第12話 勇者的説教→「か、かっけー!」
「そもそもの話、謝りに行く先が違うだろ? 俺じゃなくてこれまで迷惑をかけてきた相手に謝るべきじゃないか? 俺なんかに構ってる暇があったら、その反省の意思と態度を迷惑をかけた相手に示すべきだ。そして示し続けろ。それがやり直すための最初の一歩だと俺は思うがな」
「あ、ああ! まったくもってその通りだ! まずは迷惑かけた相手に全力で謝ってくる!」
不良チャラ男3人組はうんうんとうなずきあった。
本当に聞き分けが良くて何よりだ。
OK、もう話は終わりだ。
ってわけで最後に少しだけ背中を押してやるか。
「だがま、やり直そうという気概は素晴らしいと思うぞ。その気持ちは大事にしろよな。気持ちは行動の端々に現れる。上辺だけ変わってもすぐに見抜かれるぞ?」
「わ、わかった」
「周りはお前らを不良として見ている。ゼロからじゃない、お前らはマイナスからのスタートになるんだ。当然、それをプラスまで持っていくには時間と労力がかかる。それを忘れずに、地道に励むんだぞ」
「それもわかったよ」
「すぐには評価は覆らないだろう。だが愚直に行動し続けていれば、きっとわかってもらえる時が来る。継続は力なり、努力は人を裏切らない。困ったことがあれば力は貸します。頑張ってくださいよ先輩。これから見違えた姿を見せてくれることを、後輩の一人として楽しみにしていますから」
俺は最後に口調を変えた。
敵対する相手にたいする口調から、変わろうとする先輩を応援する後輩の口調へと。
エールを送る気持ちを込めて。
「あ、ああ! 俺たちは変わる! 絶対に変わる! そしていつかあんたみたいにカッコいい男になる!」
「言っとくが俺は遠いぞ? 簡単に追いつけるとは思うなよ?」
なにせ俺は元・勇者だからな。
「意地でもたどり着いてみせるさ!」
「そうか。楽しみにしてる」
というわけで、不良チャラ男3人組は完全に改心して立ち去って行った。
これでもう香澄に何の心配もなくなる。
――と。
「すごいね勇太くん! まるで先生みたいだったし!」
ここまでずっと俺の横で静かに話を聞いていた香澄が、俺の正面に回ってくると、興奮でいっぱいって感じで両手をグッと胸の前で握りしめた。
おおっと、しまった。
つい勇者時代を思い出して説教をしてしまった。
俺は昔からこういう展開に弱いんだよな。
しなくてもいいのに、つい背中を押してしまった。
勇者ってのはあれこれ忙しい。
もちろん魔族や魔王の討伐が本業なんだが、それ以外にも普段から人々の模範になることを求められたり。
将来有望な若い剣士相手に剣の手ほどきをしたり。
迷える子羊に説教を語って聞かせり。
偉い人と話したりと、勇者がやるべきことは多岐にわたる。
勇者のノリでつい説教をしてしまったが、どう考えても入学したての男子高校生が先輩にやる態度ではない。
「今のは適当にそれらしいことを言っただけだよ」
なので誤魔化す。
「それでもすごいって思うな! 人生の話とか、途中からアタシも聞き入っちゃったもん! うんうんって感じ!」
「香澄のためにもなったんなら一石二鳥でよかったかな」
「ケンカが強いだけじゃなくて、考え方もすっごく大人で、言葉であの人たちを本当の真人間にしちゃったりして! あーんもう、ちょーカッコいいんですけどぉ! ――って、い、今のはアレだからねっ! あの、その、ほら、例の一般論なんだからねっ!」
やたらと早口でワーッ! とまくし立てた香澄に俺は苦笑すると。
「わかってるさ。さてと教室に行こうぜ。そろそろ予鈴が鳴る。早めに着いてるのに遅刻したらバカらしいぞ?」
「わっ、すっかり忘れてたし! けっこう話し込んじゃったもんね。早く行かないと!」
「ああ、行こう」
俺が早足で歩き出すと、香澄も早足でついてくる。
「実はアタシ、中学で皆勤賞なの。だから高校でも連続の皆勤賞を狙ってるんだよねー」
「そいつはすごいな。まさに継続は力なりだ」
「でしょでしょ? しかも皆勤賞はクラスでアタシ一人だったんだから」
香澄がちょっと自慢げに、にへらーと笑う。
「オンリーワンにしてナンバーワンってわけか」
「えへへー♪ そーゆーこと♪」
そんな話をしながら、俺と香澄は二人して予鈴間際の教室に駆け込んだ。
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