第3話「すっごくカッコ良かったよ! アタシ思わず見とれちゃったもん!」
「俺が特別枠? どうして?」
別に特別なことは何もしていないが?
「そんなの助けてくれたからに決まってるでしょ? やだなぁ」
「さっきの一件なら気にしなくていいぞ。たいしたことはしていない」
平和な日本でちょっとイキっただけの先輩方を、軽くわからせただけだ。
「いやいや、気にするでしょ? 突き飛ばされて顔を打ってたよね? わっ、今さらだけど大丈夫だった? アタシよりも伊佐見くんの怪我の方が心配だよね!?」
「安心してくれ、かすり傷一つないよ」
勇者の力の一つリジェネレーションによって、軽微な傷ならすぐに治癒してしまう――とは言えないので、最初から怪我してないと伝える。
そもそもちょっと打っただけだしな。
「嘘ですー。顔を強打してましたー。やせ我慢しなくていいからね? まったくもう、男子ってすぐカッコつけようとするんだから」
「や、カッコつけてるわけじゃなくて――」
「今は言い訳はいりませーん! ほらほら、アタシがちょっと見てあげるから。うんしょっと――」
牧村さんはそう言うと、俺の返事も待たずに顔を目の前まで近づけて、俺の頬に両手を沿えて、覗き込むようにしてチェックし始めた。
「――っ」
目の前に牧村さんのアイドルのように可愛い顔があって、ふわりと甘い香りが漂ってきて、その唐突なアオハルイベントに俺は胸の高鳴りを覚えてしまう。
俺は歴戦の最強勇者ユータリアであると同時に、男子高校生・伊佐美勇太でもある。
牧村さんのような美少女に至近距離で見つめられると、ドキドキせずにはいられないのだ。
「んんん~~~~?? あれっ……? かすり傷一つついてない……ね?」
しかし目の前の牧村さんがすぐに困ったように眉根を寄せた。
それでも可愛いのはさすがといったところか。
「だから言っただろ? こう見えて頑丈なんだ」
「ふへぇ、男の子ってすごいんだねぇ。知らなかったよ。っていうか? 普段とは別人みたいだったし、ケンカも強くてビックリしちゃった」
牧村さんが近づけていた顔を離す。
「もしかして怖がらせちゃったかな? 俺は基本的には平和主義なんだけど、まぁこういう時はね」
理不尽な暴力には、適正な力で対抗するだけ。
「ううん、すっごくカッコ良かったよ! ハリウッド映画みたいでアタシ思わず見とれちゃったもん――って、今のは別に好きとかそういうんじゃなくてねっ!? だからその、いわゆるこれは……い、一般論だからっ!」
焦ったように両手を顔の前で左右に振る牧村さんに、俺は小さく苦笑した。
「もちろんわかってるよ。可愛いってのも意外と大変だよな」
これだけ可愛ければそりゃあ変な勘違いもされるし、強引にナンパもされるよな。
しかもすごく話しやすいときた。
「か、可愛いって……えへっ♪」
「おっと。今のも好きとか嫌いとかじゃなくて、一般論な」
「――っ! わ、わかってますぅ~! 伊佐美くんのいじわる~!」
目を見開いて頬を膨らませ、軽く口をとがらせる牧村さん。
「可愛いと思っているのはほんとだぞ」
「あ、うん……えへへ、ありがと♪」
だけどすぐにふにゃら~と蕩けたような顔になった。
牧村さんとはこうして話すのは初めてだったけど、表情がくるくる変わって、話していてとても楽しい女の子だった。
「でもでも、さっきの先生に告げ口されたりしないかな? 暴力振るわれましたーって」
「それならスマホで録音してあるから大丈夫さ。それに牧村さんが証言してくれるだろ? 俺の正当防衛だったって」




