第15話「わっ、なんだか視線がえっちなんですけどぉー?」
「わっ、なんだか視線がえっちなんですけどぉー?」
「ごめん、話の流れでつい見てしまった」
俺は正直に謝ると、すぐさま顔を上げた。
しかし香澄は特に嫌そうな顔をするでもなく、
「あはっ、冗談だってばー。勇太くんは真面目だよね」
楽しそうに笑うと、軽く腰を浮かしてスススっと俺との距離と詰めてきた。
俺の肩と香澄の肩がわずかに触れ合う。
「近くないか?」
「カイロは貼ってるけど、やっぱりくっついたほうが温かいし? だからこれはしょうがないの。うん、一般論だし?」
香澄はそう言うとさらに身体をくっつけてきた。
さっきまでは肩が軽く触れ合う程度だったのが、今はもう二の腕とか肘は完全に密着状態になっている。
制服越しとはいえ、女の子の柔らかい感触がハッキリと感じられた。
「香澄がいいならいいんだけどさ」
くっついている方が温かいことは間違いないからな。
俺としても香澄が嫌じゃないのなら、ただの役得だし。
以前の俺なら可愛い女の子との身体的接触に過度の緊張を覚えてしまって、しどろもどろになっていたことだろう。
が、勇者として数々の修羅場を潜り抜けてきた今の俺は、この状況でも小さな胸の高鳴りを覚えるくらいだ。
そりゃドキドキはするだろ?
香澄は可愛いからな。
可愛いクラスメイトの女子に身体を寄せられて、胸が高鳴らない男子高校生がいたら教えて欲しい。
「そんなことよりお弁当を食べよっ。早起きして作ってきたんだから。はいこれ、勇太くんのお弁当」
香澄が大きい方のお弁当袋を手渡してきた。
「サンキュー」
俺はずっしりと重いそれを受け取ると、早速お弁当箱を取り出して、ふたを開けた。
香澄の作ってくれたお弁当は――
「えへへ、どう? 朝から頑張ったんだよ?」
「おー、キャラ弁だ」
なんとも可愛いらしいキャラクター弁当だった。
(キャラクターと言っても昨今は著作権や商標権にシビアなご時世なので、どれも非版権キャラである)
小さく切った海苔でパンダになっているおにぎり。
2つのコーンをちくわに詰めてくちばしに見立て、2粒のゴマを目に見立てたちくわひよこ。
唐揚げにもチーズの目が付いていて、弁当箱の一画から俺を見上げている。
さらにはキャラ弁のド定番タコさんウインナーと、さらに両側に切れ込みを入れたカニさんウインナー。
(初めて見た)
さらに卵焼きは可愛らしいハート型になっていた。
(どうやって作ったんだこれ?)
デザートにはこれまたド定番のりんごウサギもいる。
「どうどう? 可愛くない? けっこー自信作なんだけど」
「すごく可愛い。食べるのがもったいないくらいだ。キャラ弁なんて初めてだったから正直、感動した」
ちょっとドヤ顔っている香澄に、俺は文句なしの賞賛の言葉を送った。
「えへへー、やった♪」
「いやほんと、これはすごいよ。マジでびっくりした。香澄は料理上手なんだな」
「まーねー。ママがお料理好きで、小さい頃から教えてもらってたんだー」
「お母さんと仲がいいんだな」
「うん♪ とっても仲良しだよ。買い物とかも一緒に行くし。って、ほらほらそんなことより早く食べて食べて」
「それじゃあ、いただきます!」
俺はとても素敵なお弁当を用意してくれた香澄に、最大限の感謝の気持ちを込めて両手を合わせた。




