第22話 クラス委員長からも頼られる勇太
「伊佐美くん、ごめん。ちょっといいかな?」
休み時間に、クラスで委員長をつとめる大山が声をかけてきた。
大山は成績がよく、穏やかな性格で、眼鏡が似合う真面目ボーイだ。
クラス委員長を決めるときには満場一致で選出された。
それはさておき。
「委員長、どうした?」
「来週の学年委員会で、クラスの課題や次月の目標をまとめて資料にしないといけないんだけど」
そう言って大山はA3の用紙を俺に見せてきた。
課題や目標といった項目があり、そこの空欄にあれこれ書き込んでいくようだ。
「へぇ、委員長ってのは大変なんだな。知らなかったよ」
「あはは、まあね。それでなんだけど。実はなかなか上手く作れなくて。伊佐美くん、今日の放課後に少し手伝ってもらえないかな? もちろん、そんなに時間は取らせないから」
慌てたように最後に一言付けたした大山に、俺は安心させるように笑顔を向けた。
「わかった。でも俺は帰宅部だし、時間は気にしなくていいぞ。完全下校時間までガッツリ付き合うさ」
「そんな、伊佐見くんに迷惑はかけられないし」
「いいや、クラス代表に恥をかかせるわけにはいかない。どうせやるなら、納得いくのを完成させようぜ」
「ほんと? 助かったよ! 実は僕は机の上の勉強は結構得意なんだけど、こういう答えのない作業は苦手なんだよね……」
自嘲するように苦笑した大山だが、それは多分こういう資料の作り方を今まで経験したことがないってだけだと思う。
なんでも真面目に取り組む大山なら、最初の一歩の方向性さえわかれば、俺よりもはるかにうまく資料を作ることだろう。
「ま、こういうのは慣れだよ慣れ。大山ならすぐに一人でできるようになるさ。まずは肩の力を抜こうぜ」
俺は大山の肩に両手を置くと、ほぐすように軽く揉んでやった。
「あははっ、伊佐美くん、くすぐったいってば!」
「力が入ってるからそう感じるんだ。困難を感じるときこそリラックスだぞ」
勇者としての経験から来るアドバイスだ。
などと大山と仲良くじゃれ合っていると、
「はいはーい! その秘密会議ってアタシも参加していい?」
キラキラ女子グループで話していた香澄がテテテッと近づいてくると、勢いそのままに右手をシュバっと挙げて尋ねてきた。
「秘密会議って、ただの資料作りだぞ」
「だってなんか楽しそーだもーん」
「会議の資料作りだし楽しくはないんじゃないか?」
「えー? みんなでワイワイ何かを作るのって絶対楽しいって!」
香澄はえらく乗り気のようだ。
「俺としては別に断る理由はないけど。大山、香澄がやる気みたいなんで、香澄も一緒してもいいか?」
俺はこの件の主催者である大山にお伺いを立てた。
「もちろん。牧村さんが女子の意見を聞かせてくれたら、すごくありがたいな」
「やりぃ♪」
香澄が両手をパーにして胸の前に置いたので、俺も同じく両手をパーにして軽くパンッと合わせてあげた。
「そういうことならオレも参加するぜ」
そこへ熊谷までもが名乗りを上げてくる。
「いや、熊谷はサッカー部があるだろ。レギュラーだからってさぼるのはよくないぞ」
「ははーん。それが今日に限ってサッカー部は休みなんだよなぁ」
「そうなのか?」
「疲労を貯め過ぎて怪我をしないように、定期的に休みがあるんだ。積極的休養日って言うんだぜ」
「へぇ、そんなのがあるのか。ってわけで大山。熊谷も一緒でいいか?」
「もちろん! 伊佐見くんと牧村さんに加えて熊谷くんまで一緒なんて、頼りになりになりすぎだよ!」
「じゃあ今日は放課後に4人で資料作りな」
「オッケー♪」
「任せろ」
「みんなありがとう!」
とまぁこんな感じで。
もともとクラスで人気の香澄と仲がいいことで、俺は女子から広範な信頼を得つつあったところに。
男子のトップグループのリーダーたる熊谷が俺を変に持ち上げるせいで、男子からも一目置かれるようになってしまい。
結果として俺はクラスのリーダー的な立ち位置に祭り上げられつつあった。
ちょっと前までは友だちゼロのボッチだったはずが、今やクラスメイト全員と連絡先を交換していて、今日みたいに相談を持ち掛けられることも少なくない状況だ。
ま、いいんだけどな。
頼られるのにも目立つのにも、過去の勇者生活で慣れてはいる。
ただ俺としてはスローライフ高校生活が希望なんで、もう少し力を抜いて目立つのを控えないとだ。
そんなことを思いながら、俺は香澄、熊谷、大山と他愛もない話をしながら休み時間を過ごしたのだった。
ちなみに放課後の資料作りは、やる気勢が揃っていたのもあってとてもスムーズに完成した。
お読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけましたらブックマークと評価(☆☆☆☆☆)を入れていただけると嬉しいです!




