第25話 1ゲーム32得点の大活躍で目立ちまくってしまう勇太
「やったな伊佐見! グッドゲームだぜ!」
終わって早々、熊谷が俺の首に腕を回してじゃれついてきた。
「みんな頑張ったもんな」
「なに言ってんだ~! 頼れるエース伊佐美のおかげだろ。なんてったって1人で32得点も取ったんだからな!」
「俺の得点はほとんど熊谷がお膳立てしたようなもんだろ?」
得意のサッカーだけでなくバスケも上手なザ・運動神経モンスター熊谷は、事前の作戦通りにポイントガードとして、うちのチームのゲームメイクをしていた。
時にドリブルで切れ込み、時に敵の裏を突くパスを供給する。
うちのクラスの中心は間違いなく熊谷だった。
が、熊谷は自分でも決められるところでわざわざ俺にパスをしたり。
バスケ部顔負けの切れのあるドリブルで切り込んで2人3人と引きつけながら、俺に狙いすましたノールックパスを送ってきたりと、やたらと俺にチャンスを回してきたのだ。
俺は毎回毎回フリーでボールをもらっては、ノーマークでレイアップシュートを決めるだけだった。
「あはは、謙遜すんなっての!」
「謙遜じゃないからな。完全なる事実だ」
「なら決めたのも事実だろ? 16本連続。シュートを1回も外さなかったのは、さすがだぜ!」
「あれだけ完璧にお膳立てされたら、外すわけにはいかないだろ。熊谷やみんなが繋いでくれたボールなんだから」
熊谷だけでなくチームメイトも一生懸命にプレーしていた。
そんなたくんの気持ちがこもったボールが回ってきたら、決めないわけにはいかないわけで。
結果として俺は得点を量産することになってしまったのだ。
「伊佐美ならそう言うと思ったぜ。俺もフォワードやってるからわかるんだけど、点取り屋ってのは突き詰めたら、エゴと責任の両立なんだよなぁ」
点を取って目立ちたいエゴと、仲間の想いが詰まったボールを最後に決める責任、ということだろうか。
さらっとスポーツIQの高そうなセリフが出てくる熊谷だ。
「というか俺は途中からシュートの数は数えてなかったんだが、よく他人のシュート本数まで覚えてたな?」
「伊佐美のゴールを数えてるのは当たり前だろ!」
「なにが当たり前なのか……」
というか10分ゲームで32得点ってなんだよ。
誰がどう見ても1人で点を取りすぎだ。
球技においてゴールを決める奴は目立つ。
ゆえに俺は目立ちまくってしまっていた。
スローライフ希望の俺としては、あんまり目立ちたくなかったんだがなぁ――なんてことを考えていると、
「伊・佐・美・くーん♪ おつかれ〜♪」
コートの外に出た途端に俺は女の子から声をかけられた。
甘ったるい猫なで声に振り向くと、そこには女子で一番仲良しの香澄――ではなく顔だけは知っている別のクラスの少女の姿があった。
「――――」
ええっと、名前はなんだったかな?
可愛いって有名な2つ隣のクラスの女子で――白崎だったか? いや、白笠だったかな?
たしか漢字の「白」はついていたはずだ。
クラスメイトならいざ知らず、さすがに別クラスの生徒の名前まではハッキリとは覚えていない俺である。
「オレ先に行ってるな。牧村さんがいるんだから、あんま鼻の下伸ばすなよー」
「あ、おい」
熊谷は変な忠告をすると、俺の呼び留めをスルーして離れていった。
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