」
リュウヤが勇者の聖剣を振り上げ、襲いかかってくる。
普段の俺なら尻込みしていただろう。
しかしレベル93の補正なのか——リュウヤの動きがスローモーションに見えた。
「よっと」
後ろに飛び跳ねて、一発目のリュウヤの攻撃を回避する。
「ほお? やるじゃねえか」
リュウヤが聖剣を構え直し、不敵な笑みを浮かべる。
「思うんだが、クレアさんからもらった聖剣ってどういう効果があるんだ? まさか見た目がカッコ良い、だけじゃないだろうな?」
「カッカッカ。そんなわけねえだろうが!」
勇者の聖剣とは、よくゲームでもあるようなロングソードである。
刀身が太陽の光を反射し、白光しているようにも見えた。
「この勇者の聖剣はな……どうやら攻撃力に補正がかかるらしい。ステータスを見る限り、どうやら元の攻撃力から五〜六倍になっているらしい。このチート武器がある限り、お前なんかに負けたりしねえよ!」
言い忘れていたが、俺達のステータスにはレベル以外にも『攻撃力』や『防御力』といった値も存在する。
ただ正直、そんなものはどうでもよかったので、あまり気にしてこなかっただけだ。
「選ばれた勇者だけが持てる聖剣だ」
そんな武器をまるで手足のように操り、片手で回し出すリュウヤ。
「生徒を使って試してみたが、どうやらオレ以外は腕力だか何かが足りなくてこの聖剣を持つことが出来ない。
なまじ持つことが出来ても、重すぎて満足に扱うことが出来ない。
それはまさしく、オレが勇者だと異世界が鳴いているといっても過言ではないだろう?」
「ふむ……」
微妙に厨二病を発症しているな。
そう思って、頷いてしまったが、それに機嫌を良くしたリュウヤは、
「はっ! 今更、怖じ気づいても遅ぇぞ!」
いや全くビビったりしてないんだが。
それにどれだけ攻撃力が高くても、当たらなければ意味がない。
「攻撃してこねえなら、もういっちょいくぞ!」
地面を蹴り上げ、リュウヤが持つ聖剣が迫ってくる。
「先生……っ!」
ロレッタの祈るような声。
リュウヤの動きがあまりにも遅かったので、隙間時間にちょっと横を振り向いてみた。
——そこには目を瞑り、両手を握っているロレッタの姿が。
(ロレッタ……お前、何をそんなに心配しているんだ)
溜息が出てしまう。
やれやれ、後でロレッタには説教をしないとな。
こんなカッコ良い場面を……、
「ほっ」
目に収めていないなんて、勿体ないってな!
「え」
リュウヤの口から空気の抜けるような声が漏れる。
勇者の聖剣に対し、俺が使用したのはたった二本の指。
振り下げられた刀身を人差し指と中指を使って、受け止めて見せたのだ。
「ほいよ」
そのまま捻り上げ、リュウヤの手から聖剣を離す。
「ん? 意外に軽いんだな」
「お、お前……!」
柄を握り、ブンブンと振り回してみる。
——そう。
勇者の聖剣は今や俺の手の内にあった。




