第1章07 ダンジョン――40年間で判明したこと
設定集的なものになりますので、読み飛ばしても問題ありません。
~ダンジョン情報サイト~
概要
ダンジョンとは、1986年に地球各地へ出現した入口から入ることのできる、神が設けた異空間の総称である。内部にはモンスターのほか、地上では見られない鉱石や植物、特殊な道具が存在する。内部でモンスターを討伐したり、資源を採取したりする人々は探索者と呼ばれる。
出現から40年が経過した2026年現在、ダンジョンは世界の産業や生活に深く関わっている。採取された素材は武器や防具、医薬品、工業製品に用いられ、探索者の活動を支える学校、工房、研究機関、流通業者も発達した。
ダンジョンには人間の科学だけでは説明できない現象が数多く存在する。一方で、長年の調査によって基本的な規則や危険への対処方法が広く共有され、探索は一つの職業として定着している。
出現と歴史
1986年 神のダンジョン出現
世界各地に入口が現れ、神は入場者に与えられる武器と能力、モンスターの討伐、経験値、通常死亡時の復活など、探索に関わる基本的な規則を人類に告げた。入場した探索者の様子を自動的に公開する配信も、この時から始まっている。
当初は事故や情報不足による混乱が大きかった。やがて探索者同士が地図や敵の情報を交換するようになり、素材の買取業者や装備の製作者が増えた。各国で行政の対応も進み、探索者の教育と救護、ダンジョンの災害対策が整えられていった。
2001年 蒼天竜域への挑戦
日本の四人組パーティー「黎明」が、山梨県の蒼天竜域で最終階層にあたる第120階層へ到達した。竜帝ヴァルグレオンとの戦闘で四人全員が死亡したものの、通常の復活によって帰還している。この挑戦は竜帝の討伐には至らず、人類によるSSS級への挑戦を語る際に広く取り上げられる記録となった。
2007年 大災厄
世界各地のダンジョンで大規模なスタンピードが発生した、神による特別イベント。モンスターの異常増殖と地上への流出が広範囲で起こり、多くの探索者や市民が被害を受けた。イベント中の死亡に復活が認められなかったことも、被害が拡大した大きな要因である。大災厄以降、各国では避難計画、内部防衛、救助体制の見直しが進んだ。
2010年 オラクルライブの機能拡張
神の映像配信サービス「オラクルライブ」に、アーカイブ保存と切り抜き機能が追加された。それ以前にも生配信は行われていたが、1986年から2009年までの映像を後から保存することはできない。初期の探索史を調べる際には、生還者の証言、当時の報道、行政や探索者組織の記録が重要な史料となっている。
ダンジョンの構造
入口と内部
ダンジョンの内部は地上の地理とは独立している。地上では市街地にある入口が広大な森林につながることもあれば、山中の入口の先に砂漠や氷原が広がることもある。内部の温度、明るさ、天候、水源などもダンジョンごとに異なる。
世界には約8,000か所、日本国内には160か所の常設入口がある。これとは別に、一定期間だけ出現する入口も存在する。期間限定ダンジョンは開設期間が数時間のものから数か月に及ぶものまであり、通常の閉鎖時には内部の生存者が地上へ移される。
多くのダンジョンは階層構造を持ち、階段や通路、扉、転移ゲートで別の階層へ移動する。深く進むにつれて強いモンスターが増える傾向があるが、環境や出現種によって難度は変わる。広大な階層では移動そのものに数日を要する場合もある。
中継地点と安全地帯
一般的な階層型ダンジョンには、五階層ごとを目安に中継地点が設置されている。一度到達して登録した中継地点には、入口から転移して向かうことができる。帰路にも利用できるため、深層へ通う探索者にとって重要な設備である。
また、安全地帯では通常モンスターが出現せず、休息や装備の点検を行える。探索者は食料、水、照明、寝具などを用意し、行動時間と帰還までの余力を考えながら進む。ダンジョン内と地上で時間の流れる速さは等しい。
探索情報
人の出入りが多いダンジョンでは、地図、生息するモンスター、採取地点、危険な地形などが詳しく調べられている。学校や探索者組織が共有する情報もあれば、企業や個人が独自に保有する記録もある。深層、特殊な区画、期間限定ダンジョンでは情報の価値が高く、調査そのものが仕事になる。
探索者の能力
本人レベルと経験値
ダンジョンへ初めて入った者は、本人レベル1から探索を始める。経験値は主にモンスターとの戦闘で得られ、攻撃だけでなく、防御、治癒、索敵、戦術的な支援なども実際の貢献に応じて評価される。
本人レベルが上がると、ダンジョン内では筋力、速度、反応などの身体能力に神の補正が働く。ただし、敵への対処には武器の扱い方、観察力、知識、判断力といった本人の技術も関わる。同じレベルの探索者でも戦い方と実力には大きな差がある。
ステータス画面には本人レベルや経験値、MP、得意武器、習得した魔法とスキルなどが表示される。本人の能力情報は原則として非公開であり、他人が自由に数値を調べられるものではない。
地上での能力
本人レベルに由来する身体能力補正、得意武器による攻撃力補正、魔法の発動は、基本的にダンジョン内で働く。スキルにも地上で使えるものと使えないものがある。《収納》のように地上でも利用できる能力は、運送や製造業などでも活用されている。鍛錬によって得た実際の筋力や技術は、地上に戻っても失われない。
得意武器
得意武器は、武器による攻撃に関係する神からの能力である。ダンジョン内でモンスターに通常の物理攻撃による傷を与えるには、その攻撃方法に対応する得意武器を習得している必要がある。得意武器を持つ者は、対応する武器を使用する際に攻撃力の補正も受ける。
名称に「武器」とあるが、得意武器は本人が習得する能力であり、手に持つ剣や槍そのものではない。
武器の分類
得意武器には九つの大分類があり、そこから武器種、詳細武器種へと細かく分かれる。
刀剣類には剣、短剣、日本刀、直剣、ダガーなどが含まれる。
長柄武器類には槍、薙刀、ハルバード、方天画戟などが含まれる。
打撃武器類には棍棒、戦槌、長棒などが含まれる。
斧類には片手斧や両手斧などが含まれる。
投射具類には弓、弩、スリングなどが含まれる。
投擲武器類には投げナイフ、投槍、手裏剣などが含まれる。
銃器類には拳銃、小銃、散弾銃、機関銃などが含まれる。
格闘武器類には拳甲、爪具、トンファーなどが含まれる。
特殊武器類には鞭、鎖鎌、戦鎌、盾を用いた攻撃などが含まれる。
例えば日本刀を扱う得意武器は、「刀剣類」「剣」「日本刀」という三段階で表される。一方、ナイフは「刀剣類」「短剣」「ナイフ」に属する。同じ刃物でも別の武器種であり、ナイフを投げる場合には投擲武器として扱われる。
攻撃力の補正
大分類の得意武器には10%、武器種には20%、詳細武器種には30%の攻撃力補正がある。日本刀の三段階をすべて習得していれば、日本刀での攻撃には合計60%の補正が働く。「剣」だけを習得している者なら、同じ日本刀を使っても補正は20%となる。
三段階の能力はそれぞれ独立して取得する。初めから日本刀を得意武器として持っていても、「刀剣類」や「剣」が自動的に追加されることはない。また、補正が働くのは実際の攻撃方法に適合する場合である。剣の得意武器によって槍での攻撃が強化されることはない。
得意武器の補正率自体は一定で、使い込んでも数字は増えない。剣術などのスキル、実際の訓練、武器の品質による差は別に存在する。強いモンスターを相手にするほど、こうした要素の組み合わせが重要になる。
習得と追加取得
初めてダンジョンへ入った際には、本人の適性と偶然の要素によって得意武器が一種類与えられる。その後、モンスターや宝箱から得られる能力オーブ、イベントの報酬などで新しい得意武器を増やせる。
同じ種類の得意武器は重複して習得できない。複数の武器を使いこなすために種類を増やす探索者もいれば、特定の武器の三段階を揃えて専門性を高める探索者もいる。
神授初級武器
初回入場時には、授かった得意武器に対応する実物の「神授初級武器」も一つ支給される。多くの探索者が「初級武器」と呼ぶ、本人専用の武器である。
神授初級武器は破損や摩耗が起こらず、長期間同じ状態で使い続けられる。一方、攻撃性能は低いため、強敵と戦う際には高性能の武器へ持ち替える探索者が多い。使わなくなった初級武器は神へ一度限り返還し、30動画ポイントを受け取ることもできる。返還後は再支給されないが、本人が習得した得意武器の能力は残る。銃器系の初級武器も本体は壊れず、弾薬は通常どおり補給が必要となる。
通常の武器は、戦闘で傷み、手入れや修理が必要になる。高性能な武器を得るには強敵の討伐、素材の調達、職人による製作などの方法がある。得意武器と装備の組み合わせは、探索者の活動を左右する重要な要素となっている。
魔法
魔法はMPを消費して物質や現象に働きかける能力である。系統ごとの魔法オーブで習得し、同じ系統の中で技術を磨くことによって使い方が増えていく。例えば火魔法を覚えたばかりの者が作れるのは小さな火種程度でも、熟練すれば火球や火炎放射などを扱えるようになる。
発動に詠唱や決まった身振りは必要なく、起こしたい現象を思い描いてMPを投入する。熟練すると発動が速くなり、現象の形や範囲を精密に調整できるようになる。
魔法の23系統
2026年現在、存在が確認されている魔法は23系統に分類される。使用者が多い系統では基本的な運用が広く知られ、希少な系統では応用法の研究が続いている。
基本属性は、火、水、氷、風、土、雷の六系統。炎の発生、水の生成や水流操作、凍結、気流の制御、岩石の操作、放電などに用いられる。攻撃のほか、移動や作業への応用もある。
特殊属性は、光、闇、植物、毒、音の五系統。照明や光の遮断、植物の成長、毒性物質の生成、音や振動の制御などを行う。
強化・防御・回復に関わるのは、身体強化、結界、治癒の三系統。身体強化は術者自身の身体能力を一時的に上げる。結界は攻撃を受け止める障壁を作り、治癒はダンジョン由来の負傷や疾病に作用する。
特殊な干渉を行うのは、重力、腐食、呪詛、幻影の四系統。重力の調整、物質の腐食、継続的な悪影響、実体を伴わない視覚的な像の生成などに使われる。
付与、変身、召喚の三系統は、装備への一時的な強化、生物の姿への変化、対象の召喚に関係する。付与は武器や防具の補助に利用されることが多い。
残る二系統は空間と時間である。空間魔法は距離や位置に働きかけ、時間魔法は対象の時間の進み方を変える。いずれも習得者が非常に少なく、広く普及している魔法ではない。
身体強化
探索者が本人レベル10へ到達すると、神から身体強化魔法が自動的に授けられる。通常の魔法オーブと異なる取得方法を持ち、多くの探索者にとって初めて実際に使う魔法となる。
身体強化には、筋力や速度を高める使い方のほか、感覚や耐久力を重点的に強化する使い方もある。全身を軽く強化する場合と、短時間だけ大きな力を出す場合とでは消費MPが異なる。高い倍率を使用すると身体への負担も増えるため、戦闘中に強化の程度を切り替えることも重要な技術とされる。
治癒と結界
結界魔法は、小規模な障壁から複数人を守る広い防御領域まで形成できる。防げる攻撃の程度と持続時間は、術者の熟練、消費MP、攻撃の種類によって変わる。
治癒魔法は、ダンジョン内で受けた傷や、ダンジョン由来の毒・病気などを回復させる。高度な術者は欠損した身体の一部を再生することもある。地上で起きた交通事故や病気には適用されないため、地上での治療には通常の医療とポーションが併用されている。
MPとその成長
MPは最大値に応じて自然回復し、現在知られている基本的な回復速度は一時間当たり最大MPの約六分の一である。消費がなければ、空になった状態から約六時間で全快する。
MPを使い切って0になると、三時間にわたって激しい不快感が続く。ポーションでMPを補充しても、この不快感は直ちには消えない。
最大MPは、いったん使い切った後、回復薬などを使わずに自然回復を進めると増加する。成長できるのは所定の回復条件を満たした場合で、一度増加した後は少なくとも30日間の間隔を置く必要がある。強い苦痛を伴うため、最大MPの増加を目指す場合にも準備と管理が欠かせない。
スキル
スキルは、探索者の動作、感覚、判断、作業や特殊な機能を補助する能力である。通常は個別のスキルオーブを使用して習得する。魔法と違って使用にMPを消費しない。常時働くもの、意思によって発動するもの、一定の条件で働くものがあり、効果や使用条件はスキルごとに異なる。
スキルの八分類
戦闘技術――《剣術》《長柄武器術》《反撃》など、武器の扱いと戦闘時の技術に関わる。
身体操作――《受身》《平衡》《登攀》など、身体の動かし方や姿勢の維持を補助する。
感知・認識――《観察》《追跡》《鑑定》《危険察知》など、物事を捉え、判断する際に役立つ。
防御・生存――攻撃に備える姿勢や、危険な環境で身を守る行動を助ける。
隠密・妨害――自分の気配を抑えたり、相手の行動を妨げたりする。
支援・連携――仲間との連絡、救護、共同作業などを助ける。
生産・作業――鍛冶、加工、調合、料理など、地上の産業にも関わる技能を補助する。
特殊機能――《収納》《自動地図》《図鑑》など、探索の手段そのものを増やす能力が含まれる。
鑑定と探索用スキル
《鑑定》などの能力は物品の状態や特性を調べる際に利用される。モンスターに神が定めた等級を確認する鑑定系スキルもあり、探索者は得られた情報と実際の観察を組み合わせて危険を判断する。
《自動地図》は本人が通った経路や確認した地形を記録し、探索中の位置関係を把握する助けになる。《図鑑》は遭遇した生物や物品について、得られた情報を後から参照できる。未踏区域の調査や、既知のモンスターとの再戦に役立つ能力として知られる。
鍛冶や調合などの生産系スキルは、素材の処理や作業精度を高めるために用いられ、地上の工房や医薬品製造にも役立っている。
《収納》は物品を専用の空間へ収めるスキルで、本人レベル15になると自動的に授けられる。習得したばかりの収納容量は一立方メートル、重量は100キログラムまで。スキルの成長によって収納量が増え、高いレベルでは収納中の食品などの時間経過も遅くなる。地上でも使えるため、長距離の素材運搬や備蓄に広く利用されている。
スキルの成長
スキルにはレベル1から20までの段階がある。実際の使用や経験によって成長し、同じスキルでも本人によって到達できる上限が異なる。同一のスキルオーブを追加で使うと成長上限が引き上げられるため、広く普及した技能のオーブにも継続的な需要がある。
モンスター
生態と等級
モンスターには亜人、獣、虫、粘体、水棲、飛行など多様な種類が存在する。洞窟で見られるゴブリンは簡単な武器と集団戦を得意とし、スライムは粘性のある身体で相手を包み込む。いずれも広い地域で知られるモンスターだが、同じ種族でも上位種や環境の異なる型が存在する。
モンスターには神が定めた等級があり、H、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの11段階がある。等級は鑑定系スキルによって確認できる。等級が高いほど一般に強力だが、実際の戦闘では飛行、水中での行動、毒、群れの統率などによって危険の性質が変わる。
モンスターは討伐後も時間の経過によって新たな個体が現れる。種ごとの生息場所や出現数には傾向があり、探索者はその情報から移動経路や討伐計画を立てる。ボスと呼ばれる個体は特定の攻略区域や条件に結びついており、等級とは別に扱われる。
SSS級モンスター
SSSは神が定めたモンスターの最高等級である。2026年現在、探索者との交戦によって存在が確認されている固有のSSS級モンスターは、次の5体である。
日本・蒼天竜域 竜帝ヴァルグレオン
アメリカ・魔皇深獄 魔皇ヴェルガノス
ドイツ・虚鏡王宮 虚鏡王ラズフェルト
エジプト・冥都王陵 冥府女王エレシュノア
ロシア・地裂巨神殿 地裂巨人グラドヴァン
これらの存在は、実際に交戦した探索者の証言や探索記録によって知られている。いずれも討伐に成功した例はない。
世界には、まだ最深部まで到達できていないダンジョンも多い。その奥に未知のSSS級モンスターが存在する可能性も指摘されているが、個体の名称や数は分かっていない。
ドロップ品と採取資源
ドロップの仕組み
ダンジョン内でモンスターを討伐すると、その身体は消滅し、代わりに品物が現れる場合がある。これをドロップと呼ぶ。何も現れないこともあれば、一度の討伐で素材とポーション、能力オーブなど複数の品物が得られることもある。
ドロップ品はモンスターの種類や等級によって傾向が異なる。通常の討伐では、素材、消耗品、能力オーブ、武器、防具などが得られる。探索中に採取する鉱石や植物、宝箱から手に入れる品物も、ダンジョン産資源の重要な部分を占める。
素材
代表的な素材には、毛皮、鱗、甲殻、牙、骨、羽根、特殊な器官、結晶などがある。例えば、硬い甲殻は防具の部材となり、耐熱性の高い鱗は高温環境で使う装備に利用される。光学的な性質を持つ結晶や耐摩耗性に優れた鉱物は、計測機器、機械部品、工具にも用いられている。
素材はそのまま販売されるほか、工房や工場で加工される。用途に適した性質を調べる研究者、素材を仕入れる商人、製品に仕上げる職人がそれぞれ流通を支えている。
食材
食用の品物をドロップするモンスターもいる。肉、魚介、卵、乳、油脂、穀物、果実、香辛料など種類は幅広い。出現する食材は品目に応じて真空包装され、内容量や保存条件も表示される。飲食店では、ダンジョン産の肉や野菜を特色とする料理が提供されることもある。
採取資源
鉱脈や岩場では鉱石や結晶、植物の群生地では特殊な草木などを採取できる。これらはモンスター討伐によるドロップとは異なり、採取場所を探し、運搬できる状態にする作業が必要となる。深層の高品質資源は武具、医薬品、各種工業製品に使われ、採取を専門とする探索者も活動している。
ポーション
ポーションは飲用によってMPや傷病を回復する薬品の総称である。モンスターからドロップするものと、ダンジョン産素材を地上で加工して作るものが流通している。用途に応じて種類と効力が区分され、探索者の携行品として欠かせない。対応する治療薬は、地上の医療機関でも使用される。
MPポーションは四つの規格が広く用いられる。小は50MP、中は200MP、大は800MP、特大は3,000MPを回復する。効果は服用後数秒で現れる。遠征では、魔法の使用量、運搬量、薬品の価格などに合わせて持ち込む種類が選ばれる。
治癒ポーションも小・中・大・特大に分かれる。小は擦り傷や軽い負傷、中は裂傷や軽度の骨折、大は重度の骨折や深い傷、特大は重い内臓損傷などに対応する。効果は数秒から二十秒ほどで現れ、負傷の程度に応じた規格が使用される。
治癒では身体に大きなエネルギー負担が生じる。追加の栄養補給の目安は、小で約80キロカロリー、中で約450キロカロリー、大で約1,500キロカロリー、特大で約4,000キロカロリーとなっている。重傷の治療後は、薬の効果だけでなく補給と休養も重要となる。
解毒薬は適合する毒に用いられ、疾病治療薬には対象となる病気に応じた種類がある。効果が現れるまでの時間は解毒薬でおおむね五~三十秒、疾病治療薬で十~六十秒ほどである。
さらに、欠損した指などの一部を再生する薬や、腕・脚の大規模な再生を行う薬も存在する。小範囲の再生には約6,500キロカロリー、大規模な再生には約25,000キロカロリーの追加補給が必要となり、治療後の管理も重要である。大規模再生薬は希少で、専門医療機関や公的備蓄などを通じて扱われる。
武器と防具
モンスターを討伐した際、剣、槍、斧、弓、防具などがそのまま出現することもある。武器の切れ味や防具の強度などは個々の品物で異なり、高性能な装備は高値で取引される。地上の職人がドロップ素材を加工して作った武器や防具も広く利用されている。
日本の上位探索者・黒瀬迅は、パーティー「白刃」のリーダーとして知られる日本刀使いである。愛刀「白雨」は高位モンスターの討伐で得られた日本刀で、刃には細い雨筋のような白い刃紋が走る。切れ味に優れ、黒瀬の精密な剣技とともに広く知られている。ドロップ武器には、このように使用者とともに有名になったものもある。
能力オーブ
魔法、スキル、得意武器などを習得するための品物が能力オーブである。通常の能力オーブには出現した時から168時間、すなわち七日間の期限があり、期限内であれば地上でも使用できる。売買や輸送では、残り時間が重要になる。
同じ魔法系統や得意武器のオーブは、既に習得済みの者には使用できない。スキルオーブは重複取得によって成長上限を伸ばせるため、習得後にも需要がある。レベル到達時に神から自動的に授けられる身体強化や《収納》などには、通常の流通品とは異なる取得方法がある。
宝箱
ダンジョン内には、素材、ポーション、能力オーブ、武器、防具などが収められた宝箱も現れる。木、銅、銀、金、神秘の五つの品質区分が知られ、上位の箱は出現数が少ない。宝箱の発見には地形の調査が役立つほか、特別な条件の達成が必要な場合もある。一定の条件で再び出現する宝箱もあれば、一度限りのものもある。
死亡と神のイベント
通常死亡と復活
通常のダンジョン探索中に死亡した探索者は、原則として入場したダンジョンの地上入口付近に復活する。復活後は72時間の再入場が禁じられ、携行品や収納していた品物の一部を失うことがある。本人レベルや習得済みの能力は維持される。
神罰
ダンジョン内で悪意を持って他人を攻撃するなどの行為には、神から処罰が下される。神罰を受けた者には身体に印が現れ、重大な違反では即死を伴う場合がある。神罰とは別に、人間社会の法律による責任も問われる。
特別イベントとスタンピード
神は通常の探索とは別に、特別イベントを実施する。あらかじめ告知されるものもあれば、予告なしに始まるものもある。ダンジョン内にいる者が強制的に参加させられる場合があり、帰還の可否や死亡後の復活はそれぞれのイベントの規則による。
スタンピードは特別イベントの一種で、ダンジョン内でモンスターが異常増殖し、入口から地上へあふれ出す。2007年の大災厄は、世界的な規模でスタンピードが発生した事例として知られる。
流出したモンスターは地上へ出てから168時間で自然に消滅する。地上で討伐しても経験値やドロップ品は得られない。
地上で通常の兵器がどこまで有効かは、モンスターの等級によって大きく変わる。H・G・F級は銃火器などで討伐可能であり、E・D級には強力な火力や集団による対処が必要となる。C級にはミサイルなどの強力な兵器が有効な場合がある。B級以上は、ダンジョン由来の恩恵を伴わない地上の通常攻撃では傷つけられない。
こうした性質から、スタンピードへの対応では、モンスターが地上へ出る前の内部防衛が重視される。地上で流出が起きた場合には、警察、消防、自治体、国防組織、協力する探索者などが避難と被害の拡大防止に当たる。
社会と産業
探索者の活動形態
探索者には、独立して活動する者、ギルドや探索企業に所属する者、ほかの仕事と兼業する者などがいる。日本では探索者は民間団体の日本探索者協会に加盟し、情報交換、安全指導、支援などを受けている。協会は素材やドロップ品の主要な買取窓口でもある。
探索者が持ち帰った品物は、協会を通じて流通するほか、工房や企業、飲食店などへ直接売却される。探索者、流通業者、加工職人、製薬業者などがそれぞれの仕事を担う産業が形成されている。
行政と教育
日本ではダンジョン庁が入口の管理に関わる制度、安全対策、災害時の調整などを担当する。警察や消防、自治体なども、それぞれの権限でダンジョンに関わる業務を行っている。
探索者学校では武器の扱い、魔法、スキル、地図の読み方、連携、救護、撤退判断などを学ぶ。素材の性質を調べる研究機関や、専門的な加工を行う工房も増え、ダンジョンは戦闘以外の仕事にとっても重要な存在となっている。
オラクルライブ
オラクルライブは、神が運営する全世界向けの映像配信サービスである。ダンジョンに入った探索者の映像と音声は自動的に生配信され、配信者の意思で停止することはできない。配信者は本人の視点か、少し後方から追う視点を選択できる。後方視点では戦闘を追いやすいように撮影位置が調整される。
視聴者はパソコンやスマートフォンなどから配信を見て、コメントを投稿できる。アーカイブと切り抜きは2010年から利用されており、娯楽のほか、戦闘の分析や安全教育にも活用されている。配信者は自分の配信のアーカイブ保存を設定できる。識別できる他人の映像や音声を保存する場合には本人の許諾が必要となる。オラクルの映像は、一般の録画機器で別の動画ファイルとして複製できない。
配信者には有効な視聴時間に応じて動画ポイントが付与される。ポイントは神が用意した商品との交換に利用でき、交換した品物のうち譲渡可能なものは市場にも流通する。オラクルには再生数や視聴者数によるランキングがあるが、探索者の実力順位を示すものではない。
未解明の事項
出現から40年を経ても、神がダンジョンを設置した目的、特別イベントの発生条件、未踏階層の構造や生態、希少な魔法・スキルの全容などは明らかになっていない。深層の探索と各国の研究機関による調査は現在も続けられている。
更新の励みになりますので、評価・ブックマークを是非よろしくお願いします。




