第26話 4組のアイドル・白坂由奈から好意を寄せられる勇太
初対面の女子と二人きりになってしまう。
その子の目はキラキラと輝いていた。
「さっきのすごかったね」
「悪い、その前に多分なんだけど、俺たち初めましてだよな?」
「ごめ~ん、自己紹介がまだだったよね。私、4組の白坂由奈。よろしくねっ」
そうだ、白坂だった。
でも白崎も白笠もニアピン賞だよな?
「俺は伊佐見勇太だ。よろしく」
「うん、知ってるよ。さっきの試合で大活躍してたの見てたから。あの男子誰って友達に聞いたら教えてくれたの」
「そうだったか」
「あ、友達って言っても女子だからね? 学校中の男子の名前をチェックしてる子がいて。そこは安心してね?」
「いや、特に気にはしていないが」
「そう? よかった♪ それでさ。さっきの伊佐見くん、超カッコよかったよ!」
「ありがとう」
「伊佐美くん、あんなにバスケ上手なのにバスケ部じゃないってほんと?」
「実を言うと、本当に上手なのは俺じゃなくてゲームメイクしていた熊谷だよ。俺は美味しいところだけもらっただけだ」
「またまた、謙遜しちゃってー」
「謙遜じゃないんだがな」
これはもうマジのガチで。
俺は元勇者なんで運動神経は抜群だが、球技の上手さはそれとはまた別の話だ。
身体能力に物を言わせて、瞬間的に超高校生級のスーパープレーをすることは可能だろうが、熊谷のような手に吸い付くようなドリブルで相手を翻弄してフリーの味方にラストパス、みたいな華麗なプレーは俺には到底できはしない。
「っていうか、もったいなくない? 伊佐美くんがバスケ部入ったら私、毎日見に行くんだけどなー」
「俺は放課後は拘束されたくないんだ。だから部活はしないつもりだ」
お気楽スローライフ高校生活のためにも、これは譲れない。
「え〜〜! 絶対もったいないって〜! 超すごかったじゃん〜!」
「褒めてくれるのは嬉しいんだが――」
「あ、そうだ! 伊佐見くんがバスケ部に入るなら、私バスケ部のマネージャーになってもいいよ?」
「や、だから入らないって――」
「伊佐美くんのためなら部活以外のプライベートも面倒見てあげるし。もうほんとすっごくカッコよかったから! 私こう見えて尽くすタイプなんだよね~!」
「褒めてくれてありがとう。でもどれだけ言われてもバスケ部に入るつもりはないんだ。俺は帰宅部を満喫してるから。尽くすのは他の誰かにしてあげてくれ」
「そんなの、伊佐見くんだから尽くしたいんだけど?」
好意はありがたいが、微妙に押しつけがましいな。
とはいえ、そこに打算や悪意は感じない。
割と本心で言っていて、だから悪い子じゃないんだろうけど、押しが強くて微妙に会話が成立しないなぁ。
こういうの、恋愛脳って言うのか?
「悪い、さっきの試合の反省会をするからもう行くな」
埒が明かないと思った俺はそう言うと、
「あっ、伊佐見くん――」
なおも引き留めようとする白坂をスルーして、うちのクラスの面々がいるエリアに向かった。
「私、諦めないからねっ!」
背中に投げかけられた言葉に――無視するのは感じ悪いと思って――振り返ることなく軽く手を挙げただけで返した。
と、そこで俺は嫌な視線が俺を見ているのを感じた。
さりげなく出所を探ると、白坂と同じ4組の男子たちが俺に明確な敵意を向けてきていた。
「俺らのアイドルに色目使いやがって」
「ムカつくな」
「へっ、直対でワカラセてやろうぜ」
そんな声が聞こえてくる。
「たしか4組とは最終戦で当たる予定だったか。この感じだと一波乱あるかもな」
出る杭は打たれる。
この世界でも異世界でも、人の心ってのは変わらないな。
それが人気のある異性絡みなら、なおさらだ。
やれやれ、熊谷の過剰な接待プレーで無駄に目立ってしまったせいで、変なことになっちまったじゃないか。
とはいえ熊谷を責めるのはお門違いだ。
俺は内心で小さなため息をつきつつも、勝利に沸くクラスメイト達の元に笑顔で合流したのだった。




