第13話 恋バナで盛り上がる香澄と、敵意を向けられる俺。
「おはよー♪」
香澄が教室に入った。
俺を隣に従えて。
すると、
「わっ、ちょっとみんな! 見てみて! 香澄が男子と登校してるんですけどー!」
「え、うそ!」
「ほんとだー! 」
「やだー、恋なの? ラブなの?」
「昨日はそんな素振り全くなかったよね?」
「そりゃあ昨日の帰りに告白されたんでしょ♪」
「それであの男子、誰だっけ?」
「クラスメイトの名前くらい憶えておきなさいよ。井坂くんでしょ」
「え、伊佐美じゃなかった?」
「……い、伊佐美って言ったし?」
教室に入って早々に、香澄がいつも一緒に居るキラキラグループの面々がやいのやいのと黄色い声で騒ぎ立ててきたのだ。
「違いますぅー。そーゆーんじゃないですぅー。勇太くんとは途中で一緒になっただけですぅー」
香澄が即座に反論する。
おそらく香澄なりにこうなることを予想して、返答を考えていたのだろう。
が、しかし。
それはダメだと思う――というか火に油だと思うんだ。
「ちょっと聞いたー!?」
「勇太くんだってー♪」
「やだーん、もう名前呼びしてる~♪」
「これはもう確実に確定でしょー♪」
「いわゆる『語るに落ちる』ってやつ?」
「お幸せにねっ♪」
「あわわっ!? だ、だから違うから~~! そーゆーんじゃないから〜!」
プイっと顔を背けながら自分の席に座った香澄は、しかしキラキラグループの面々に囲まれて質問攻めに合ってしまう。
「だからそーゆーんじゃなくてー! 昨日ちょっと助けてもらって仲良くなっただけだからー!」
「助けてもらった!?」
「白馬の王子様ってこと!?」
「そこんとこ詳しく♪」
「ちゃ、ちょ――だからぁ~~!」
女子って本当に恋バナが大好きだよな。
もうすぐ予鈴だってのに、香澄の席の周りは金曜日の放課後ってくらいに盛り上がっていた。
ま、俺には関係ない。
というか、そもそもまだクラスに友達がいないから恋バナに巻き込まれることもない。
悲しい話である。
だがま、香澄との噂はこれはこれでいい話のタネになる。
せっかくの話題性だ、友達作りに利用させてもらおう。
などと気楽に思いながら、俺も自分の席に座ろうとしたのだが、
「チッ――」
おっと?
俺の勇者として培ってきた直感は、うっすらと敵意のようなものが教室に漂っているのを感じ取っていた。
その出どころを探るべくほんの一瞬、さりげなく教室内に視線を巡らせると、
「なんだあいつ」
「なんで牧村さんと一緒に登校してるんだよ」
「うぜー」
一部の男子が小声で囁きながら、俺を不愉快そうな顔で見つめていた。
サッカー部やバスケ部といった運動部のイケイケ男子からなる男子トップグループだ。
俺は誰とも話したことはなかったが、中学時代にサッカーで県選抜だった奴もいるのだとか、誰かが噂しているのを聞いたことがあった。
なるほど、これはあれか。
クラスで人気の香澄と一緒に登校したことで、妬まれてしまったか。
ま、よくあることだな。
特に影響はない。
かつて俺が最初に勇者と呼ばれるようになった頃も、露骨な嫌がらせを受けたことがあったもんだ。
ありもしない噂を流されたり、言葉の一部を切り取って捻じ曲げに捻じ曲げられた拡大解釈をされたり。
圧倒的な存在になるまで、出る杭は打たれるもの。
実害があれば対処するが、それまでは気にしてもしょうがない。
それに敵意であって、殺意でも害意でもないしな。
さすが現代日本は平和である。
そんなことがあったと軽く記憶するくらいで、俺はそれ以上は気にすることなく、鞄から教科書やノートを取り出して机の中に入れ始めた。
お読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけましたらブックマークと評価(☆☆☆☆☆)を入れていただけると嬉しいです!




