第28話 味方を鼓舞、敵の悪意
その後も俺たちのクラスは勝ち進んでいき、全勝のままついに最終戦を迎えた。
相手は同じく全勝の4組。
文字通り勝ったほうが優勝となる大一番だ(と言ってもあくまでレクリエーション目的の球技大会なのだが)。
「デカいな」
「ああ」
コート中央に向かいながら熊谷が思わずといったように呟いた言葉に、俺は小さく頷いた。
それに端を発したように、
「4組はバレー部3人だもんな」
「バレー部以外も野球部や柔道部のデカいやつばっか揃えてるんだろ?」
「スタメンの平均身長が177センチって聞いたんだけど、やばくね? 俺163センチなんだけど。14センチ差だぞ?」
他のメンバーも次々に不安を口にする。
今の会話からもわかるように、4組は高身長の選手をズラリと揃えた高さ自慢のチームだった。
バレー部の3人に至っては、178cm、180cm、184cmと無法の高さを誇っている。
うちのチームは熊谷の174cmが最高で、相手の平均身長にすら及ばない。
高さの差は歴然だ。
この高さを武器に、ハイボールでパス繋ぐ空中戦で4組はここまで他クラスを圧倒してきた。
うーむ。
熊谷以外は戦う前から気持ちが負けているようだな。
そうなるのも仕方はないが、これだとまともな勝負にならない可能性がある。
最終的な勝敗はどちらに転ぶかわからない。
勝者がいれば敗者がいる、この世の常だ。
これが命や人生をかけた戦いならいざ知らず、レクリエーションも兼ねた高校の球技大会。
負けることがそれほど悪いことだとは、俺は思わない。
だが戦う前から負ける気持ちにだけはなって欲しくなかった。
ってわけだから、ここは軽く味方を鼓舞しておこう。
「たしかに高さは負けているな。正直あの高さは脅威だよ。よくもまぁこれだけ高いチームを作ったもんだ」
「だよなぁ」
「やりすぎだっての」
「素人バスケじゃ高さは絶対正義だもんなぁ」
「だが俺と熊谷のコンビだって負けていないぞ。なぁ、熊谷」
俺が話を振ると、
「あたぼうよ! オレと伊佐見のゴールデンコンビが、ちょっと相手の背が高いくらいで負けるかよ! 最終戦、勝ちに行こうぜ、」
熊谷がそれはもう嬉しそうな顔をしながら、グッとガッツポーズをした。
その頼りがいのある力強い言葉に、メンバーの顔から不安が消えていくのが見て取れる。
「なんかいけそうな気がしてきた!」
「ああ! うちのダブルエースだって相当無法だよな!」
「なんてったって1試合32得点だぜ」
味方の戦意が回復したところで、最後に俺は付け加えた。
「あとはま、校内の球技大会なんだから勝ち負けよりもまずは楽しもう」
「勝つに越したことはないけどな!」
「ああ。勝利を目指しつつ楽しもうぜ」
よし、不安は完全に払拭された。
後は戦うだけだ。
俺たちはセンターラインで4組と向かいあって一列に並び、礼をしたのだが――
顔を上げると小馬鹿にしたようなニヤニヤ笑いが俺を見下ろしていた。
1人ではない。
相手のスタメン5人全員だ。
悪意を感じさせるニヤニヤ笑いが、露骨に俺に向けられている。
そこで俺は初戦の快勝の後に、白坂と話した時のことを思い出していた。
そういやこのメンツは、あの時に俺に敵意を向けてきた奴らだったか。
妬みや嫉みを向けられるのには慣れているから、すっかり忘れていた。
……いや、違うな。
4組のメンツだけだなく、審判(バスケ部員)も同じようなニヤニヤ笑いを浮かべていることにも気づく。
まさかとは思うが、審判とつるんで良からぬことを企んでいるんじゃないだろうな?
しかも、だ。
1500m走で熊谷に絡まれた時は敵意を感じただけだが、こいつらからは嫌な悪意と害意をヒシヒシと感じる。
ほんと、やれやれだな。
学校行事だぞ?
みんなで楽しくバスケしようぜ?
などと思っていると、4組の中で一番背の高い奴が話しかけてきた。
自己紹介もないし、バレー部の184センチって情報以外は名前すら知らないから、ノッポとでもしておこう。
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