12・作戦会議をしよう
「というわけで一週間後に一組と合同授業をすることになった」
放課後のHR。
はっきり言っておくが、俺はこのHRというやらに、良い思い出はない。
それは中学校時代に中二病を患っており、暗黒騎士としての設定を書き綴ったノートを見られ「タクマ君が気持ち悪いノートを書いています。それからいつも休み時間になったら、一人で気持ち悪い本を読んでいるのはいけないと思います」と女子に弾劾され、男ながら半泣きになってしまったことは断じて関係がない!
放課後になったら早く帰りたいだろ!
それなのに、くだらないことに時間を潰されるのが嫌だったのだ!
「先生……本当にするんですか?」
ロレッタの声が震えている。
はっきり言って、こんなHRなんか必要ないと思う。
だが、初めての合同授業ということで生徒も不安を覚えているだろう。
その不安を取り除こうと考えた俺の英断なのだ!
「本当だ」
「科目はなんだ?」
ジェシカが手を挙げて質問する。
「一応、体術になっている」
「体術! 無謀ですよ! 一組には悪い人達がたくさんいますし!」
ロレッタが立ち上がり、大きな声を出す。
「ん? 悪い人達……? それってどういうことだ?」
「だって、廊下を歩いていて肩がぶつかったら因縁を付けてくるんですよ? 睨まれたらすっごく怖いんですよ!」
他の生徒の話も聞いてみると、どうやら一組には素行の悪い生徒が多くいるらしい。
カツアゲをされかけた、という生徒もチラホラいた。
脅迫……暴力……。
成る程、最強のクラスを作ろうとしているリュウヤらしいクラスだな。
「心配するな。というかロレッタ。多分、お前の方が強いんだからビビる必要ないじゃないか」
「そ、そんな! 私なんて一組の生徒にかかれば、可愛らしい女の子同然ですよ」
「実際、可愛い女の子だろうが」
「へ? 先生。もしかして今、私のこと褒めました?」
パアッ、とロレッタの表情が明るくなる。
照れ臭さを隠すために、コホンと咳払いをする。
「とにかく、心配するんじゃない。それに喧嘩しろ、って言ってるわけじゃないんだ。一緒に仲良く授業をしましょう、ってだけなんだ」
俺がそう言うも、教室の雰囲気は暗い。
(体術……っていうのも心配の一因なのかな?)
授業の最中、もしかしたら乱暴されるかもしれない。
危険なことにならないだろうか。
そう、生徒達は不安を覚えているのだろうか。
「大丈夫だ!」
自分の胸を叩く。
「心配するんじゃねえ! お前達は俺が守ってやる。もし何か言われたら、俺のところに言いつけにこい!」
うん。
我ながらカッコ良いことを言えた。
それなのに、生徒達はコソコソと声を潜め、
「でも……先生。一組のリュウヤ先生に比べたら弱そうだし」
「多分、童貞だよ」
「いや一緒に課外授業をやった時、強いモンスター倒していたよ?」
「マグレだよ。それか詐欺だよ」
「私……合同授業、仮病で休もうかな?」
……。
俺、信頼されてねえな。
まあ仕方がない。
明らかにリュウヤは強面の先生だ。
廊下からちょっと大きな声が聞こえるだけで、生徒達もビクッと体を震わせている。
それに対し、細身で弱そうな俺。
心配になるのも仕方ないか……。
「大丈夫だ。みんな」
その中で一人。
女騎士ジェシカだけが落ち着き払った様子で、
「タクマ先生はきっとリュウヤ先生より強い。そんな気がするんだ。だからみんな、心配する必要はないと思うぞ」
強者は強者が分かる、とでも言うのだろうか。
まあ実際、リュウヤはレベル30。
レベル93の俺の敵ではないだろう。
勇者の聖剣がどれだけ攻撃力に補正がかかるかは分からないが……。
「まあみんなジェシカの言う通り、心配するな。授業なんて適当で良いんだよ。適当にやって適当に終わらせよう」
「クッ、先生が適当すぎて本当に適当でもいっか、と思ってしまった。クッ殺」
「何で!」
というわけで。
作戦会議もとい放課後のHRは終了した。




