第16話 香澄と食べるキャラ弁当
「わくわく……」
俺の一挙手一投足を固唾をのんで見守る香澄の視線を感じながら、まずは目が合った(気がした)唐揚げを食べる。
もぐもぐ……。
「美味しい! 普通のから揚げよりも濃厚だ。ああ、そうか。目に使っていたチーズがアクセントになっているんだ」
「せいかーい♪ キャラ弁のコツはね、見た目だけじゃなくて美味しさに繋げることなんだよねー」
「そこまで考えていたのか。本当にすごいな」
キャラ弁というと俺の中では味よりも見た目重視のお弁当ってイメージだったんだが、どうやらそんな低次元の話ではないらしい。
「ふっふふーん♪」
お弁当テクニックを褒められて、香澄はとても嬉しそうだ。
その笑顔がまたお弁当を美味しくさせてくれる。
香澄は普段から可愛いけど、笑った顔が特に素敵だよな。
なんてことを今さらながらに思ってしまった。
もしかしてこれが「胃袋を掴まれる」ってやつなのだろうか?
それほどまでに香澄と食べる手作りキャラ弁は、俺に幸福感を与えてくれていた。
いいな、実にいい、
これこそ俺が求めていたスローライフ高校生活だ。
俺は幸せな気持ちで、次々とキャラ弁を食べ進めていった。
「美味い!」
「これはね――」
「これって――」
「あ、わかっちゃう? そうなの、これはね――」
終始楽しそうな様子の香澄と和気あいあいとしながら、俺は人生で一番、楽しくて幸せなランチタイムを満喫したのだった。
最後に香澄からこんな提案がされる。
「よかったら明日もお弁当作ってくるよ?」
「さすがにそれは申し訳ないかな。お礼の気持ちはもう十分に受け取ったから」
「1人分も2人分もそんなに変わらないよ?」
「そうなのか?」
「うん、任せてよー♪ そ、それに――」
「それに?」
「それに、その……ゆ、勇太くんともっとお話したいし」
「なら断る理由はないな。俺も香澄と話すのは楽しいし」
「ほんと? やった! じゃあ明日もお弁当を作ってくるから、一緒に食べようねっ。約束だよ」
「ああ、約束だ。ありがとう。じゃあ、はいこれ」
俺は香澄に500円玉を渡した。
「なにこれ?」
「普通の新500円硬貨だけど、もしかして知らないか? 香澄って帰国子女だったりする?」
最近は電子決済も広がっているし、ここ最近になって日本に帰ってきたのならリアルの日本円硬貨を見たことがなくても不思議ではない。
「ちーがーいーまーす〜ぅ! なんで500円渡されたのかなって意味です〜。ちゃんと苦手科目は英語ですぅ〜!」
「ちゃんと英語が苦手って、それはどうなんだろな?」
「だって英語って直感的に分からないんだもん。SVOの語順は日本語とは違い過ぎだよ」
「香澄の言いたいことは分からなくもないかな」
「でしょでしょ!?」
日本語とは英語は言語体系からして全くの別物だ。
例えばスペイン語圏の人間が英語を学ぶのとは、労力が大違いだ。
かくいう俺もかつては英語が大の苦手だった。
もちろん今は勇者の力で英語はネイティブ並に理解できるので、大の得意科目になってしまっている。
それはそれとして。
「500円を渡した理由は、主に材料費だな」
「そんなの別にいいのに」
「香澄にどうのってよりは、香澄のご両親の心象を悪くしたくないって感じだ」
長きに渡るデフレ時代が終わり、食料品の値上がりが激しい昨今。
他人の弁当代を出したい親御さんはいないだろう。
「ふんふん、そーゆーことね。ちなみに金額の意味ってあるの? 適当? なんとなく? 雰囲気?」
「俺が親からもらっている昼メシ代をそのままスライドした」
「なーる! 合理的だねー」
「もらってくれるよな?」
「うん、もちろん。ママとパパの勇太くんへの好感度を下げるわけには絶対いかないからねっ」
「よろしく頼んだぞ」
「任せてっ」
妙に張り切って言いながら、500円硬貨を財布にしまう香澄だった。
その後、教室に戻った途端に香澄がキラキラグループに囲まれて、質問攻めに合ってあれこれ聞きだされていたのは言うまでもない。
時おり助けを求めるように俺に向けられる香澄の視線が、なんともこそばゆかった。
うん、俺は今、素晴らしいスローライフ高校生活を、最高に満喫しているぞ。
みんな大好き飯テロ回です♪
女の子にキャラ弁を作ってきてもらいたいだけの人生でした……(´;ω;`)ブワッ




