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次の日、そろそろ食料品を買わなきゃなと思い、商店街の方に買い出しに向かった時だった。
商店街入口近くに、小学生くらいの女の子が立っていた。女の子は困ったように、右手に紙を持ち、右に左へとせわしなく首を振る。
しばらく眺めていたが、道行く通行人たちは女の子に声をかけようとせず、我関せずと言わんばかりに通り過ぎる。
「……あの、どうかした?」
べつに俺が声をかけなくても、その内誰かが声をかけるかもしれない。けどほっとけなかった。俺は女の子の背後からポンと肩に触れ優しく語りかける。
「――っ!」
女の子はビクッと体を震わせ、すぐさあ俺から距離を取った。……地味に傷ついた。
「あー……いや安心していいよ。俺は怪しい者じゃないからさ! 何か、買いに来たの?」
「あ……その……これ……を……」
笑顔で接したのが良かったのか、女の子は警戒しながらも、持っていた紙を俺に見せた。そこには可愛らしい文字で、本のタイトルらしきものと作者名が書かれていた。
「ああ、本屋に行きたいんだね。……よし、それじゃ案内しよう!」
どこから湧いてくるのか、俺は見栄を張るかのようにそう言うと、女の子の手を掴んだ。
「ひゃっ!」
さっきよりもさらに過剰な反応を見せる女の子。――くっ、ここで怖気づいてはダメだ! 俺は握った手に少し力を込める。
「さ、行こうか……あれ? どうかした?」
「………え……あ……なん……で……?」
女の子はどうにもさっきとは「違う意味」で戸惑う感じを見せた。――とにかく俺は女の子を無理やりにでも本屋に連れて行くことにした。
「――よし、ついた!」
商店街内にある本屋は意外とあっけなく見つかった。コンビニに毛が生えたようなものかと思っていたが、意外と大きい。俺は入り口前で立ち止まった。
「それじゃあとは見つけるだけだね。わからなかったら、店員さんに聞くんだよ」
基本、本はあまり読まない俺ができる手助けはここまでだった。俺は女の子にそう言い残し、華麗に店先を立ち去ろうとした。……が、それはできなかった。
「……………っ!」
女の子はぎゅうっと目をつむり、俺の手を力強く握っていたのだ。
「あの……」
「……ゃっ! ……あ、あの……そ……の! あ、あひがとうごしゃいました!」
はっと我に返り、女の子は俺から手を離した。女の子はそのまま本屋の方へ入っていった。
「――可愛い子だな」
決して変な意味からではなく、俺は純真な気持ちでそう思った。




